2026年 国家一般職 問題26
民法連帯債務・保証
【No. 26】連帯債務に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
連帯債務は、複数の債務者がそれぞれ債務の全部を払う義務を負う形です。1人が払えなくても他の債務者から回収できるので、債権者にとっては、債務者の無資力の危険を分散する担保の働きがあります。
1人の債務者に生じた事由は、原則として他の債務者に影響しません(相対的効力)。例外は、債権者が満足を得たのと同じに扱える事由(弁済、更改、相殺、混同)です。また、債務者どうしの間では、払った分を負担部分(内部での負担の割合)に応じて分け合います(求償)。
1.誤答
数人が連帯債務を負担するとき、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。しかし、過大な弁済を防止する趣旨から、同時に全ての連帯債務者に対し、全部の履行を請求することはできない。
要点債権者は、全ての連帯債務者に同時に全部の履行を請求できる。
妥当でない。債権者は、連帯債務者の1人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求できます(民法436条)。
全員に同時に全部を請求しても、1人が払えばその分は全員の債務が消えるので、過大な弁済にはなりません。誰からでも全部を回収できることが、連帯債務の担保としての働きです。
【民法 第436条】
(連帯債務者に対する履行の請求)
第四百三十六条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
2.誤答
連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有しているものの、当該債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、他の連帯債務者は、当該債権を有する連帯債務者の負担部分についても、債権者に対して債務の履行を拒むことができない。
要点他の連帯債務者は、反対債権を持つ者の負担部分の限度で、履行を拒める。
妥当でない。反対債権を持つ連帯債務者が相殺を援用しない間、他の連帯債務者は、その連帯債務者の負担部分の限度で、債権者に対して履行を拒めます(民法439条2項)。
通説では、全額を払った後に、求償と反対債権の取立てが行き来する回り道を避けるためと解されています。ただ、他人の債権で相殺までできるとすると、他人の債権を勝手に処分することになるので、履行を拒めるにとどめています。
【民法 第439条第2項】
(連帯債務者の一人による相殺等)
2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
3.正答
連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。しかし、連帯債務者の一人に対して債務の免除がされたときは、別段の意思表示がない限り、他の連帯債務者に対してその効力は生じない。
要点更改は他の連帯債務者にも効力を生ずるが、免除は原則として生じない。
妥当である。連帯債務者の1人と債権者との間に更改があったときは、債権は全ての連帯債務者の利益のために消滅します(民法438条)。一方、免除は、別段の意思表示がない限り、他の連帯債務者に効力を生じません(441条)。
免除をする債権者は、通常、その債務者だけを免除するつもりです。免除が他の債務者にも及ぶと、他の債務者に請求できる額が減り、債権者の意思に反するので、相対的効力としています。
【民法 第438条】
(連帯債務者の一人との間の更改)
第四百三十八条 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
【民法 第441条】
(相対的効力の原則)
第四百四十一条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
4.誤答
連帯債務者の一人であるAが、債権者に対して弁済をしたが、他の連帯債務者がいることを知りながら事後の通知を怠っていた。その後、他の連帯債務者であるBも、他の連帯債務者がいることを知りながら事前の通知を怠ったため、Aの弁済を知らないまま債権者に二重に弁済をした。この場合、Bは、自己の弁済を有効であるとみなすことができる。
要点事後通知を怠った者の後に、事前通知を怠って弁済しても、有効とみなせない。
妥当でない。判例は、事前の通知を怠って弁済した連帯債務者は、すでに弁済していた他の連帯債務者に対し、民法443条2項によって自己の弁済を有効とみなすことはできないとしました(最判昭57.12.17)。先に弁済した者が事後の通知を怠っていても同じで、本肢では、先にされたAの弁済が有効になります。
判例は、443条2項は事前の通知をすることを前提とした規定で、事前の通知を怠った連帯債務者まで守る趣旨ではないとしました。
【最判昭57.12.17 判決理由】
連帯債務者の一人が弁済その他の免責の行為をするに先立ち、他の連帯債務者に通知することを怠つた場合は、既に弁済しその他共同の免責を得ていた他の連帯債務者に対し、民法四四三条二項の規定により自己の免責行為を有効であるとみなすことはできないものと解するのが相当である。けだし、同項の規定は、同条一項の規定を前提とするものであつて、同条一項の事前の通知につき過失のある連帯債務者までを保護する趣旨ではないと解すべきであるからである(大審院昭和六年(オ)第三一三七号同七年九月三〇日判決・民集一一巻二〇号二〇〇八頁参照)。
【民法 第443条】
(通知を怠った連帯債務者の求償の制限)
第四百四十三条 他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
2 弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。
5.誤答
連帯債務者の一人が債務を弁済した場合であっても、弁済した額が債務の一部であって自己の負担部分に達していないときは、当該連帯債務者は、他の連帯債務者に対する求償権を有しない。
要点弁済額が自己の負担部分に満たなくても、他の連帯債務者に求償できる。
妥当でない。連帯債務者の1人が弁済をしたときは、免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分に応じた額を求償できます(民法442条1項)。
負担部分は、連帯債務者の間で債務を分け合う割合です。払った額が小さくても、その割合で分け合うので、一部の弁済でも割合に応じて求償できます。
【民法 第442条第1項】
(連帯債務者間の求償権)
第四百四十二条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.26
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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