2026年 国家総合職 問題12
行政法行政事件訴訟の類型
【No. 12】選挙訴訟に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
公職選挙法の選挙無効訴訟は、選挙人などが自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する民衆訴訟です(行政事件訴訟法5条)。民衆訴訟は、法律に定める場合に、法律に定める者に限り提起できます(同法42条)。
そのため、何をどこまで争えるかは、まず法律の定めで決まります。そのうえで判例は、選挙権の平等のような憲法上の権利について、救済の途をできるだけ開くという観点から、法律の定めを解釈しています。
【行政事件訴訟法 第5条】
(民衆訴訟)
第五条 この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。
【行政事件訴訟法 第42条】
(訴えの提起)
第四十二条 民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。
ア.誤答
公職選挙法に基づき衆議院議員又は参議院議員の選挙の無効を求める訴訟は、同法の規定に違反して執行された選挙の効果を失わせ、改めて同法に基づく適法な再選挙を行わせることを目的とし、同法の下における適法な選挙の再実施の可能性を予定するものであるから、同法自体を改正しなければ適法に選挙を行うことができないような場合を予期するものではなく、したがって、当該訴訟において議員定数配分規定そのものの違憲を理由として選挙の効力を争うことはできない。
要点選挙無効訴訟で、議員定数配分規定の違憲を理由に選挙の効力を争うことができる。
妥当でない。判例は、選挙無効訴訟で、議員定数配分規定が選挙権の平等に違反することを選挙無効の原因として主張できるとしました(最大判昭51.4.14)。肢は、判例が「疑いがないではない」としたうえで退けた見解です。
判例は、この訴訟が、選挙人が選挙の適否を争える唯一の訴訟で、ほかに公職選挙法の違憲を主張して是正を求める機会がないことを重く見ました。基本的権利を侵害する国の行為には、できるだけ是正・救済の途を開くべきだと考えたのです。
【最大判昭51.4.14 判決理由】
しかし、右の訴訟は、現行法上選挙人が選挙の適否を争うことのできる唯一の訴訟であり、これを措いては他に訴訟上公選法の違憲を主張してその是正を求める機会はないのである。およそ国民の基本的権利を侵害する国権行為に対しては、できるだけその是正、救済の途が開かれるべきであるという憲法上の要請に照らして考えるときは、前記公選法の規定が、その定める訴訟において、同法の議員定数配分規定が選挙権の平等に違反することを選挙無効の原因として主張することを殊更に排除する趣旨であるとすることは、決して当を得た解釈ということはできない。
イ.正答
公職選挙法に基づき衆議院議員又は参議院議員の選挙の無効を求める訴訟は、同法所定の選挙人又は公職の候補者のみがこれを提起し、当該選挙の無効原因として、主として選挙管理の任にある機関が選挙の管理執行の手続に関する明文の規定に違反すること又は直接そのような明文の規定は存在しないが選挙の基本理念である選挙の自由公正の原則が著しく阻害されることを主張して争うものであるから、当該訴訟において、同法が一定の者につき選挙権を制限していることの憲法適合性が争われることは、法律上予定されていない。
要点選挙無効訴訟で、他者の選挙権の制限の違憲を争うことは法律上予定されていない。
妥当である。判例は、選挙無効訴訟は、選挙の管理執行の手続に関する規定の違反などを主張して選挙の効力を争う方法であるとし、この訴訟で選挙人らが、他者の選挙権を制限する規定の違憲を主張して争うことは、法律上予定されていないとしました(最決平26.7.9)。
民衆訴訟は、法律が定める範囲で争うものです。選挙権を制限されている人自身が救済を求める訴訟とは別に、選挙人が他者の選挙権の制限を理由に選挙の効力を争うことまでは、公職選挙法が予定していないと判例は考えました。
【最決平26.7.9 判決理由】
このように,公職選挙法204条の選挙無効訴訟は,同法において選挙権を有するものとされている選挙人らによる候補者に対する投票の結果としての選挙の効力を選挙人又は候補者が上記のような無効原因の存在を主張して争う争訟方法であり,同法の規定において一定の者につき選挙権を制限していることの憲法適合性については,当該者が自己の選挙権の侵害を理由にその救済を求めて提起する訴訟においてこれを争うことの可否はおくとしても,同条の選挙無効訴訟において選挙人らが他者の選挙権の制限に係る当該規定の違憲を主張してこれを争うことは法律上予定されていない。
ウ.正答
公職選挙法に基づき衆議院議員の選挙の無効を求める訴訟の係属中、衆議院が解散された場合、解散によって当該選挙の効力は将来に向かって失われたものと解すべきであるから、当該訴訟の訴えの利益は消滅する。
要点選挙無効訴訟の係属中に衆議院が解散されると、訴えの利益は失われる。
妥当である。判例は、衆議院議員選挙を無効とする判決を求める訴訟は、衆議院の解散によって、訴えの利益を失うとしました(最判平17.9.27)。
選挙無効訴訟は、その選挙の効力を失わせることを目的とします。解散によって、その選挙で選ばれた議員は全員が地位を失い、選挙の効力は将来に向かって失われるので、判決で選挙を無効にする意味がなくなるのです。
【最判平17.9.27 裁判要旨】
衆議院議員選挙を無効とする判決を求める訴訟は,衆議院の解散によって,その訴えの利益を失う。
エ.誤答
公職選挙法に基づき衆議院議員又は参議院議員の選挙の無効を求める訴訟において、裁判所は、当該選挙は違法ではあるが、これを無効とすることが公共の福祉に適合しないと認めるときは、このような場合について、行政事件訴訟法所定の事情判決に関する規定を準用する旨の明文の規定が公職選挙法に置かれていることから、当該選挙が違法であることを主文において宣言した上で、請求を棄却することができる。
要点公職選挙法は事情判決の規定を準用しないが、判例はその法理で請求を棄却した。
妥当でない。公職選挙法は、選挙無効訴訟について、行政事件訴訟法の事情判決の規定を準用しないと定めています(公職選挙法219条1項)。判例は、それでも、事情判決の規定に含まれる一般的な法の基本原則に従い、選挙が違法である旨を主文で宣言し、請求を棄却しました(最大判昭51.4.14)。
選挙を無効にしても、その選挙区の議員がいなくなるだけで、定数配分の違憲状態は是正されず、かえって憲法の予定しない結果を生じることがあるからです。
【最大判昭51.4.14 裁判要旨】
三、衆議院議員選挙が憲法に違反する公職選挙法の選挙区及び議員定数の定めに基づいて行われたことにより違法な場合であつても、それを理由として選挙を無効とする判決をすることによつて直ちに違憲状態が是正されるわけではなく、かえつて憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生ずる判示のような事情などがあるときは、行政事件訴訟法三一条一項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い、選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに当該選挙が違法である旨を主文で宣言すべきである。
【公職選挙法 第219条第1項】
(選挙関係訴訟に対する訴訟法規の適用)
第二百十九条 この章(第二百十条第一項を除く。)に規定する訴訟については、行政事件訴訟法第四十三条の規定にかかわらず、同法第十三条、第十九条から第二十一条まで、第二十五条から第二十九条まで、第三十一条及び第三十四条の規定は、準用せず、また、同法第十六条から第十八条までの規定は、一の選挙の効力を争う数個の請求、第二百七条若しくは第二百八条の規定により一の選挙における当選の効力を争う数個の請求、第二百十条第二項の規定により公職の候補者であつた者の当選の効力を争う数個の請求、第二百十一条の規定により公職の候補者等であつた者の当選の効力若しくは立候補の資格を争う数個の請求又は選挙の効力を争う請求とその選挙における当選の効力に関し第二百七条若しくは第二百八条の規定によりこれを争う請求とに関してのみ準用する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.12
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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