2026年 国家総合職 問題24
民法抵当権
【No. 24】抵当権に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
抵当権は、債務者や第三者が占有を移さないまま不動産を担保に供し、債務が履行されないときに、その不動産の価値から優先して弁済を受ける権利です(民法369条1項)。抵当権者がつかんでいるのは不動産の交換価値で、抵当権が実行されるまでは、設定者が不動産を使い、収益を上げることができます。
このため、抵当権者は、不動産の使い方に原則として口を出せず、自ら使うこともできません。ただし、交換価値の実現が妨げられるときには、それを守るための手段が認められています。
【民法 第369条第1項】
(抵当権の内容)
第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
1.誤答
抵当権設定登記がされた後は抵当権設定者の収益権は制限されるため、抵当権設定者は、抵当不動産を使用することはできるが、抵当権者の承諾なくそれを第三者に賃貸することは原則的に認められず、もし賃貸した場合には、担保価値維持義務違反に問われる。
要点抵当権設定者は、抵当不動産を使用収益でき、第三者に賃貸することもできる。
妥当でない。抵当権は占有を移さない担保なので、設定登記がされた後も、設定者は抵当不動産を使用し、収益することができます。抵当権者の承諾なく第三者に賃貸することもでき、それだけで担保価値維持義務違反に問われるわけではありません。
抵当権者が把握しているのは、実行の時の不動産の交換価値です。設定者が使ったり貸したりして収益を上げることは、抵当権の内容と両立するのです。
2.正答
抵当権の効力は、抵当権の目的である不動産そのものに加え、被担保債権に不履行があった後に当該不動産から生じる賃料債権にも及ぶため、抵当権者は、当該賃料債権から優先弁済を受けることができる。
要点抵当権は、被担保債権の不履行後に生じた果実(賃料)にも及ぶ。
妥当である。抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及びます(民法371条)。賃料は法定果実なので、不履行後の賃料にも抵当権の効力が及び、抵当権者はそこから優先弁済を受けることができます。
不履行までは、設定者が不動産を使って収益を上げることが認められています。不履行があれば、抵当権者が担保の価値を実現する段階に入るので、その後の収益も抵当権の対象にし、両者の利益を調整しているのです。
なお、令和7年6月公布の改正(令和9年12月施行予定)で、371条は、不履行の後に生じた果実に限らず、まだ収取されていない果実に抵当権が及ぶと改められます。肢の内容が妥当であることは変わりません。
【民法 第371条】
第三百七十一条 抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
3.誤答
優先して弁済が受けられる先順位抵当権者といえども、後順位抵当権者や一般の債権者の配当に対する予測可能性に配慮する必要があるため、被担保債権の範囲は、利息付債権であっても利息には及ばず、元本に限定される。
要点利息は、満期となった最後の2年分についてのみ抵当権を行使できる。
妥当でない。抵当権者は、利息その他の定期金について、満期となった最後の2年分についてのみ、抵当権を行使できます(民法375条1項)。利息に全く及ばず元本に限られるわけではありません。
利息が際限なく優先されると、後順位抵当権者や一般債権者が、自分の配当がどれだけになるか予測できなくなります。そこで、優先される範囲を2年分に限り、後から利害関係を持つ人の予測を可能にしているのです。
【民法 第375条第1項】
(抵当権の被担保債権の範囲)
第三百七十五条 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
4.誤答
被担保債権の消滅時効が完成していなかったとしても、抵当権を行使することができる時から20年経過した場合には、抵当権設定者は、抵当権の消滅時効を援用することができる。その場合には、当該債権は無担保の債権として存続する。
要点抵当権は、債務者・設定者に対しては、被担保債権と同時でなければ時効消滅しない。
妥当でない。抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しません(民法396条)。被担保債権が時効消滅していないのに、設定者が抵当権だけの消滅時効を援用することはできません。
債務者や設定者は、自ら債務を負い、又は担保を差し出した当事者です。債権が残っているのに担保だけを時効で免れることを認めるのは、公平でないからです。
【民法 第396条】
(抵当権の消滅時効)
第三百九十六条 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
5.誤答
抵当不動産を第三者が不法に占有した場合、抵当権者は、抵当権実行前であっても、その占有者の占有を排除し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めた上で、当該抵当不動産を使用収益することができる。
要点抵当権者は直接自己への明渡しを求められる場合があるが、使用収益はできない。
妥当でない。判例は、所有者が抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への明渡しを求めることができるとしました(最判平17.3.10)。しかし、明渡しを受けた抵当権者が、その不動産を使用収益できるわけではありません。
判例は、抵当権者は抵当不動産を自ら使用できず、使用による利益を取得できないとしています。明渡しを受けるのは、交換価値を守るために不動産を管理する目的であって、抵当権の内容が変わるわけではないのです。
【最判平17.3.10 裁判要旨】
2 抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,当該占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。
3 抵当権者は,抵当不動産に対する第三者の占有により賃料額相当の損害を被るものではない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.24
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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