2026年 国家総合職 問題7
憲法憲法の基礎・天皇・平和主義
【No. 7】我が国の憲法改正に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.誤答
憲法は、その改正について、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議することを定めているが、衆議院において憲法改正案が可決されたものの参議院において否決された場合には、再度衆議院において憲法改正案が可決されれば、それが国会による発議とみなされる。
要点憲法改正の発議には、各議院でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成が要る。
妥当でない。憲法改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議します(憲法96条1項)。法律案のような衆議院の再可決(59条2項)は認められていないので、参議院で否決されれば発議はできません。
憲法改正は国の基本法を変えるものなので、両議院がそれぞれ特別多数で賛成することを求め、一方の議院の意思だけで発議できる仕組みは設けていないのです。
【日本国憲法 第59条第2項】
衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
【日本国憲法 第96条第1項】
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2.正答
憲法の改正が国会で発議されると、国民の承認を求めるために国民投票が行われる。この国民投票では、満18歳以上の日本国民に投票権が与えられ、投票総数の過半数の賛成があった場合、国民の承認があったものとみなされる。なお、一定の投票率に達しない場合には過半数の賛成があっても承認があったとはみなさない、いわゆる最低投票率の制度は採用されていない。
要点国民投票では、賛成が投票総数の2分の1を超えれば国民の承認があったとされる。
妥当である。国民投票の投票権は、日本国民で年齢満18年以上の者が有します(国民投票法3条)。賛成の投票の数が、賛成と反対の投票の数を合計した投票総数の2分の1を超えた場合に、憲法96条1項の国民の承認があったものとされます(同法98条2項、126条1項)。最低投票率の定めはありません。
憲法96条1項は「その過半数の賛成」とだけ定めています。何を分母にするかを法律が具体化し、白票などの無効票を除いた、賛否を示した票の過半数としたのです。
【日本国憲法の改正手続に関する法律 第3条】
(投票権)
第三条 日本国民で年齢満十八年以上の者は、国民投票の投票権を有する。
【日本国憲法の改正手続に関する法律 第98条第2項】
(国民投票の結果の報告及び告示等)
2 中央選挙管理会は、前項又は第百三十五条第六項後段の報告を受けたときは、直ちに憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数、投票総数(憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数を合計した数をいう。)並びに憲法改正案に対する賛成の投票の数が当該投票総数の二分の一を超える旨又は超えない旨を官報で告示するとともに、総務大臣を通じ内閣総理大臣に通知しなければならない。
【日本国憲法の改正手続に関する法律 第126条第1項】
第百二十六条 国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が第九十八条第二項に規定する投票総数の二分の一を超えた場合は、当該憲法改正について日本国憲法第九十六条第一項の国民の承認があったものとする。
3.誤答
国民投票に関し異議がある投票人は、憲法改正発議の主体たる国会を被告として、国民投票の結果の告示の日から30日以内に、最高裁判所に国民投票無効の訴訟を提起することができる。憲法の改正は非常に影響力が大きいことに鑑み、この訴訟が提起されると、判決までの間、国民投票の効力は停止される。
要点国民投票無効訴訟は東京高裁に提起し、提起されても国民投票の効力は停止しない。
妥当でない。国民投票無効の訴訟は、中央選挙管理会を被告として、結果の告示の日から30日以内に、東京高等裁判所に提起します(国民投票法127条)。また、訴訟が提起されても、国民投票の効力は停止しません(130条)。
国民の承認があれば、内閣総理大臣は直ちに公布のための手続を執ることとされています(126条2項)。訴えの提起だけで効力を止めると、改正の成否が長く不確定になるので、効力は停止しないことにしています。
【日本国憲法の改正手続に関する法律 第126条第2項】
2 内閣総理大臣は、第九十八条第二項の規定により、憲法改正案に対する賛成の投票の数が同項に規定する投票総数の二分の一を超える旨の通知を受けたときは、直ちに当該憲法改正の公布のための手続を執らなければならない。
【日本国憲法の改正手続に関する法律 第127条】
(国民投票無効の訴訟)
第百二十七条 国民投票に関し異議がある投票人は、中央選挙管理会を被告として、第九十八条第二項の規定による告示の日から三十日以内に、東京高等裁判所に訴訟を提起することができる。
【日本国憲法の改正手続に関する法律 第130条】
(国民投票無効の訴訟の提起と国民投票の効力)
第百三十条 第百二十七条の規定による訴訟の提起があっても、憲法改正案に係る国民投票の効力は、停止しない。
4.誤答
憲法の改正について、国民投票により国民の承認を経たとき、天皇は、その名において、日本国憲法と一体を成すものとして、1週間以内にこれを公布しなければならない。この公布は、国事行為である。
要点改正の承認を経たとき、天皇は、国民の名で、直ちに公布する。
妥当でない。国民の承認を経たときは、天皇は、「その名において」ではなく国民の名で、「1週間以内」ではなく直ちに、これを公布します(憲法96条2項)。この公布が国事行為であることは正しい内容です(7条1号)。
国民主権の下では、憲法を改正する主体は国民です。そのため、公布は天皇の名ではなく国民の名で行うこととされています。
【日本国憲法 第7条】
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
(略)
【日本国憲法 第96条第2項】
憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
5.誤答
憲法の改正については、大きく分けて、全ての規定について自由に改正が行えるとする説(Ⅰ説)と、一部の規定については自由に改正が行えないとする説(Ⅱ説)があるが、基本的人権や国民主権といった普遍的かつ実定法に優越する原理が存在するという考え方は、Ⅰ説に対してより親和的である。
要点実定法に優越する原理を認める考え方は、改正限界説(Ⅱ説)に親和的である。
妥当でない。基本的人権や国民主権のような、普遍的で実定法に優越する原理があるという考え方は、全ての規定を自由に改正できるとするⅠ説ではなく、一部の規定は自由に改正できないとするⅡ説(改正限界説)に親和的です。
そうした原理は、憲法の改正手続によっても変えられない基本原理だと考えることになるので、改正には限界があるという結論につながります。逆に、実定法を超える原理を認めなければ、手続さえ踏めばどの規定も変えられるというⅠ説に近づきます。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.7
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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