2026年 国家総合職 問題20
民法通則・人・法人
【No. 20】失踪宣告に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
失踪宣告は、生死不明の状態が長く続いた人について、その人をめぐる法律関係(財産の相続や婚姻など)を整理するため、死亡したものとみなす制度です。死亡とみなされる時期は、宣告の時ではなく、普通失踪では7年の期間が満了した時、特別失踪(危難失踪)では危難が去った時です(民法30条、31条)。
あくまで従来の住所を中心とした法律関係を清算するための制度なので、本人の権利能力そのものを奪うものではありません。また、宣告が取り消されたときは、宣告を信頼した人の立場にも配慮して、元に戻す範囲が調整されています(32条)。
【民法 第30条】
(失踪の宣告)
第三十条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
【民法 第31条】
(失踪の宣告の効力)
第三十一条 前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
1.誤答
不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪宣告をすることができ、失踪宣告を受けた者は、失踪宣告を受けた時に死亡したものとみなされる。
要点普通失踪で死亡とみなされるのは、7年間の期間が満了した時である。
妥当でない。不在者の生死が7年間明らかでないときに、利害関係人の請求で家庭裁判所が失踪宣告をすることができるとする前半は正しい内容です(民法30条1項)。しかし、普通失踪で死亡したものとみなされるのは、宣告を受けた時ではなく、7年間の期間が満了した時です(31条)。
宣告がいつされるかは、請求の時期などの事情で変わります。死亡とみなす時期を、生死不明の状態が7年間続いたという事実に結び付けることで、偶然の事情に左右されないようにしているのです。
2.誤答
戦争、海難、その他危難が去った後1年間生死不明の状態が続いたため失踪宣告を受けた者が死亡したものとみなされる時期は、その危難が去った後1年を経過した時である。
要点特別失踪で死亡とみなされるのは、危難が去った時である。
妥当でない。戦争、船舶の沈没などの危難に遭った人の生死が、危難が去った後1年間明らかでないときは、失踪宣告をすることができます(民法30条2項)。この特別失踪で死亡したものとみなされるのは、1年を経過した時ではなく、危難が去った時です(31条)。
危難に遭った人は、その危難の際に死亡した可能性が高いと考えられるからです。1年という期間は、宣告をするために待つ期間にすぎません。
3.正答
失踪宣告を受け、死亡したものとみなされた者であっても、権利能力を失うわけではないから、その者が実際には生存しており、契約をした場合、失踪宣告を受けていない者と同様に、権利を取得し、又は義務を負う。
要点失踪宣告を受けても権利能力は失われず、生存中にした契約は有効である。
妥当である。失踪宣告を受けて死亡したものとみなされても、本人の権利能力が失われるわけではありません。本人が実際には生きていて、別の場所で契約をした場合、宣告を受けていない者と同じように、権利を取得し義務を負います。
通説では、失踪宣告は、本人の従来の住所を中心とする法律関係について死亡と同じ効果を生じさせるだけで、本人がほかの場所で新たに築く法律関係まで否定するものではないと解されています。
4.誤答
失踪者が失踪宣告により死亡したものとみなされる時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、検察官の請求により、失踪宣告を取り消さなければならない。
要点失踪宣告の取消しは、本人又は利害関係人の請求による。
妥当でない。失踪者が生存すること、又は死亡とみなされた時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、検察官ではなく、本人又は利害関係人の請求により、失踪宣告を取り消さなければなりません(民法32条1項)。
失踪宣告の取消しは、本人や、財産の帰属などに利害を持つ人の法律関係を正しい状態に戻すためのものです。そのため、請求できるのは、宣告の請求と同じく、法律関係に直接かかわる人とされているのです。
【民法 第32条第1項】
(失踪の宣告の取消し)
第三十二条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
5.誤答
失踪宣告によって財産を得た者は、その取消しによって財産を返還する義務を負うから、取消しの理由となった事実について善意であるか悪意であるかにかかわらず、既に消費した分を含めて、全てを返還しなければならない。
要点宣告で財産を得た者は、現に利益を受けている限度で返還すれば足りる。
妥当でない。失踪宣告によって財産を得た者は、取消しによって権利を失いますが、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負います(民法32条2項)。既に消費して利益が残っていない部分まで全てを返す必要はありません。なお、通説では、悪意の者は受けた利益の全部を返還すべきだと解されています。
宣告を信じて財産を受け取り、使ってしまった人に全額の返還を求めるのは酷だからです。一方、宣告が事実と違うと知っていた人には、この保護を与える理由がありません。
【民法 第32条第2項】
(失踪の宣告の取消し)
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.20
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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