2026年 国家総合職 問題8
行政法行政立法・行政計画
【No. 8】行政規則に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
通達や処分基準のような行政規則は、行政機関の内部の定めです。法律の委任に基づいて国民の権利義務を定める法規命令とは違い、国民や裁判所を直接拘束しません。
ただし、行政規則が無意味なわけではありません。基準を定めて公にすれば、行政庁はそれに沿って判断することが期待され、相手方もそれを信頼します。そこで、公にされた基準から理由なく外れた扱いは、平等な取扱いや相手方の信頼を損なうものとして、裁量権の濫用などの問題になります。
ア.正答
行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、当該処分の効力が左右されるものではない。また、裁判所は、法令の解釈適用に当たっては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは、独自にその違法を判定することもできる。
要点通達違反で処分の効力は左右されず、裁判所は通達と異なる解釈ができる。
妥当である。判例は、通達は上級行政機関が下級行政機関などに対して発する行政組織内部の命令で、法規の性質を持たないとし、通達の趣旨に反する処分でも効力は左右されず、裁判所も通達に拘束されないとしました(最判昭43.12.24)。
通達は、行政機関の内部で職務の進め方をそろえるためのものにすぎず、国民の権利義務を定めるものではありません。法令の意味を最終的に判断するのは裁判所なので、通達の解釈に縛られる理由がないのです。
【最判昭43.12.24 判決理由】
このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。また、裁判所がこれらの通達に拘束されることのないことはもちろんで、裁判所は、法令の解釈適用にあたつては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは独自にその違法を判定することもできる筋合である。
イ.誤答
租税法の解釈をめぐって相反する複数の見解があり、裁判所の判断も分かれている状況において、課税庁が従来の取扱いを変更しようとする場合には、法令の改正によらなければならず、これに代えて通達を発するだけでは不十分であるといわざるを得ない。
要点取扱いの変更は法令改正が望ましく、少なくとも通達等で周知すべきである。
妥当でない。判例は、解釈が分かれている問題について課税庁が従来の取扱いを変更する場合には、法令の改正によることが望ましく、仮に法令の改正によらなくても、通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ、定着させる措置を講ずべきだとしました(最判平18.10.24)。法令の改正によらなければならないとまではしていません。
判例は、課税庁が周知の措置をとらずに取扱いを変えた事案で、従来の取扱いに従って申告した納税者には、過少申告加算税を課さない「正当な理由」があるとしました。納税者の信頼を重く見たのです。
【最判平18.10.24 判決理由】
このような問題について,課税庁が従来の取扱いを変更しようとする場合には,法令の改正によることが望ましく,仮に法令の改正によらないとしても,通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう必要な措置を講ずべきものである。
ウ.誤答
一般乗用旅客自動車運送事業の運賃に関し、通達により示された原価計算の方法が、道路運送法所定の運賃認可の要件に適合するか否かの具体的判断基準として合理性を有するものである以上、事業者がこの方法により算定された額とは異なる運賃額を内容とする認可を申請し、その根拠となる原価計算書等を提出したとしても、行政庁は、当該提出書類に基づいて個別に審査判断するまでもなく、同法所定の運賃認可の要件に適合しないものとして、当該申請を拒否することができる。
要点通達と異なる運賃額の申請でも、行政庁は提出書類に基づき個別に審査すべきである。
妥当でない。判例は、通達の示す原価計算の方法が判断基準として合理性を持つとしつつ、事業者がそれと異なる運賃額で認可を申請し、根拠となる原価計算書などを提出した場合には、行政庁は提出書類に基づいて個別に審査判断すべきだとしました(最判平11.7.19)。個別の審査なしに拒否できるとはしていません。
通達は行政の内部の基準にすぎず、法律の定める認可の要件そのものではありません。要件に適合するかは、申請ごとに法律に照らして判断する必要があるのです。
【最判平11.7.19 判決理由】
もっとも、タクシー事業者が平均原価方式により算定された額と異なる運賃額を内容とする運賃の設定又は変更の認可申請をし、右運賃額が同号の基準に適合することを明らかにするため道路運送法施行規則(平成七年運輸省令第一四号による改正前のもの)一〇条二項所定の原価計算書その他運賃の額の算出の基礎を記載した書類を提出した場合には、地方運輸局長は、当該申請について法九条二項一号の基準に適合しているか否かを右提出書類に基づいて個別に審査判断すべきであることはいうまでもない。
エ.正答
行政手続法の規定により行政庁が定め、公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることは、相当と認めるべき特段の事情がない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たる。
要点処分基準と異なる取扱いは、特段の事情がない限り裁量権の逸脱・濫用となる。
妥当である。判例は、行政手続法12条1項により定められ公にされている処分基準に、先行の処分を理由に後行の処分の量定を加重する定めがある場合、行政庁がこれと異なる取扱いをすることは、相当と認めるべき特段の事情がない限り、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるとしました(最判平27.3.3)。
判例は、公にされた処分基準は、判断過程の公正と透明性を確保し相手方の権利利益を守るためのものなので、公正かつ平等な取扱いの要請や、基準に対する相手方の信頼の保護の観点から、行政庁は基準に従うべきだと考えました。
【最判平27.3.3 判決理由】
上記のような行政手続法の規定の文言や趣旨等に照らすと,同法12条1項に基づいて定められ公にされている処分基準は,単に行政庁の行政運営上の便宜のためにとどまらず,不利益処分に係る判断過程の公正と透明性を確保し,その相手方の権利利益の保護に資するために定められ公にされるものというべきである。したがって,行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において,先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に,当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば,裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から,当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り,そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され,…
【行政手続法 第12条第1項】
(処分の基準)
第十二条 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.8
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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