2026年 国家総合職 問題16
行政法国家賠償法2条
【No. 16】国家賠償法第2条に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
国家賠償法2条1項の「設置又は管理の瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、国や公共団体の責任に過失は要りません(最判昭45.8.20)。
通常有すべき安全性とは、どんな事故も防げる絶対的な安全性ではなく、その営造物の性質や利用のされ方に応じて求められる安全性です。そのため、瑕疵があるかは、営造物の種類(道路か河川かなど)や、利用者・周辺住民との関係を考えて判断されます。
【最判昭45.8.20 判決理由】
国家賠償法二条一項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。
【国家賠償法 第2条第1項】
第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
ア.正答
幅員7.5mの道路中央線付近に故障した大型貨物自動車が87時間にわたって放置され、これに原動機付自転車が激突した人身事故において、道路の安全性を著しく欠如する状態であったにもかかわらず、道路管理者が、事故発生まで当該自動車が放置されていることを知らず、道路の安全性を保持するために必要とされる措置を全く講じていなかった場合には、当該道路管理者の道路管理には瑕疵があったというほかない。
要点故障車の87時間放置を知らず何の措置も講じなかった道路管理には、瑕疵がある。
妥当である。判例は、国道の中央線近くに故障した大型貨物自動車が約87時間駐車したままだったのに、道路管理者がこれを知らず、道路の安全保持のために必要な措置を全く講じなかった事案で、道路の管理に瑕疵があるとしました(最判昭50.7.25)。
道路は、通行する人や車のために常に安全な状態に保たれるべきものです。危険な状態が長時間続いていたのに、巡回などで発見して措置をとる体制がなかったことが、通常有すべき安全性を欠く管理とされたのです。
【最判昭50.7.25 裁判要旨】
幅員七・五メートルの国道の中央線近くに故障した大型貨物自動車が約八七時間駐車したままになつていたにもかかわらず、道路管理者がこれを知らず、道路の安全保持のために必要な措置を全く講じなかつた判示の事実関係のもとにおいては、道路の管理に瑕疵があるというべきである。
イ.誤答
工事実施基本計画に準拠して新規の改修、整備の必要がないものとされた河川であっても、洪水に対する絶対的安全性が保障されているものではないから、当該河川が備えるべき安全性とは、一般に施行されてきた治水事業による河川の改修、整備の過程に対応するいわば過渡的安全性と解すべきである。
要点改修不要とされた河川は、計画の規模の洪水に対する安全性を備えるべきである。
妥当でない。工事実施基本計画に準拠して新規の改修・整備の必要がないとされた河川について、判例は、計画に定める規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性を備えているかで、瑕疵の有無を判断するとしました(最判平2.12.13)。「過渡的安全性」は、未改修や改修中の河川について判例が用いた考え方です。
改修が済んだ河川は、計画で想定した規模の洪水には耐えることが前提になっています。まだ改修の途中で、財政や技術の制約を受けている河川とは、求められる安全性の水準が違うのです。
【最判平2.12.13 裁判要旨】
一 工事実施基本計画に準拠して新規の改修、整備の必要がないものとされた河川における河川管理の瑕疵の有無は、同計画に定める規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性を備えているかどうかによって判断すべきである。
ウ.誤答
国家賠償法第2条第1項の適用上、営造物が有すべき安全性が欠如している状態とは、営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によって危害を生じる危険性がある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生じる危険性がある場合をも含むが、その危害は、営造物の利用者に対するものに限られ、利用者以外の第三者に対するそれまでは含まない。
要点供用関連瑕疵の危害は、利用者に限られず、第三者に対するものも含む。
妥当でない。判例は、営造物の利用の態様や程度が一定の限度を超えることで、利用者又は第三者に対して危害を生じる危険性がある場合も、設置又は管理の瑕疵があるとしました(最大判昭56.12.16)。空港の騒音で周辺住民が受ける被害のように、利用者以外の第三者に対する危害も含まれます。
国家賠償法2条は、営造物から生じた被害を公平に負担させる制度です。被害を受けたのが利用者か周辺の住民かで、救済の必要性は変わらないからです。
【最大判昭56.12.16 裁判要旨】
二 営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によつて利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物につき国家賠償法二条一項にいう設置又は管理の瑕疵があるものというべきである。
エ.誤答
国家賠償法第2条第1項における公の営造物には、不動産だけでなく動産も含まれ、公の用に供されていない物であっても、国又は公共団体が管理している場合は、公の営造物に該当する。
要点公の営造物は、公の目的に供用される有体物で、動産も含む。
妥当でない。公の営造物には、不動産だけでなく動産も含まれると解されています。しかし、公の営造物は、国や公共団体によって直接公の目的に供用されている有体物をいうので、公の用に供されていない物は、国や公共団体が管理していても公の営造物には当たりません。
通説では、2条の責任は、公の目的のために設けられ利用に供されている物の危険について、それを管理する国や公共団体に負わせるものと解されています。公の用に供されていない物は、その前提を欠くのです。
オ.正答
国家賠償法第2条第1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠く状態をいい、かかる瑕疵の存否については、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきである。
要点瑕疵の有無は、構造、用法、場所的環境、利用状況等を総合考慮して個別に判断する。
妥当である。判例は、営造物の設置又は管理に瑕疵があるかは、その営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して、具体的個別的に判断すべきだとしました(最判昭53.7.4)。
求められる安全性は営造物ごとに違うので、一律の基準ではなく、事案に即して判断することになります。判例は、この考え方から、営造物の通常の用法に即しない行動で、設置管理者が通常予測できないものによる事故は、瑕疵によるものとはいえないとしました。
【最判昭53.7.4 判決理由】
ところで、国家賠償法二条一項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があつたとみられるかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものであるところ、…
【最判昭53.7.4 裁判要旨】
営造物の通常の用法に即しない行動の結果事故が生じた場合において、その営造物として本来具有すべき安全性に欠けるところがなく、右行動が設置管理者において通常予測することのできないものであるときは、右事故が営造物の設置又は管理の瑕疵によるものであるということはできない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.16
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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