2026年 国家総合職 問題13
行政法行政事件訴訟の類型
【No. 13】義務付けの訴えに関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
義務付けの訴えには、申請を前提としない非申請型(行政事件訴訟法3条6項1号)と、法令に基づく申請や審査請求を前提とする申請型(同項2号)があります。
義務付け判決は、裁判所が行政庁に処分を命じるものなので、行政庁が自ら判断する役割を尊重して、使える場面や本案の要件が絞られています。非申請型は、だれでも行政庁に処分を求める権利があるわけではないので、重大な損害などの訴訟要件が重く、申請型は、申請権を持つ者の救済なので、申請したことと、却下などへの取消訴訟などを併せて起こすことが求められます。
【行政事件訴訟法 第3条第6項】
(抗告訴訟)
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
ア.正答
行政事件訴訟法第3条第6項第1号の義務付けの訴え(非申請型義務付け訴訟)において、裁判所は、その訴えに係る処分につき、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、行政庁がその処分をすべき旨を命じる判決をする。
要点処分すべきことが明らかか、しないことが裁量の逸脱濫用なら、処分を命じる。
妥当である。非申請型の義務付けの訴えが訴訟要件を満たす場合に、行政庁がその処分をすべきことが根拠法令の規定から明らかであるか、処分をしないことが裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、処分をすべき旨を命じる判決をします(行政事件訴訟法37条の2第5項)。
処分をするかどうかは、まず行政庁が判断すべき事柄です。裁判所が処分を命じられるのは、法令上処分をすべきことが明らかか、処分をしないことが違法な場合に限ることで、行政庁の判断の役割を尊重しているのです。
【行政事件訴訟法 第37条の2第5項】
(義務付けの訴えの要件等)
5 義務付けの訴えが第一項及び第三項に規定する要件に該当する場合において、その義務付けの訴えに係る処分につき、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をする。
イ.誤答
法令に基づく申請を却下する旨の処分をされた者が義務付けの訴えを提起するに当たっては、義務付けの訴えのみを提起することも、当該処分に係る取消訴訟又は無効等確認の訴えを併合して提起することもできる。
要点申請型の義務付けの訴えは、取消訴訟又は無効等確認の訴えと併合して提起する。
妥当でない。申請を却下・棄却する処分がされた場合の義務付けの訴えは、その処分の取消訴訟又は無効等確認の訴えを併合して提起しなければなりません(行政事件訴訟法37条の3第3項2号)。義務付けの訴えだけを提起することはできません。
却下処分が有効に残ったままでは、同じ申請について処分を命じる判決と矛盾します。却下処分の違法と、処分をすべきかどうかを一つの手続でまとめて判断させるために、併合を求めているのです。
【行政事件訴訟法 第37条の3第3項】
3 第一項の義務付けの訴えを提起するときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない。この場合において、当該各号に定める訴えに係る訴訟の管轄について他の法律に特別の定めがあるときは、当該義務付けの訴えに係る訴訟の管轄は、第三十八条第一項において準用する第十二条の規定にかかわらず、その定めに従う。
一 第一項第一号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る不作為の違法確認の訴え
二 第一項第二号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴え
ウ.誤答
行政事件訴訟法第3条第6項第2号の義務付けの訴え(申請型義務付け訴訟)を提起できるのは、法令に基づく申請をした者に限られ、行政不服審査法に基づく審査請求をした者はこれに含まれない。
要点申請型の義務付けの訴えは、申請又は審査請求をした者が提起できる。
妥当でない。申請型の義務付けの訴えは、法令に基づく申請又は審査請求をした者に限り提起できます(行政事件訴訟法37条の3第2項)。審査請求をした者も含まれます。
申請型は、法令上、行政庁に応答を求める権利を持つ者を救済するための訴えです。審査請求をした者も、法令に基づいて裁決という応答を求める立場にあるので、申請をした者と同じく原告になれます。
【行政事件訴訟法 第37条の3第2項】
2 前項の義務付けの訴えは、同項各号に規定する法令に基づく申請又は審査請求をした者に限り、提起することができる。
エ.正答
義務付けの訴えにおいて行政庁が一定の処分をすべき旨を命じる判決が確定すると、その判決は、処分をすべき行政庁その他の関係行政庁を拘束するものの、原則として、第三者に対しては効力をもたない。
要点義務付け判決は関係行政庁を拘束するが、第三者効の規定は準用されていない。
妥当である。取消訴訟以外の抗告訴訟には、取消判決の拘束力の規定(行政事件訴訟法33条)が準用されるので、義務付け判決は、処分をすべき行政庁その他の関係行政庁を拘束します(38条1項)。一方、取消判決の第三者効の規定(32条1項)は、義務付けの訴えには準用されていません。
第三者効は、取消判決が処分の効力を消滅させるので、関係者の間で効力をそろえるために必要になるものです。義務付け判決は行政庁に処分を命じるもので、判決自体が処分の効力を変えるわけではないので、この規定を準用していないのです。
【行政事件訴訟法 第32条第1項】
(取消判決等の効力)
第三十二条 処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する。
【行政事件訴訟法 第33条第1項】
第三十三条 処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
【行政事件訴訟法 第38条第1項】
(取消訴訟に関する規定の準用)
第三十八条 第十一条から第十三条まで、第十六条から第十九条まで、第二十一条から第二十三条まで、第二十四条、第三十三条及び第三十五条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟について準用する。
オ.誤答
義務付けの訴えが提起された場合において、その義務付けの訴えに係る処分がされないことにより生じる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認められるときは、裁判所は、当事者からの申立てにより、仮に行政庁がその処分をすべき旨を、決定により命じることができる。
要点仮の義務付けには、償うことのできない損害を避ける緊急の必要が要る。
妥当でない。仮の義務付けをするには、「重大な損害」ではなく、償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえることが必要です(行政事件訴訟法37条の5第1項)。
仮の義務付けは、判決を待たずに行政庁に処分をさせるもので、処分の効力などを止めるだけの執行停止(25条2項は「重大な損害」)よりも、行政に与える影響が大きいからです。
【行政事件訴訟法 第25条第2項】
(執行停止)
2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
【行政事件訴訟法 第37条の5第1項】
(仮の義務付け及び仮の差止め)
第三十七条の五 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.13
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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