2026年 国家総合職 問題21
民法意思表示
【No. 21】錯誤に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
錯誤による意思表示の取消し(民法95条)は、勘違いをした表意者を守る制度ですが、相手方や第三者の取引の安全とのバランスをとるために、次のように要件が組み立てられています。
錯誤が、法律行為の目的と取引上の社会通念に照らして重要なものであること(1項)。
動機の錯誤(基礎事情の錯誤)は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたこと(2項)。
表意者に重大な過失があれば原則として取り消せないが、相手方が錯誤を知り又は重大な過失で知らなかったとき、相手方も同じ錯誤に陥っていたときは、取り消せること(3項)。
取消しは、善意でかつ過失がない第三者には対抗できないこと(4項)。
【民法 第95条】
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
1.誤答
錯誤による意思表示に基づく法律行為が取り消される前に、その法律行為を前提として利害関係を有するに至った第三者が出現した場合、その第三者に重過失ではない過失があったとしても、表意者は取消しを第三者に対抗することができない。
要点錯誤による取消しは、善意でかつ過失がない第三者にだけ対抗できない。
妥当でない。錯誤による取消しを対抗できないのは、善意でかつ過失がない第三者です(民法95条4項)。第三者に重過失ではない過失があれば、表意者は取消しを対抗できます。
錯誤は、だまされた詐欺の場合と違い、表意者自身の勘違いによるものですが、第三者が保護されるには、錯誤について知らず、知らないことに過失もないことが必要とされています。表意者を守る必要と、第三者の取引の安全との調整です。
2.誤答
錯誤による意思表示に基づく法律行為が取り消し得るといえるためには、その錯誤が重要なものでなければならないが、その重要性の有無の判断に当たっては、取引上の社会通念よりも、表意者の主観的事情が基準として重視される。
要点錯誤の重要性は、法律行為の目的と取引上の社会通念に照らして判断する。
妥当でない。錯誤が重要なものかどうかは、表意者の主観的な事情ではなく、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして判断します(民法95条1項)。
取消しによって相手方は契約の利益を失います。表意者が個人的に重視していたというだけで取消しを認めると、相手方の取引の安全が害されるので、客観的な基準で判断することにしているのです。
3.誤答
相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていた場合であっても、表意者に重過失があれば、表意者はその意思表示を取り消すことはできない。
要点相手方が同一の錯誤に陥っていたときは、重過失の表意者も取り消せる。
妥当でない。表意者に重大な過失があっても、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは、表意者は意思表示を取り消すことができます(民法95条3項2号)。
重過失の表意者の取消しを制限するのは、相手方の信頼を守るためです。相手方も同じ勘違いをしていたなら、守るべき正当な信頼がないからです。
4.誤答
表意者に錯誤があることを知らなかったことについて相手方に重過失がある場合であっても、表意者に重過失があれば、表意者はその意思表示を取り消すことはできない。
要点相手方に重過失があれば、重過失の表意者も取り消せる。
妥当でない。表意者に重大な過失があっても、相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、表意者は意思表示を取り消すことができます(民法95条3項1号)。
相手方が錯誤を知っていたか、少し注意すれば分かったのに見過ごしていたなら、その相手方の信頼は保護に値しません。表意者の重過失だけを理由に取消しを封じる理由がないのです。
5.正答
表意者が法律行為の基礎とした事情について、その事情に係る認識が真実に反するという錯誤がある場合には、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていなければ、表意者はその意思表示を取り消すことはできない。
要点基礎事情の錯誤は、基礎とされていることが表示されていたときに限り取り消せる。
妥当である。表意者が法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤(基礎事情の錯誤)による取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができます(民法95条2項)。
契約の動機になった事情は、表意者の内心にとどまる限り、相手方には分かりません。その事情が表示されて契約の前提になっていたときに初めて、取消しを認めても相手方に不意打ちにならないのです。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.21
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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