2026年 国家総合職 問題19
行政法公物
【No. 19】公物に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.誤答
公物は、直接公の目的のために供用される個々の有体物をいい、道路、河川や公園などの公衆の用に供される公共用物と、庁舎などの官公署の用に供される公用物に分けられる。供用の主体は国や地方公共団体に限られず、私人や私企業がその所有する空地を公園として一般に開放していた場合、その空地は公共用物となる。
要点公物は、国や公共団体が直接公の目的に供用する有体物で、私人の供用は含まない。
妥当でない。公物は、国や地方公共団体などの行政主体によって直接公の目的に供用される個々の有体物をいいます。私人や私企業が自分の空地を公園として一般に開放していても、その空地は公物(公共用物)にはなりません。前半の、公共用物と公用物の区別は正しい内容です。
通説では、公物は、行政主体が公の目的のために使わせるものなので、その目的を守るために私法の適用が制限されるなど、特別の扱いを受けると解されています。私人が任意に開放しているだけの物には、そうした扱いをする根拠がありません。
2.誤答
海は、原則として所有権の客体となる土地に当たるものの、古来より自然の状態のままで公衆の共同使用に供されてきた公共用物であり、特定人による排他的支配の許されないものであるから、その所有権は包括的に国が有しており、特に必要があるものとして国が認める場合のみ、必要な範囲を区切り、その限りにおいて国から私人へとその所有権を譲渡することができる。
要点海は、原則として民法86条1項の土地に当たらない。
妥当でない。判例は、海は、民法施行当時に特定の者が排他的総括支配権を取得していたときを除いては、所有権の客体となる土地(民法86条1項)に当たらないとしました(最判昭61.12.16)。肢の「原則として所有権の客体となる土地に当たる」が誤りです。
判例は、海は古来から自然の状態のまま一般公衆の共同使用に供されてきた公共用物で、国の直接の公法的支配管理に服し、特定人による排他的支配は許されないと考えました。ただし、国が一定の範囲を区画して他の海面から区別し、公用を廃止して私人の所有に帰属させることは、不可能ではないとしています。
【最判昭61.12.16 裁判要旨】
海は、民法施行当時特定の者が排他的総括支配権を取得していたときを除いては、同法八六条一項にいう土地に当たらない。
【民法 第86条第1項】
(不動産及び動産)
第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする。
3.誤答
地方公共団体の開設している村道を村民各自が通行する権利は、公法関係に由来する公物の自由使用に係る権利であり、民法上の保護を与えるべき権利ということはできないので、一村民が他の村民によりこの権利を妨害されたとしても、それは村道を管理する地方公共団体に対して解決を求めるべきものであり、当該村民が直接、民法上の不法行為に基づく妨害排除請求を行うことはできない。
要点村道の使用の自由権を妨害された村民は、妨害の排除を請求できる。
妥当でない。判例は、村民各自は、村道について、他の村民の利益や自由を侵害しない程度で、自己の生活上必須の行動を自由に行える使用の自由権を持ち、これに対する継続的な妨害には、妨害の排除を請求できるとしました(最判昭39.1.16)。
判例は、この使用の自由権は、公法関係に由来するものであっても、各村民が日常生活に欠かせないものとして個人的に享受する利益なので、民法上も保護に値すると考えました。地方公共団体に解決を求めるしかないとすると、村民の生活が守られないからです。
【最判昭39.1.16 判決理由】
勿論、この通行の自由権は公法関係から由来するものであるけれども、各自が日常生活上諸般の権利を行使するについて欠くことのできない要具であるから、これに対しては民法の保護を与うべきは当然の筋合である。故に一村民がこの権利を妨害されたときは民法上不法行為の問題の生ずるのは当然であり、この妨害が継続するときは、これが排除を求める権利を有することは、また言を俟たないところである。
4.誤答
ある道路が地方公共団体により一般交通の用に供するために管理されており、その管理の内容、態様によれば、社会通念上、当該道路が当該地方公共団体の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあると認められる場合であっても、当該地方公共団体が当該道路について道路法上の道路管理権を有していないのであれば、当該道路を所持するものとまではいえないから、当該地方公共団体は当該道路を構成する敷地について占有権を有しない。
要点事実的支配があれば、道路管理権がなくても地方公共団体は敷地の占有権を有する。
妥当でない。判例は、地方公共団体が道路を一般交通の用に供するために管理し、社会通念上その事実的支配に属するというべき客観的関係にあるときは、道路法上の道路管理権を有するか否かにかかわらず、道路の敷地について占有権を有するとしました(最判平18.2.21)。
民法の占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得される権利で(民法180条)、その支配が法的な権限に基づくかどうかは問いません。そのため、道路管理権の有無ではなく、事実上の支配があるかで判断するのです。
【最判平18.2.21 裁判要旨】
地方公共団体が,道路を一般交通の用に供するために管理しており,その管理の内容,態様によれば,社会通念上,当該道路が当該地方公共団体の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあると認められる場合には,当該地方公共団体は,道路法上の道路管理権を有するか否かにかかわらず,当該道路を構成する敷地について占有権を有する。
【民法 第180条】
(占有権の取得)
第百八十条 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
5.正答
ある公共用財産が、長年の間、事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物について他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、それにより実際に公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、当該公共用財産の公用は黙示的に廃止されたものとして、これについて取得時効の成立は妨げられない。
要点黙示的に公用が廃止された公共用財産には、取得時効が成立し得る。
妥当である。判例は、公共用財産が長年の間事実上公の目的に供用されずに放置され、形態・機能を全く失い、他人の平穏かつ公然の占有が続いても公の目的が害されず、もはや公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立は妨げられないとしました(最判昭51.12.24)。
公共用財産が時効取得の対象にならないのは、公の目的に使われているからです。その目的が実際には失われ、維持する理由もなくなったのなら、時効取得を否定する理由もなくなるのです。
【最判昭51.12.24 裁判要旨】
公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されることもなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなつた場合には、右公共用財産について、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立を妨げない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.19
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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