2026年 国家総合職 問題6
憲法裁判所の組織・地位・権能
【No. 6】我が国の裁判所の組織や権能に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
憲法は、特別裁判所を設置することを禁止しているが、現在の家庭裁判所や知的財産高等裁判所は、家事事件、少年事件や知的財産に関する事件には通常の民事事件や刑事事件にはない特殊性が認められること、また、これらの事件の審理に特化した裁判所をそれぞれ設置することに特段の弊害は認められないことに鑑み、特別裁判所の禁止の例外として、憲法によって設置されている。
要点家庭裁判所や知的財産高等裁判所は、法律で設けた通常裁判所の系列に属する。
妥当でない。家庭裁判所や知的財産高等裁判所は、特別裁判所の禁止の例外として憲法で設けられたものではありません。いずれも法律で設けられた、通常裁判所の系列に属する下級裁判所(知的財産高等裁判所は東京高等裁判所の特別の支部)です。判例も、家庭裁判所は一般的に司法権を行う通常裁判所で、特別裁判所ではないとしました(最大判昭31.5.30)。
憲法76条2項が禁じる特別裁判所とは、通常裁判所の系列から独立して、特定の人や事件について裁判をする裁判所です。系列の中にあり、最高裁判所への上訴の道が開かれていれば、特別裁判所には当たりません。
【最大判昭31.5.30 裁判要旨】
一 家庭裁判所は一般的に司法権を行う通常裁判所であつて、憲法第七六条第二項にいわゆる特別裁判所ではない。
【日本国憲法 第76条第1項・第2項】
第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
イ.誤答
憲法は、最高裁判所に独自の規則制定権を認めているが、この規則制定権に基づく規則は、専ら裁判所の内部規律や司法事務処理に関する事項について定めるものであり、一般の国民を拘束するものではないことから、憲法が国会を「国の唯一の立法機関」と定めていることの例外となるものではないと一般に解されている。
要点最高裁判所の規則は、国会中心立法の原則の例外と解されている。
妥当でない。憲法77条は、最高裁判所に、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について規則を定める権限を与え、検察官も規則に従わなければならないとしています。訴訟手続の規則は訴訟の当事者となる国民も拘束するので、「一般の国民を拘束しない」は誤りです。通説では、規則制定権は国会を「国の唯一の立法機関」とする憲法41条の例外だと解されています。
裁判の手続や裁判所の運営は、実務に通じた裁判所自身が定めるのが適切で、司法の独立にも役立つので、憲法自身が国会以外の機関に定めることを認めたのです。
【日本国憲法 第41条】
第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
【日本国憲法 第77条第1項・第2項】
第七十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
ウ.正答
下級裁判所の裁判に対して、当事者が不服申立てをした場合に、上級裁判所は下級裁判所の裁判を取り消し又は変更する裁判ができ、この関係を審級関係という。審級関係をどのように定めるかは法律に委ねられており、現在の我が国では、原則として三審制が採用されている。
要点審級制度は、憲法81条の要請を除き、法律で定められる。
妥当である。上級裁判所が下級裁判所の裁判を取り消し又は変更できる関係を審級関係といいます。判例は、違憲審査を必要とする事件が終審として最高裁判所に属すべきこと(憲法81条)を除けば、審級制度は法律の定めるところに委ねられているとしました(最大判昭29.10.13)。現在は、裁判所法などにより、原則として三審制が採られています。
憲法が審級について定めているのは、法令の合憲性について最高裁判所に最終の判断をさせる点だけです。それ以外の審級の組立ては、事件の種類や裁判所の体制に応じて、国会が法律で決めることにしているのです。
【最大判昭29.10.13 判決理由】
最高裁判所の裁判権については、違憲審査を必要とする事件が終審としてその事物管轄に属すべきことは憲法上要請されているところであるが(憲法八一条)、その他の事件の審級制度については法律の定めるところに委されていると解すべきであるから、…
【日本国憲法 第81条】
第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
エ.誤答
最高裁判所は、その長たる裁判官(最高裁判所長官)1名及びその他の裁判官(最高裁判所判事)14名によって構成される。このうち、最高裁判所長官については、内閣の指名に基づいて天皇が任命するが、最高裁判所判事については、最高裁判所長官の指名した者の名簿によって内閣が任命する。
要点最高裁判所判事は、内閣が任命する。名簿によるのは下級裁判所の裁判官である。
妥当でない。最高裁判所は、長官1名と判事14名で構成されます(裁判所法5条)。長官は内閣の指名に基づいて天皇が任命し(憲法6条2項)、判事は内閣が任命します(79条1項)。最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣が任命するのは、下級裁判所の裁判官です(80条1項)。
最高裁判所の裁判官には、任命の後に国民審査という国民による統制が予定されています(79条2項)。一方、下級裁判所の裁判官は、最高裁判所が名簿で候補者を示す形にして、司法部の判断を任命に反映させる仕組みです。
【日本国憲法 第6条第2項】
天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
【日本国憲法 第79条第1項・第2項】
第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
【日本国憲法 第80条第1項】
第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
【裁判所法 第5条第1項・第3項】
(裁判官)
第五条 最高裁判所の裁判官は、その長たる裁判官を最高裁判所長官とし、その他の裁判官を最高裁判所判事とする。
最高裁判所判事の員数は、十四人とし、下級裁判所の裁判官の員数は、別に法律でこれを定める。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.6
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
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