2026年 国家総合職 問題3
憲法経済的自由の総合
【No. 3】経済的自由権に関するア~オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
薬事法に基づく薬局開設の許可制及び許可条件としての適正配置規制は、主として国民の生命及び健康に対する危険の防止という消極的、警察的目的のための規制措置であるが、許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっても、その目的を十分に達成することができると解されるから、許可制の採用自体が重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であるとはいえず、憲法第22条第1項に違反する。
要点許可制自体は是認され、適正配置規制が憲法22条1項に違反するとされた。
妥当でない。判例は、不良医薬品から国民の健康と安全を守るための薬局開設の許可制は、それ自体としては是認できるとしたうえで、許可条件である適正配置規制が憲法22条1項に違反するとしました(最大判昭50.4.30)。許可制の採用自体を違憲としたのではありません。
消極的・警察的な目的の規制では、より緩やかな規制で目的を達成できるなら許可制は認められません。判例は、この要件を許可制そのものとは別に、個々の許可条件についても確かめ、適正配置規制はその要件を満たさないとしました。
【最大判昭50.4.30 判決理由】
そして、この要件は、許可制そのものについてのみならず、その内容についても要求されるのであつて、許可制の採用自体が是認される場合であつても、個々の許可条件については、更に個別的に右の要件に照らしてその適否を判断しなければならないのである。
【最大判昭50.4.30 裁判要旨】
薬事法六条二項、四項(これらを準用する同法二六条二項)は、憲法二二条一項に違反する。
イ.誤答
酒類販売の免許制は、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという重要な公共の利益のために採られた措置であるが、酒税法の納税義務者は酒造業者であって販売業者ではなく、販売業への参入規制により販売業の経営の安定を図ることと酒税の確実な納入を確保することとの合理的関連性を欠くのであるから、憲法第22条第1項に違反する。
要点酒類販売の免許制は、憲法22条1項に違反しない。
妥当でない。判例は、酒類販売業の免許制を定める酒税法の規定は、憲法22条1項に違反しないとしました(最判平4.12.15)。
判例は、租税の適正かつ確実な賦課徴収という国家の財政目的のための許可制は、租税の分野で立法府の政策的・技術的な判断が尊重されることから、立法府の判断がその裁量の範囲を逸脱し著しく不合理でない限り合憲だとしました。
【最判平4.12.15 判決理由】
以上のことからすると、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法二二条一項の規定に違反するものということはできない。
ウ.誤答
外務大臣が旅券の発給を拒否することができる場合として、旅券法(当時)が、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」と規定したのは、憲法第22条第2項に違反しないが、旅券の発給を拒否できるのは、当該行為によって単に危険な事態を生じる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合に限られると解すべきである。
要点旅券法の発給拒否規定は、外国旅行の自由に対する合理的な制限で合憲である。
妥当でない。判例は、旅券法の規定(当時の13条1項5号)を、外国旅行の自由に対し公共の福祉のため合理的な制限を定めたもので憲法22条2項に違反しないとし、その規定による旅券発給拒否も違法ではないとしました(最大判昭33.9.10)。「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合に限られる」という限定は、判例は付けていません。
判例は、外国旅行の自由も無制限ではなく、日本国の利益や公安を著しく害するおそれのある渡航を、公共の福祉のために制限することを認めました。
【最大判昭33.9.10 裁判要旨】
一 旅券法第一三条第一項第五号は、外国旅行の自由に対し、公共の福祉のため合理的な制限を定めたもので、憲法第二二条第二項に違反しない。
二 原審認定の事実関係(原判決参照)、特に占領治下我国の当面する国際情勢の下において、外務大臣が上告人らのモスコー国際経済会議への参加を旅券法第一三条第一項第五号にあたると判断してなした旅券発給拒否の処分は、違法とはいえない。
エ.正答
市営住宅への入居を継続させる者に係る判断については、地方公共団体に一定の裁量があるというべきであり、暴力団員が市営住宅に入居し続ける場合、他の入居者等の生活の平穏を害するおそれを否定できず、暴力団員が市営住宅を明け渡さざるを得ないとしても、当該市営住宅以外への居住にまで制限を受けるわけではないことなどから、暴力団員であることが判明した入居者に対し市営住宅の明渡しを請求することができる条例の規定は、公共の福祉による必要かつ合理的なものであることが明らかであり、憲法第22条第1項に違反しない。
要点暴力団員の市営住宅明渡しを定める条例の規定は、憲法22条1項に違反しない。
妥当である。判例は、入居者が暴力団員であることが判明した場合に市営住宅の明渡しを請求できるとする条例の規定は、憲法22条1項に違反しないとしました(最判平27.3.27)。
判例は、他の入居者等の生活の平穏が害されるおそれを除くという目的に対し、制約は市営住宅という特定の住まいからの退去にとどまり、それ以外の場所に住むことまで制限されない点を重く見て、制約は必要かつ合理的だとしました。
【最判平27.3.27 裁判要旨】
2 西宮市営住宅条例(平成9年西宮市条例第44号)46条1項柱書き及び同項6号の規定のうち,入居者が暴力団員であることが判明した場合に市営住宅の明渡しを請求することができる旨を定める部分は,憲法22条1項に違反しない。
オ.正答
憲法第29条第3項の「公共のために用ひる」とは、直接公共の用に供するため私有財産を収用又は制限する場合のみならず、特定の個人が受益者となるものの収用全体の目的が公共の利益のためである場合も含まれるのであり、国による土地の買収において、買収された土地が特定の個人に売り渡されるとしても、そのことのみをもって当該買収の公共性は否定されない。
要点買収した土地が特定の個人に売り渡されても、公共性は否定されない。
妥当である。判例は、自作農創設特別措置法による宅地の買収は公共のためであって、憲法29条3項に違反しないとしました(最判昭29.1.22)。
判例は、農地改革は自作農を創設して農業生産力の発展と農村の民主化を図る公共の福祉のためのもので、買収した土地が特定の者に売り渡されるのは、その目的を実現する当然の結果だとしました。「公共のために用ひる」かどうかは、収用全体の目的で判断されます。
【最判昭29.1.22 判決理由】
…自創法による農地改革は、同法一条に、この法律の目的として掲げたところによつて明らかなごとく、耕作者の地位を安定し、その労働の成果を公正に享受させるため自作農を急速且つ広汎に創設し、又、土地の農業上の利用を増進し、以て農業生産力の発展と農村における民主的傾向の促進を図るという公共の福祉の為の必要に基いたものであるから、自創法により買収された農地、宅地、建物等が買収申請人である特定の者に売渡されるとしても、それは農地改革を目的とする公共の福祉の為の必要に基いて制定された自創法の運用による当然の結果に外ならない…
【日本国憲法 第29条第3項】
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.3
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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