2026年 国家総合職 問題4
憲法人身の自由
【No. 4】人身の自由に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
捜査対象者らの承諾のないGPS捜査は、個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品にひそかに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるが、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものであるとまではいえないため、刑事訴訟法上の強制の処分には当たらず、令状がなくとも行うことができる。
要点GPS捜査は、令状がなければ行うことができない強制の処分である。
妥当でない。判例は、GPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして強制の処分に当たり、令状がなければ行うことができないとしました(最大判平29.3.15)。
判例は、憲法35条の保障の対象には、「住居、書類及び所持品」に準ずる私的領域に侵入されない権利が含まれるとしました。GPS捜査は、所持品にひそかに機器を付けてこの私的領域に侵入するので、その権利を侵害すると考えたのです。
【最大判平29.3.15 判決理由】
憲法35条は,「住居,書類及び所持品について,侵入,捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ,この規定の保障対象には,「住居,書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するのが相当である。
【最大判平29.3.15 裁判要旨】
車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であり,令状がなければ行うことができない強制の処分である。
【日本国憲法 第35条第1項】
第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
イ.正答
刑事事件において、被告人以外の第三者の所有物を没収する場合は、被告人に対する付加刑の言渡しにより、その刑事処分の効果が第三者に及ぶことから、所有物を没収される第三者に対し、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であり、憲法第29条及び第31条に違反する。
要点告知・弁解・防御の機会なく第三者所有物を没収することは、違憲である。
妥当である。判例は、関税法の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法31条、29条に違反するとしました(最大判昭37.11.28)。
判例は、所有物を没収される第三者にも、告知、弁解、防御の機会を与えることが必要で、それなしに所有権を奪うのは、適正な法律手続によらずに財産権を侵害することになると考えました。憲法31条は、手続が法律で定められているだけでなく、その内容が適正であることも求めていると解されています。
【最大判昭37.11.28 裁判要旨】
一 関税法第一一八条第一項の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法第三一条、第二九条に違反する。
【日本国憲法 第29条第1項】
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
【日本国憲法 第31条】
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
ウ.正答
憲法第33条は、不法な逮捕からの自由として、逮捕についての令状主義を規定しているが、現行犯として逮捕される場合はその例外である。また、令状は、裁判官が発したものであり、かつ、理由となっている犯罪を明示していなければならない。
要点逮捕には令状が必要で、現行犯逮捕はその例外である。
妥当である。憲法33条は、現行犯として逮捕される場合を除き、権限を有する司法官憲(裁判官)が発し、かつ、理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ逮捕されないと定めています。
通説では、令状主義は、逮捕の理由と必要があるかを中立の裁判官に事前に審査させて、捜査機関による恣意的な身体の拘束を防ぐ仕組みだと解されています。現行犯は、犯罪と犯人が明白で誤って逮捕するおそれが小さいので、例外とされています。
【日本国憲法 第33条】
第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
エ.正答
憲法第34条前段の弁護人に依頼する権利は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないということにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談しその助言を受けるなど、弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障しているものと解すべきである。
要点憲法34条前段は、弁護人から援助を受ける機会を実質的に保障している。
妥当である。判例は、憲法34条前段の弁護人に依頼する権利は、単に弁護人の選任を官憲が妨害してはならないというにとどまらず、弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障しているとしました(最大判平11.3.24)。
判例は、この権利の目的を、身体を拘束された被疑者が、嫌疑を晴らしたり自由を回復したりするために弁護人の援助を受けられるようにすることにあると考えました。目的が援助を受けることにある以上、選任の妨害を禁じるだけでは足りないのです。
【最大判平11.3.24 判決理由】
この弁護人に依頼する権利は、身体の拘束を受けている被疑者が、拘束の原因となっている嫌疑を晴らしたり、人身の自由を回復するための手段を講じたりするなど自己の自由と権利を守るため弁護人から援助を受けられるようにすることを目的とするものである。したがって、右規定は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障しているものと解すべきである。
【日本国憲法 第34条】
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
オ.誤答
憲法第38条第1項の規定によるいわゆる供述拒否権は、自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものであるが、旧国税犯則取締法上の質問調査手続は、実質上刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結び付く作用を一般的に有するわけではないため、当該手続に供述拒否権の保障は及ばない。
要点国税犯則取締法上の質問調査の手続にも、供述拒否権の保障は及ぶ。
妥当でない。判例は、憲法38条1項による供述拒否権の保障は、国税犯則取締法上の犯則嫌疑者に対する質問調査の手続にも及ぶとしました(最判昭59.3.27)。
判例は、この保障は純然たる刑事手続に限らず、実質上刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続にも及ぶとしたうえで、犯則調査の手続はこれに当たるとしました。手続の名前ではなく、刑事責任の追及につながるかという実質で判断するのです。
【最判昭59.3.27 裁判要旨】
一 憲法三八条一項の規定による供述拒否権の保障は、国税犯則取締法上の犯則嫌疑者に対する質問調査の手続にも及ぶ。
【日本国憲法 第38条第1項】
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.4
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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