2026年 国家総合職 問題29
民法契約総論・売買・贈与
【No. 29】贈与に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することで成立する契約です(民法549条)。受贈者は対価を払わないので、片務・無償の契約です。
ただで財産を与える約束なので、民法は、贈与者が軽はずみに約束した場合を考えて、拘束を弱めています。書面によらない贈与の解除(550条)や、贈与者の引渡義務を軽くする推定(551条1項)が、その例です。
【民法 第549条】
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
ア.誤答
贈与は、当事者間の合意のみで成立する諾成契約である。具体的には、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって成立する契約のことをいい、他人の所有に属する財産の贈与は認められない。
要点贈与は諾成契約で、他人の財産を目的とする贈与も有効である。
妥当でない。贈与が当事者の合意だけで成立する諾成契約であるとする前半は正しい内容です。しかし、民法549条は贈与の目的を「ある財産」としていて、自己の財産に限っていません。他人の所有に属する財産の贈与も有効で、贈与者はその財産を取得して受贈者に移転する義務を負います。
売買で他人の物を売ることが認められている(561条)のと同じく、契約は、今は持っていない財産を後で手に入れて与える約束としても成り立つからです。
【民法 第561条】
(他人の権利の売買における売主の義務)
第五百六十一条 他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
イ.誤答
書面によらない贈与においては、履行状況にかかわらず、各当事者は一方的に解除をすることができる。一方、書面による贈与においては、履行状況にかかわらず、各当事者は一方的に解除をすることができない。
要点書面によらない贈与も、履行の終わった部分は解除できない。
妥当でない。書面によらない贈与は、各当事者が解除できますが、履行の終わった部分については解除できません(民法550条)。「履行状況にかかわらず」解除できるわけではありません。書面による贈与が解除できないとする後半は正しい内容です。
書面によらない贈与を解除できるのは、軽率な贈与を防ぎ、贈与の意思をはっきりさせるためです。実際に履行したのなら、贈与の意思ははっきりしているので、解除を認める必要がないのです。
【民法 第550条】
(書面によらない贈与の解除)
第五百五十条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
ウ.誤答
負担付贈与とは、受贈者も一定の給付をする債務を負担する贈与契約であり、受贈者の負担する債務と贈与者の債務とが対価的に釣り合う双務契約である。事実上、売買契約と同視されることから、受贈者に引き渡された目的物に契約不適合があった場合、売買契約に関する規定が準用され、贈与者は、売買契約における売主と同様の担保責任を負う。
要点負担付贈与には双務契約の規定が準用され、贈与者は負担の限度で担保責任を負う。
妥当でない。負担付贈与の負担は、贈与の対価ではないので、負担付贈与も双務契約ではなく、売買と同視されるわけでもありません。民法は、負担付贈与に、その性質に反しない限り双務契約に関する規定を準用するとし(553条)、贈与者は負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負うとしています(551条2項)。
受贈者が負担を負う分だけ、贈与は有償の取引に近づきます。そこで、負担の範囲で売主と同じ責任を負わせ、受贈者が負担だけを負わされる不公平を防いでいるのです。
【民法 第551条第2項】
(贈与者の引渡義務等)
2 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
【民法 第553条】
(負担付贈与)
第五百五十三条 負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
エ.正答
定期の給付を目的とする贈与を定期贈与といい、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力は失われるが、特約により、別段の定めをすることもできる。
要点定期贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって効力を失う。
妥当である。定期の給付を目的とする贈与(定期贈与)は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失います(民法552条)。通説では、これと異なる特約をすることもできると解されています。
定期贈与は、例えば毎月の仕送りのように、当事者の個人的な関係に基づくのが普通です。その関係は、当事者の一方が死亡すれば終わるのが通常の意思なので、相続人に引き継がせないことにしているのです。
【民法 第552条】
(定期贈与)
第五百五十二条 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.29
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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