2026年 国家総合職 問題22
民法物権変動
【No. 22】不動産物権変動に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
A所有の甲土地にBのための通行地役権が設定されたがその旨の登記がなかったところ、その後に甲土地がAからCに売却されて所有権移転登記がされた場合、売却時に甲土地がBによって継続的に通路として使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、Cがそのことを認識していたとしても、B名義の通行地役権の登記がない以上、Bは、Cに対して、自己の通行地役権を対抗することはできない。
要点通路使用が客観的に明らかで譲受人が認識していれば、登記なく地役権を対抗できる。
妥当でない。判例は、承役地の譲渡の時に、その土地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることが物理的状況から客観的に明らかで、かつ、譲受人がそのことを認識していたか認識できたときは、譲受人は、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとしました(最判平10.2.13)。Bは、登記がなくても地役権をCに対抗できます。
通路として使われていることが外から見て明らかなら、譲受人は通行権の存在を容易に推認し、調べることができます。それなのに登記がないことを理由に地役権を否定するのは、信義に反するからです。
【最判平10.2.13 裁判要旨】
通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。
イ.正答
Aは、5年前に他者から買い受け自らの意思に基づいて所有権移転登記を具備した甲建物を、今般、Bに売却したが、Bへの移転登記はされず、A名義のままとなっていた。また、甲建物は、C所有の乙土地の上に建てられていたが、実は、乙土地上には甲建物のための正当な利用権原がなかった。CがAに対して甲建物の収去及び乙土地の明渡しを求めた場合、Aは、甲建物の所有権が既にBに移転していることを主張して、Cからの請求を拒むことはできない。
要点自らの意思で登記した建物所有者は、登記名義を保有する限り収去義務を免れない。
妥当である。判例は、他人の土地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその登記を経由した者は、建物を他に譲渡しても、引き続き登記名義を保有する限り、土地所有者に対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないとしました(最判平6.2.8)。
判例は、土地所有者に建物の「実質的所有者」を探させるのは困難を強いることになる一方、本当に譲渡したなら登記を移すのはさほど困難でないので、登記を自分の名義にしておきながら所有権の喪失を主張するのは、信義に反し公平でないと考えました。
【最判平6.2.8 判決理由】
もし、これを、登記に関わりなく建物の「実質的所有者」をもって建物収去・土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば、土地所有者は、その探求の困難を強いられることになり、また、相手方において、たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方、建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば、その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず、不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから、登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し、その建物の収去義務を否定することは、信義にもとり、公平の見地に照らして許されないものといわなければならない。
【最判平6.2.8 裁判要旨】
甲所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した乙は、たとい右建物を丙に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、甲に対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。
ウ.誤答
Aは、自己所有の甲建物を3年前からBに賃貸していたが、今般、甲建物をCに売却した。この場合、Cは、Bに対して所有権に基づいて甲建物からの立ち退きを求めるためには、Bが賃借権(借家権)の対抗要件を具備する前に、Aから甲建物の所有権移転登記を受ける必要がある一方、Bに対して賃貸人の地位に基づいて賃料請求をするためには、所有権移転登記は不要である。
要点賃貸人たる地位の移転を賃借人に対抗するには、所有権移転登記が必要である。
妥当でない。Bは賃借した建物の引渡しを受けていて、賃借権を第三者に対抗でき(借地借家法31条)、建物を譲り受けたCに賃貸人たる地位が移転します(民法605条の2第1項)。この場合でも、Cが賃貸人として賃料を請求するには、所有権の移転の登記が必要です(同条3項)。賃料請求に登記は不要とする部分が誤りです。
賃借人は、だれに賃料を払えばよいかを確実に知る必要があります。登記を基準にすれば、賃借人が二重に払わされる危険を避けられるので、判例も、賃貸人の地位の移転を賃借人に対抗するには登記が要るとしていました(最判昭49.3.19)。
【最判昭49.3.19 裁判要旨】
賃貸中の宅地を譲り受けた者は、その所有権の移転につき登記を経由しないかぎり、賃貸人たる地位の取得を賃借人に対抗することができない。
【民法 第605条の2第1項・第3項】
(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第六百五条の二 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
3 第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
【借地借家法 第31条】
(建物賃貸借の対抗力)
第三十一条 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
エ.正答
A所有の甲土地がBに売却され、さらに、BからCに転売された。その後、Bにだまされて甲土地を安価で売却させられたことを知ったAが、AB間の売買契約を取り消したが、Cは、Bから甲土地を買い受ける際に、当該詐欺の事実について、善意無過失であった。この場合、たとえCがBから所有権移転登記を受けていなくても、Cは、Aからの甲土地の返還請求を拒絶することができる。
要点詐欺取消し前の善意無過失の第三者は、登記がなくても96条3項で保護される。
妥当である。詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗できません(民法96条3項)。判例は、この第三者は、必ずしも対抗要件を備えた者に限られないとしました(最判昭49.9.26)。Cは、登記を受けていなくても、Aからの返還請求を拒むことができます。
96条3項は、取消しの遡及効を制限して、取消し前に利害関係を持った第三者を守る規定です。取り消したAとCは、同じ物を二重に譲り受けた者どうしのような対抗関係に立つわけではないので、登記の先後で決める必要がないのです。
【最判昭49.9.26 裁判要旨】
甲を欺罔してその農地を買い受けた乙が、農地法五条の許可を条件とする所有権移転仮登記を得たうえ、右売買契約上の権利を善意の丙に譲渡して右仮登記移転の附記登記をした場合には、丙は民法九六条三項にいう第三者にあたる。
【民法 第96条第3項】
(詐欺又は強迫)
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.22
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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