2026年 国家一般職 問題27
民法債権譲渡・債権の消滅
【No. 27】債権の消滅原因に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.正答
債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は消滅する。弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生時に当該特定物が存在した場所において、その他の弁済は原則として債権者の現住所において、それぞれしなければならない。
要点特定物の引渡しは債権発生時の所在地、その他は債権者の現住所で弁済する。
妥当である。債務者が弁済をしたときは債権は消滅し(民法473条)、弁済の場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所で、その他の弁済は債権者の現在の住所でしなければなりません(484条1項)。
通説では、特定物(その物でなければならない物)は、債権が生じた時にある場所で引き渡すのが当事者の通常の意思であり、金銭の支払などは、債務者が債権者のもとへ持っていくのが原則(持参債務)と解されています。
【民法 第473条】
(弁済)
第四百七十三条 債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。
【民法 第484条第1項】
(弁済の場所及び時間)
第四百八十四条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
2.誤答
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債権者と債務者で折半して負担する。ただし、債権者が自身の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担となる。
要点弁済の費用は、別段の意思表示がなければ債務者が負担する。
妥当でない。弁済の費用は、別段の意思表示がなければ、債権者と債務者で折半するのではなく、債務者の負担です(民法485条本文)。債権者が自分の行為(住所の移転など)で費用を増加させたときは、その増加額を債権者が負担する、という後半は条文のとおりです(同条ただし書)。
通説では、弁済は債務者が自分の義務として行うものなので費用も債務者が負い、債権者の都合で増えた分だけを債権者に負わせて、公平を図っていると解されています。
【民法 第485条】
(弁済の費用)
第四百八十五条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
3.誤答
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺することができる。また、当事者が相殺を禁止する旨の意思表示をしても、それを第三者に対抗できるのは、当該第三者が悪意の場合のみである。
要点相殺禁止の意思表示は、悪意又は重過失の第三者に対抗できる。
妥当でない。相殺を禁止する意思表示を第三者に対抗できるのは、第三者が悪意(知っている)の場合に限られず、重大な過失によって知らなかった場合も含みます(民法505条2項)。相殺の要件を述べた前半は、同条1項のとおりです。
債権の譲渡制限の意思表示を第三者に対抗できる範囲(466条3項)とそろえて、当事者の特約を主張できる範囲を定めています。
【民法 第505条】
(相殺の要件等)
第五百五条 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
【民法 第466条第3項】
(債権の譲渡性)
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4.誤答
当事者が、従前の給付の内容について重要な変更をし、従前の債務に代えて新たな債務を発生させる契約をしたときは、従前の債務は更改により消滅するが、従前の債権者が第三者と交替する新たな債務を発生させたときは、債権譲渡とみなされ、更改は発生しない。
要点債権者が第三者と交替する新たな債務を発生させる契約も、更改である。
妥当でない。従前の債務に代えて、給付の内容の重要な変更、債務者の交替、債権者の交替のいずれかを内容とする新たな債務を発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅します(民法513条)。債権者が交替する場合も更改であり、債権譲渡とみなされるわけではありません。
更改は、従前の債務を消して新しい債務を生じさせるので、従前の債務についての抗弁や担保は、原則として引き継がれません。債権をその同一性を保ったまま移す債権譲渡とは効果が違うので、別の制度として定められています。
【民法 第513条】
(更改)
第五百十三条 当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。
一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
二 従前の債務者が第三者と交替するもの
三 従前の債権者が第三者と交替するもの
5.誤答
相続等により債権及び債務が同一人に帰属したときは、当該債権は消滅するが、それが第三者の権利の目的であるときは、当該消滅した債権を有していた者は、その消滅により第三者に発生した損害を賠償しなければならない。
要点混同があっても、債権が第三者の権利の目的であるときは消滅しない。
妥当でない。債権と債務が同一人に帰属したときは、その債権は消滅しますが、その債権が第三者の権利の目的であるとき(債権に質権が設定されているときなど)は、消滅しません(民法520条)。債権が消滅したうえで第三者に損害を賠償する、という仕組みではありません。
通説では、自分が自分に対して債権を持っていても意味がないので、混同によって債権は消えるのが原則ですが、その債権の上に権利を持つ第三者がいるときは、債権が消えるとその第三者の権利まで失われるので、債権を残すと解されています。
【民法 第520条】
第五百二十条 債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.27
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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