2026年 国家総合職 問題30
民法親族
【No. 30】婚姻の解消に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.正答
婚姻が婚姻適齢、重婚禁止などの規定に違反したものである場合や、詐欺又は強迫によってされたものである場合には、当該婚姻は取り消すことができる。一般の法律行為の取消しには遡及効があるのに対し、婚姻の取消しは将来に向かってのみその効力を生じるため、嫡出子は、婚姻の取消し後もその地位を失わない。
要点婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生じ、嫡出子の地位は失われない。
妥当である。婚姻適齢や重婚禁止などの規定に違反した婚姻(民法744条)や、詐欺又は強迫による婚姻(747条1項)は、取り消すことができます。一般の法律行為の取消しには遡及効がありますが(121条)、婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生じます(748条1項)。そのため、婚姻中に生まれた子は、取消し後も嫡出子の地位を失いません。
婚姻は、取り消されるまで夫婦として共同生活が営まれた事実の上に成り立っています。さかのぼって無かったことにすると、子の身分や財産関係が混乱するからです。
【民法 第121条】
(取消しの効果)
第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
【民法 第744条第1項】
(不適法な婚姻の取消し)
第七百四十四条 第七百三十一条、第七百三十二条及び第七百三十四条から第七百三十六条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
【民法 第747条第1項】
(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)
第七百四十七条 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
【民法 第748条第1項】
(婚姻の取消しの効力)
第七百四十八条 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2.誤答
重婚の場合において、後婚が離婚によって解消されたときは、その離婚後においても、後婚の取消しを請求することにはなお法律上の利益があるから、特段の事情のない限り、重婚に当たることを理由とする後婚取消しの請求が可能である。
要点後婚が離婚で解消された場合、原則として後婚の取消しは請求できない。
妥当でない。判例は、重婚の場合に、後婚が離婚によって解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚の取消しを請求することは許されないとしました(最判昭57.9.28)。
婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生じ、その効果は離婚の効果に準じます。既に離婚で解消された後婚を取り消しても、効果はほとんど変わらないので、判例は、取消しを求める法律上の利益がないと考えたのです。
【最判昭57.9.28 判決理由】
けだし、婚姻取消の効果は離婚の効果に準ずるのであるから(民法七四八条、七四九条)、離婚後、なお婚姻の取消を請求することは「特段の事情がある場合のほか、法律上その利益がないものというべきだからである。
【最判昭57.9.28 裁判要旨】
重婚において、後婚が離婚によつて解消された場合には、特段の事情のない限り、後婚の取消を請求することは許されない。
3.誤答
婚姻が取り消された場合、婚姻時にその取消しの原因があることを知らなかった当事者は、婚姻によって得た財産を、現に利益を受けている限度で返還しなければならない。一方で、婚姻時にその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た財産を、現に利益を受けている限度で返還するのに加えて、損害を賠償しなければならない。
要点取消原因を知っていた当事者は、得た利益の全部を返還し、損害も賠償する。
妥当でない。婚姻の時に取消しの原因があることを知らなかった当事者は、婚姻によって得た財産を、現に利益を受けている限度で返還すれば足ります(民法748条2項)。一方、知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならず、相手方が善意であったときは損害も賠償します(同条3項)。悪意の当事者が「現に利益を受けている限度」で返還すれば足りるとする部分が誤りです。
取消原因を知りながら婚姻した者には、得た利益を残しておく理由がありません。善意の者との扱いを分けて、責任の重さに差を付けているのです。
【民法 第748条第2項・第3項】
(婚姻の取消しの効力)
2 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。
3 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。
4.誤答
夫婦はその協議によって離婚をすることができるが、離婚が生活保護の受給を継続するための手段としてなされ、離婚の届出後も当事者が実質的には夫婦として共同生活を続けているような場合には、当該離婚は方便でしかなく、実質的な離婚の意思があったとは認められないから、当該離婚は無効となる。
要点生活扶助を受けるための方便の協議離婚も、離婚の意思の合致があれば有効である。
妥当でない。判例は、夫婦が事実上の婚姻関係を続けながら、生活扶助を受けるための方便として協議離婚の届出をした場合でも、その届出が真に法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づくものであるときは、協議離婚は無効とはいえないとしました(最判昭57.3.26)。
判例は、離婚の意思を、実質的に夫婦生活をやめる意思ではなく、法律上の婚姻関係を解消する意思と考えています。生活保護を受けるために法律上の夫婦でなくなることを望んだ以上、その意思はあるといえるのです。
【最判昭57.3.26 裁判要旨】
夫婦が事実上の婚姻関係を継続しつつ、単に生活扶助を受けるための方便として協議離婚の届出をした場合でも、右届出が真に法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてされたものであるときは、右協議離婚は無効とはいえない。
5.誤答
合意により離婚届を作成した夫婦の一方が、その届出を相手方に委託した後、協議離婚の意思を翻し、市役所の戸籍係員に対して「相手方から離婚届が出されても、自分は承諾していないので受理しないでほしい。」という旨を伝えていた場合であっても、相手方本人に対して翻意が伝わらないままに相手方から届出がされたときは、当該届出は有効であり、離婚は成立する。
要点翻意を戸籍係員に表示し、届出時に離婚意思がなければ、届出は無効である。
妥当でない。判例は、協議離婚届書を作成して届出を相手方に委託した後に翻意し、それを市役所の戸籍係員に表示していて、相手方による届出の当時、離婚の意思を有しないことが明確であるときは、相手方に翻意が伝わっていなくても、届出は無効になり得るとしました(最判昭34.8.7)。
協議離婚は届出によって成立するので、離婚の意思は届出の時に必要です。届出の時に意思がないことが明らかなら、離婚は成立しないのです。
【最判昭34.8.7 裁判要旨】
合意により協議離婚届書を作成した一方の当事者が、届出を相手方に委託した後、協議離婚を飜意し、右飜意を市役所戸籍係員に表示しており、相手方によつて届出がなされた当時、離婚の意思を有しないことが明確であるときは、相手方に対する飜意の表示または届出委託の解除の事実がなくとも、協議離婚届出が無効でないとはいえない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.30
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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