2026年 国家総合職 問題23
民法用益物権
【No. 23】地役権に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
地役権は、自分の土地(要役地)の便益のために、他人の土地(承役地)を利用する物権です(民法280条)。要役地の役に立つための権利なので、要役地から離れて独立に存在することはなく、要役地の所有権に従って移転します(付従性)。
また、要役地や承役地が共有されたり分けられたりしても、土地全体の便益のための権利として扱われます(不可分性)。地役権の決まりの多くは、この「土地の便益のための権利」という性質から説明できます。
【民法 第280条】
(地役権の内容)
第二百八十条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。(略)
1.誤答
地役権は、自己の土地の便益のために他人の土地を利用する物権であり、便益を受ける土地を要役地、便益を与える土地を承役地という。地役権の例として、承役地を通行する場合や、承役地に水路を引く場合などがあるが、眺望や日照を確保するために承役地での建築を禁止するような不作為を内容とするものは、地役権の対象とはならない。
要点眺望や日照の確保のための不作為を内容とする地役権も設定できる。
妥当でない。地役権は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利で(民法280条)、その内容は通行や引水に限られません。眺望や日照を確保するため承役地での建築を禁止するような、不作為を内容とする地役権も設定できると解されています。
地役権の目的は「自己の土地の便益」であれば足り、承役地の所有者が何かをさせる形でも、何かをしない形でも、要役地の役に立つことに変わりがないからです。
2.誤答
地役権は、要役地と承役地という二つの土地の利用関係を調節するための権利である一方、独立した物権でもあることから、要役地から分離して譲渡し、又は他の権利の目的とすることができる。ただし、地役権を要役地から分離して譲渡し、又は他の権利の目的としたことを第三者に対抗するためには、その旨の登記が必要となる。
要点地役権は、要役地から分離して譲り渡したり他の権利の目的としたりできない。
妥当でない。地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることはできません(民法281条)。登記をすれば対抗できるという問題ではありません。
地役権は、要役地の便益のための権利です。要役地から切り離すと、便益を受ける土地がなくなり、権利の目的そのものが失われるからです。
【民法 第281条】
(地役権の付従性)
第二百八十一条 地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
3.正答
要役地や承役地が共有されている場合、要役地の共有者が単独でその要役地のために存する地役権を自己の持分につき消滅させたり、承役地の共有者が単独でその承役地について存する地役権を自己の持分につき消滅させたりすることはできない。一方、要役地や承役地が分割又は一部譲渡された場合は、原則として、要役地の各部のために又は承役地の各部について、それぞれ地役権が存続する。
要点共有者の一人は持分について地役権を消滅させられず、分割後も各部に存続する。
妥当である。土地の共有者の一人は、その持分について、その土地のための地役権も、その土地について存する地役権も、消滅させることはできません(民法282条1項)。土地の分割や一部譲渡の場合には、地役権は、原則としてその各部のために又は各部について存続します(同条2項)。
地役権は、土地全体の便益のために土地全体に設定される権利です。共有者の一人の持分や土地の一部だけを取り出して扱うと、土地全体のための利用関係がばらばらになってしまうからです(不可分性)。
【民法 第282条】
(地役権の不可分性)
第二百八十二条 土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない。
2 土地の分割又はその一部の譲渡の場合には、地役権は、その各部のために又はその各部について存する。ただし、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは、この限りでない。
4.誤答
地役権を時効取得するには、その地役権が継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものでなければならない。この継続性を判断するに当たり、承役地の通行を目的とする地役権については、承役地となる他人所有の土地の上に通路が開設されていれば、その通路が承役地の所有者が単独で開設したものであっても、継続性が認められる。
要点通行地役権の時効取得には、要役地の所有者による通路の開設が必要である。
妥当でない。判例は、通行地役権を時効取得するための「継続」の要件を満たすには、承役地となる土地の上に通路が開設されただけでは足りず、その開設が要役地の所有者によってされたことを要するとしました(最判昭33.2.14)。承役地の所有者が自分で開設した通路を通っていても、継続性は認められません。
承役地の所有者が開いた通路を通るだけでは、所有者の好意で通らせてもらっているのと区別がつかず、他人の土地に権利を行使しているとはいえないからです。
【最判昭33.2.14 裁判要旨】
民法第二八三条にいう「継続」の要件をみたすには、承役地たるべき土地の上に通路の開設があつただけでは足りず、その開設が要役地所有者によつてなされたことを要する。
【民法 第283条】
(地役権の時効取得)
第二百八十三条 地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
5.誤答
承役地の通行を目的とする地役権は、通行の目的の限度において、承役地全体を自由に使用できるものと解するのが相当であるから、承役地に他人の車両が恒常的に駐車され、通行が妨害されている場合、地役権者は、地役権に基づく妨害排除ないし妨害予防請求権により、通行妨害行為の禁止はもとより、承役地の目的外使用一般の禁止を求めることができる。
要点通行地役権に基づき、承役地の目的外使用一般の禁止までは求められない。
妥当でない。判例は、通行地役権者は、承役地に車両を恒常的に駐車させて通行を妨げる者に対し、地役権に基づく妨害排除・妨害予防請求として、その行為の禁止を求めることができるとしました。しかし、承役地の目的外使用一般の禁止までは求めることはできないとしました(最判平17.3.29)。
通行地役権は、承役地を通行の目的の範囲内で使う権利にすぎません。権利の内容を超えて、承役地の所有者などの使い方全般を制限することはできないのです。
【最判平17.3.29 判決理由】
そして,通行地役権は,承役地を通行の目的の範囲内において使用することのできる権利にすぎないから,通行地役権に基づき,通行妨害行為の禁止を超えて,承役地の目的外使用一般の禁止を求めることはできない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.23
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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