2026年 国家一般職 問題28
民法賃貸借
【No. 28】賃貸借の終了に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.正答
賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって当然に終了する。
要点賃借物の全部が使用収益できなくなれば、賃貸借は当然に終了する。
妥当である。賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了します(民法616条の2)。解除の意思表示は要りません。
賃貸借は、物を使わせ、その対価として賃料を払う契約です。物を使わせることがもうできない以上、契約を続ける意味がないので、当然に終わるとしています。
【民法 第616条の2】
(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了)
第六百十六条の二 賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。
イ.正答
絵画の賃貸借においてその期間を定めなかったときは、賃貸人は、いつでも解約の申入れをすることができる。
要点期間の定めのない賃貸借では、いつでも解約の申入れができる。
妥当である。当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申入れができます(民法617条1項)。絵画のような動産の賃貸借は、解約の申入れの日から1日を経過することで終了します(同項3号)。
期間を定めていない以上、当事者をいつまでも拘束する理由はないので、どちらからでも終わらせることができます。ただし、終了までには、物の種類ごとに一定の期間(土地1年、建物3か月、動産1日)を置いています。
【民法 第617条第1項】
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 一日
ウ.誤答
賃貸借の解除をした場合には、その解除は、賃貸借契約を締結した時に遡って効力を生ずる。
要点賃貸借の解除は、将来に向かってのみ効力を生ずる。
妥当でない。賃貸借の解除は、将来に向かってのみその効力を生じます(民法620条)。契約を締結した時にさかのぼりません。
通説では、賃貸借のように続けて物を使わせる契約では、すでに使用した期間を元に戻すことはできず、その間の賃料も使用の対価として釣り合っているので、過去の分はそのままにして、将来に向かって終わらせると解されています。
【民法 第620条】
(賃貸借の解除の効力)
第六百二十条 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
エ.誤答
賃借人は、賃貸借が終了したときは、賃借物を受け取った後に通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗について、原則として、原状回復義務を負う。
要点通常の使用による損耗や経年変化は、原状回復義務の対象とならない。
妥当でない。賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷を原状に戻す義務を負いますが、通常の使用及び収益によって生じた損耗と経年変化は、この損傷から除かれます(民法621条)。
判例は、通常の使用による損耗の修繕費などは、通常、賃料の中に含めて回収されているので、賃借人にその回復の義務を負わせるのは、予期しない特別の負担を課すことになるとしています(最判平17.12.16)。
【最判平17.12.16 判決理由】
…賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,…
【民法 第621条】
(賃借人の原状回復義務)
第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
オ.誤答
賃借人が賃貸人に対して敷金を支払っている場合において、賃借人が賃料を滞納したときは、賃借人は、賃貸人に対し、敷金を賃料の支払に充てるよう請求することができる。
要点賃借人は、敷金を賃料の弁済に充てるよう請求できない。
妥当でない。賃貸人は、賃借人が賃料などの債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができますが、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求できません(民法622条の2第2項)。
通説では、敷金は賃借人の債務を担保するために賃貸人に交付される金銭なので、担保をいつ使うかは担保を持つ賃貸人が決めることで、賃借人が滞納分を敷金で済ませられるとすると、明渡しまでに生じる債務の担保がなくなってしまうと解されています。
【民法 第622条の2第2項】
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.28
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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