2026年 国家一般職 問題24
民法用益物権
【No. 24】地上権及び法定地上権に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
法定地上権は、土地とその上の建物が同じ人のものだったところ、抵当権の実行で別々の所有者になったときに、建物のために地上権が設定されたものとみなす制度です(民法388条)。通説では、同じ人が持つ土地に、自分の建物のための地上権を設定しておくことはできないと解されています。そこで、競売の後に建物が土地を使う権利がなくなり、取り壊すしかなくなるのを防いでいます。
その一方で、法定地上権が付くと土地の価値は大きく下がります。判例は、土地の負担を予想していなかった人や、その土地を処分する立場になかった人に不利益を負わせないよう、法定地上権が成立する場面を絞っています。
【民法 第388条】
(法定地上権)
第三百八十八条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
ア.誤答
地上権者は、他人の土地において工作物若しくは竹木を所有し、又は、耕作若しくは牧畜をするため、その土地を使用する権利を有する。
要点耕作や牧畜のために他人の土地を使用する権利は、永小作権である。
妥当でない。地上権は、他人の土地で工作物又は竹木を所有するため、その土地を使う権利です(民法265条)。耕作又は牧畜をするために他人の土地を使う権利は、永小作権です(270条)。
2つは、土地を使う目的で区別されます。
地上権:建物などの工作物や竹木を所有するため。地代は要素ではない
永小作権:耕作又は牧畜をするため。小作料を払うことが要素
【民法 第265条】
(地上権の内容)
第二百六十五条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
【民法 第270条】
(永小作権の内容)
第二百七十条 永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。
イ.正答
地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。
要点地下又は空間は、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。
妥当である。地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的にできます(民法269条の2第1項。区分地上権)。設定行為で、地上権を行使するために、土地の使用に制限を加えることもできます(同項後段)。
通説では、地下鉄のトンネルや送電線のように地下や空中の一部だけを使う場合に、土地全体を使う地上権を設定すると、所有者が地表を使えなくなるので、必要な範囲に区切って設定できるようにしたと解されています。
【民法 第269条の2第1項】
(地下又は空間を目的とする地上権)
第二百六十九条の二 地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。
ウ.誤答
地上権者は、地上権を設定した土地所有者の承諾がなければ、地上権を譲渡することができないと一般に解されている。
要点地上権者は、土地所有者の承諾がなくても地上権を譲渡できる。
妥当でない。通説では、地上権者は、土地の所有者の承諾がなくても、地上権を譲渡したり、土地を賃貸したりできると解されています。
地上権は、土地を直接支配する物権なので、所有権と同じく、自由に譲渡できるのが原則です。これに対し、土地の賃借権は、賃貸人との契約に基づいて土地を使わせてもらう債権なので、譲渡には賃貸人の承諾が必要とされています(民法612条1項)。
【民法 第612条第1項】
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
エ.誤答
Aが所有する甲土地につき、Bが更地として評価して抵当権を設定した後に、AがBの承認を得て甲土地上にA所有の乙建物を建築した場合において、その後抵当権が実行されてCが甲土地を所有するに至ったときは、乙建物のために法定地上権が成立する。
要点更地に抵当権を設定した後に建てた建物には、法定地上権は成立しない。
妥当でない。法定地上権が成立するには、抵当権を設定した当時、土地の上に建物があることが必要です(民法388条)。判例は、抵当権の設定当時に建物が完成しておらず、土地を更地として評価して抵当権を設定したことが明らかなときは、抵当権者が建物の建築を承認していても、法定地上権は成立しないとしました(最判昭36.2.10)。
判例は、抵当権が更地としての評価に基づいて設定されたことを重く見ています。更地として価値を見積もった抵当権者や、競売で買い受ける人にとって、後から建物のための地上権が付くと、土地の価値が大きく下がり、予想していなかった損失を負うことになるからです。
【最判昭36.2.10 裁判要旨】
土地に対する抵当権設定の当時、当該建物は未だ完成しておらず、しかも原判決認定の事情(原判決理由参照)に照らし更地としての評価に基き抵当権を設定したことが明らかであるときは、たとえ抵当権者において右建物の築造をあらかじめ承認した事実があつても、民法第三八八条の適用を認むべきではない。
オ.正答
A及びBが共有する甲土地の上にAが単独で所有する乙建物が存在し、Cが甲土地のAの持分に抵当権を設定した場合、その後抵当権が実行されてDがAの持分を取得したとしても、特段の事情がない限り、乙建物のために法定地上権は成立しない。
要点土地の共有持分に抵当権が設定されても、原則として法定地上権は成立しない。
妥当である。判例は、土地の共有者の1人についてだけ法定地上権の要件が生じても、ほかの共有者の持分まで無視されるいわれはないので、その共有地には法定地上権は成立しないとしました(最判昭29.12.23)。
判例は、388条は建物を存続させる必要を考えた規定であるものの、地上権を設定したとみなされるのは、もともとその土地を完全に処分できる所有者であり、ほかの共有者の持分について、その同意なく地上権を設定することまで認める趣旨ではないとしています。
【最判昭29.12.23 判決理由】
けだし同条が建物の存在を全うさせようとする国民経済上の必要を多分に顧慮した規定であることは疑を容れないけれども、しかし同条により地上権を設定したと看做される者は、もともと当該土地について所有者として完全な処分権を有する者に外ならないのであつて、他人の共有持分につきなんら処分権を有しない共有者に他人の共有持分につき本人の同意なくして地上権設定等の処分をなし得ることまでも認めた趣旨でないことは同条の解釈上明白だからである。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.24
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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