2026年 国家総合職 問題10
行政法行政指導・行政契約
【No. 10】行政契約に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.正答
市が契約を締結するに当たって競争入札の方法によることが不可能又は著しく困難とはいえないとしても、当該契約の目的や内容に相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定してその者との間で契約を締結するという方法を採るのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり、ひいては市の利益の増進につながる場合は、随意契約の方法により当該契約を締結することが認められる。
要点性質・目的上、相手方を選んで契約する方が妥当なら、随意契約によることができる。
妥当である。判例は、競争入札の方法によることが不可能又は著しく困難とはいえなくても、契約の目的・内容に相応する資力、信用、技術、経験等を持つ相手方を選んで契約する方が妥当で、地方公共団体の利益の増進につながる場合には、「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」として随意契約によることができるとしました(最判昭62.3.20)。
地方公共団体の契約方法を制限する法令は、契約の公正と価格の有利性を図るためのものです。その趣旨に照らして、競争入札より相手方を選ぶ方が目的にかなう契約もあるので、契約担当者の合理的な裁量で判断できるとしたのです。
【最判昭62.3.20 裁判要旨】
一 普通地方公共団体が契約を締結するに当たり競争入札の方法によることが不可能又は著しく困難とはいえないとしても、当該契約の目的・内容に相応する資力、信用、技術、経験等を有する相手方を選定してその者との間で契約を締結するという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を達成する上でより妥当であり、ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながる場合には、右契約の締結は、地方自治法施行令(昭和四九年政令第二〇三号による改正前のもの)一六七条の二第一項一号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当する。
イ.正答
町が随意契約の方法により締結した町有地の売買契約が、随意契約の制限に関する法令に違反して締結されたものであったとしても、当該契約は私法上当然に無効になるものではなく、随意契約によることができる場合として法令の規定の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や、当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、当該契約は私法上無効となる。
要点随意契約の制限に反する契約も、特段の事情がある場合に限り私法上無効となる。
妥当である。判例は、随意契約の制限に関する法令に違反して締結された契約も、私法上当然に無効になるのではなく、随意契約によることができる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかな場合など、無効としなければ法令の趣旨を没却する特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になるとしました(最判昭62.5.19)。
判例は、契約方法の規制は契約の適正を一般的に図るためのもので、違反から直ちに契約の効力を全部否定するのは相当でないとし、どの事由に当たるかが必ずしも明らかでない相手方の立場も考えました。
【最判昭62.5.19 裁判要旨】
一 普通地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約は、地方自治法施行令一六七条の二第一項の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法によることが許されないことを知り又は知り得べかりし場合など当該契約を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効となる。
ウ.誤答
町営簡易水道事業の水道料金を定める条例において、町の住民基本台帳に記録されていない別荘に係る給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金よりも大幅に高く設定することを規定したとしても、それが、夏季等の一時期に水道使用が集中する別荘給水契約者に対し、年間を通じて平均して相応な水道料金を負担させるため、実際の水道使用量の多寡にかかわらず、ホテル等の大規模施設を含む別荘以外の給水契約者1件当たりの年間水道料金の平均額と別荘給水契約者1件当たりの年間水道料金の負担額がほぼ同一水準になるようにするとの考え方に基づいている場合、そのような考え方には合理性があり、当該規定は不当な差別的取扱いには当たらない。
要点別荘給水契約者の基本料金を大幅に高くした条例部分は、無効とされた。
妥当でない。判例は、別荘に係る給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者よりも大幅に高くした水道料金の改定は、地方自治法244条3項の不当な差別的取扱いに当たり、その部分は無効だとしました(最判平18.7.14)。
判例は、住民ではないが地方税を納めるなど住民に準ずる地位にある者についても、合理的な理由のない差別的取扱いは許されないとしました。そのうえで、基本料金が給水に要する個別原価に基づかず、水道の使用量に大きな差があるのに年間の負担額をそろえる考え方で定められていた点を、合理的でないとしました。
【最判平18.7.14 裁判要旨】
2 普通地方公共団体の住民ではないが,その区域内に事務所,事業所,家屋敷等を有し,当該普通地方公共団体に対し地方税を納付する義務を負う者など住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用について,当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは,地方自治法244条3項に違反する。
【地方自治法 第244条第3項】
(公の施設)
3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。
エ.正答
村が、公共工事の指名競争入札に当たり、工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していて契約の確実な履行が期待できることや、地元経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことについては、その合理性を肯定することができるものの、価格の有利性確保(競争性の低下防止)の観点を考慮すれば、考慮すべき他の諸事情にかかわらず、およそ村内業者では対応できない工事以外の工事は村内業者のみを指名するという運用について、常に合理性があり裁量権の範囲内であるということはできない。
要点村内業者のみを指名する運用が、常に合理的で裁量の範囲内とはいえない。
妥当である。判例は、地元企業を優先する指名には合理性があるとしつつ、およそ村内業者では対応できない工事以外は村内業者のみを指名する運用が、常に合理性があり裁量権の範囲内であるとはいえないとしました(最判平18.10.26)。
判例は、地方自治法などの法令が、公共工事の入札について機会均等、公正性、透明性、経済性(価格の有利性)の確保を図っていることを前提にしました。地元優先の理由は村外業者でも満たし得るので、一律に村外業者を外す運用は、競争性を下げ価格の有利性を損なうおそれがあるのです。
【最判平18.10.26 判決理由】
確かに,地方公共団体が,指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり,①工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや,②地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し,地元企業を優先する指名を行うことについては,その合理性を肯定することができるものの,①又は②の観点からは村内業者と同様の条件を満たす村外業者もあり得るのであり,価格の有利性確保(競争性の低下防止)の観点を考慮すれば,考慮すべき他の諸事情にかかわらず,およそ村内業者では対応できない工事以外の工事は村内業者のみを指名するという運用について,常に合理性があり裁量権の範囲内であるということはできない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.10
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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