2026年 国家総合職 問題15
行政法取消訴訟の審理・判決
【No. 15】取消訴訟の判決の効力に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
処分を取り消す判決の効力は、次のように整理されます。
形成力:処分の効力をさかのぼって失わせる効力。
第三者効:形成力が、訴訟の当事者以外の第三者にも及ぶこと(行政事件訴訟法32条1項)。
既判力:判決の判断した事項について、当事者や裁判所が、後の訴訟でこれと矛盾する主張や判断をできなくなる効力。
拘束力:処分をした行政庁などを、判決の趣旨に従って行動させる効力(33条1項)。取消判決の実効性を確保するために、法律が特に認めたものです。
【行政事件訴訟法 第32条第1項】
(取消判決等の効力)
第三十二条 処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する。
【行政事件訴訟法 第33条第1項】
第三十三条 処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
ア.誤答
取消訴訟において処分を取り消す判決が確定すると、当該処分の効力は遡及的に消滅する。これを取消判決の既判力という。
要点処分の効力がさかのぼって消滅するのは、取消判決の形成力である。
妥当でない。取消判決の確定によって処分の効力が遡及的に消滅するのは、取消判決の形成力によるものです。既判力ではありません。
既判力は、判決で判断された事項について後の訴訟での蒸し返しを封じる効力で、処分の効力そのものを変える働きはありません。処分の効力を消すのは、法律関係を直接変える形成力の働きです。
イ.正答
取消訴訟において処分を取り消す判決が確定すると、当該処分に係る国家賠償請求訴訟においては、被告は当該処分が適法であったことを主張することができないと一般に解されている。
要点取消判決の既判力により、国家賠償訴訟で処分の適法を主張できないと解されている。
妥当である。通説では、取消判決が確定すると、処分が違法であることについて既判力が生じ、その処分に係る国家賠償請求訴訟で、被告は処分が適法であったと主張できないと解されています。
取消訴訟で処分の違法が確定したのに、同じ処分について国家賠償訴訟で適法の主張を許すと、紛争の蒸し返しを認めることになり、判決で争いを終わらせるという既判力の役割が損なわれるからです。
ウ.正答
取消訴訟において処分を取り消す判決が確定すると、当該処分をした行政庁等は、当該判決における主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断に従って行動すべき義務を負うこととなるが、その義務の内容は、当該行政庁等がそれを行う法令上の権限があるものに限られる。
要点拘束力により、行政庁は判決の判断に従う義務を負うが、権限の範囲に限られる。
妥当である。取消判決は、処分をした行政庁その他の関係行政庁を拘束します(行政事件訴訟法33条1項)。通説では、行政庁は、判決の主文が導き出されるのに必要な事実認定と法律判断に従って行動すべき義務を負いますが、その内容は、行政庁が法令上の権限を持つものに限られると解されています。
拘束力は、取消判決の実効性を確保するためのもので、行政庁に法令にない権限を与えるものではないからです。
エ.正答
取消訴訟において処分を取り消す判決が確定したとしても、行政庁は、同一事情の下でも、同一理由に基づかなければ同一内容の処分を行うことができると一般に解されている。
要点取消判決の後も、別の理由に基づけば同一内容の処分を行うことができる。
妥当である。拘束力により、行政庁は、同一事情の下で、同一理由に基づく同一内容の処分をすることはできません。しかし、判決で違法とされた理由とは別の理由に基づくのであれば、同一内容の処分をすることはできると一般に解されています。
拘束力が及ぶのは、判決が違法と判断した理由の範囲です。判決が判断していない別の理由まで禁じると、行政庁が適法にできる処分まで封じることになるからです。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.15
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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