2026年 国家総合職 問題2
憲法法の下の平等
【No. 2】法の下の平等に関するア~オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
障害福祉年金と児童扶養手当との併給を禁じた規定は、障害福祉年金を受けることができる地位にある者とそのような地位にない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別を生じさせるものであるから、憲法第14条に違反する。
要点障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止規定は、憲法14条に違反しない。
妥当でない。判例は、障害福祉年金と児童扶養手当の併給を禁じた規定は、憲法25条にも、14条にも違反しないとしました(最大判昭57.7.7)。
判例は、憲法25条を具体化する立法措置の選択は、財政事情や専門技術的な考察を踏まえた政策判断を要するので立法府の広い裁量に委ねられるとし、併給調整によって生じる区別も、その裁量の範囲内のもので不合理とはいえないとしました。
【最大判昭57.7.7 判決理由】
したがつて、憲法二五条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない。
【最大判昭57.7.7 裁判要旨】
二 児童扶養手当法(昭和四八年法律第九三号による改正前のもの)四条三項三号は、憲法一四条、一三条に違反しない。
イ.誤答
定年年齢を男子60歳、女子55歳と定める企業の就業規則について、企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められない場合、女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして憲法第14条第1項の規定に違反し無効である。
要点女子若年定年制は、民法90条により無効とされた。
妥当でない。判例は、女子の定年年齢を男子より低く定めた就業規則の部分を、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして、民法90条の規定により無効としました(最判昭56.3.24)。憲法14条1項に違反するとしたのではありません。
通説では、憲法の人権規定は国家と国民の関係を規律するもので、私人の間には直接適用されず、民法90条(公序良俗)などの一般条項を通じて、その価値が取り込まれると解されています。会社の就業規則は私人の定めなので、この形で判断されました。
【最判昭56.3.24 裁判要旨】
会社がその就業規則中に定年年齢を男子六〇歳、女子五五歳と定めた場合において、担当職務が相当広範囲にわたつていて女子従業員全体を会社に対する貢献度の上がらない従業員とみるべき根拠はなく、労働の質量が向上しないのに実質賃金が上昇するという不均衡は生じておらず、少なくとも六〇歳前後までは男女とも右会社の通常の職務であれば職務遂行能力に欠けるところはなく、一律に従業員として不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はないなど、原判示の事情があつて、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法九〇条の規定により無効である。
【民法 第90条】
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
ウ.正答
衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に政見放送その他の選挙運動を認める公職選挙法の規定は、候補者のみならず候補者届出政党にも選挙運動を認めることが是認される以上、候補者届出政党に所属する候補者とこれに所属しない候補者との間に選挙運動の上で差異を生じることは避け難いところであり、その差異が一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度に達しているとは断定し難いから、憲法第14条第1項に違反するとはいえない。
要点候補者届出政党に政見放送等を認める規定は、憲法14条1項に違反しない。
妥当である。判例は、小選挙区選挙で候補者届出政党に政見放送その他の選挙運動を認める公職選挙法の規定について、所属候補者と無所属候補者との間の差異が一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度に達しているとは断定し難いとして、憲法14条1項に違反しないとしました(最大判平11.11.10)。
選挙制度の仕組みは法律で定めることとされ(憲法47条)、国会に広い裁量があります。判例は、政策本位・政党本位の選挙制度を採ることも国会の裁量の範囲内である以上、政党に選挙運動を認めることから生じる差異は、制度に伴うものとして許されるとしました。
【最大判平11.11.10 裁判要旨】
二 衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に政見放送その他の選挙運動を認める公職選挙法の規定は、候補者届出政党に所属する候補者とこれに所属しない候補者との間に選挙運動の上で差異を生ずるものであるが、その差異が一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度に達しているとは断定し難く、憲法一四条一項に違反するとはいえない。(二につき反対意見がある。)
【日本国憲法 第47条】
第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
エ.正答
憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生じることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法自ら容認するところと解すべきであって、地方公共団体が売春の取締りについてそれぞれで条例を制定する結果、その取扱いに差別を生じることがあっても、憲法第14条に違反するとはいえない。
要点条例による地域ごとの取扱いの差は、憲法14条に違反しない。
妥当である。判例は、地方公共団体が売春の取締りについて各別に条例を制定する結果、その取扱いに差別を生ずることがあっても、憲法14条に違反しないとしました(最大判昭33.10.15)。
憲法94条は、地方公共団体に法律の範囲内で条例を制定する権能を認めています。地域の実情に応じて各団体が別々に定めることを憲法自身が認めている以上、内容に地域差が出るのは制度の当然の結果だと判例は考えました。
【最大判昭33.10.15 裁判要旨】
地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあつても、憲法第一四条に違反しない。
【日本国憲法 第94条】
第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
オ.誤答
旧所得税法の給与所得課税に関する諸規定は、給与所得に係る必要経費について実額控除を認めず概算控除を設けるにとどまっていること、源泉徴収制度により給与所得の捕捉率はほかの所得に比べ高くなっていること、事業所得者に対しては租税優遇措置の利益が与えられていることから、事業所得者等に比べて給与所得者に著しく不公平な所得税負担を課すものであって、憲法第14条第1項に違反する。
要点給与所得の必要経費の実額控除を認めない規定は、憲法14条1項に違反しない。
妥当でない。判例は、給与所得について必要経費の実額控除を認めない旧所得税法の規定は、憲法14条1項に違反しないとしました(最大判昭60.3.27)。
判例は、租税の負担を定めるには国政全般からの総合的な政策判断と極めて専門技術的な判断が必要なので、立法府の判断を尊重すべきだとし、立法目的が正当で、区別の態様が目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、合憲だとする緩やかな基準を示しました。
【最大判昭60.3.27 裁判要旨】
一 租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、憲法一四条一項に違反するものということはできない。
二 給与所得の金額の計算につき必要経費の実額控除を認めない所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)九条一項五号は、憲法一四条一項に違反しない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.2
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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