2026年 国家一般職 問題23
民法占有・所有権
【No. 23】所有権に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.正答
所有者を異にする数個の動産が付合し、損傷しなければ分離不可能になった場合、その合成物の所有権は、付合前の動産に主従の区別があるときは主たる動産の所有者に属し、そうでないときは付合の時における各動産の価格の割合で各動産の所有者の共有に属する。
要点動産の付合では、主たる動産の所有者が所有し、主従がなければ共有となる。
妥当である。所有者の違う動産が付合し、損傷しなければ分離できなくなったときは、合成物の所有権は主たる動産の所有者に属します(民法243条)。主従の区別ができないときは、付合の時の価格の割合で共有します(244条)。
分けると物を傷つけたり大きな費用がかかったりする場合(243条)に、元に戻させるのではなく、全体を1つの物として誰かの所有にする決まりです。所有権を失った人は、償金を請求できます(248条)。
【民法 第243条】
(動産の付合)
第二百四十三条 所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。
【民法 第244条】
第二百四十四条 付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。
【民法 第248条】
(付合、混和又は加工に伴う償金の請求)
第二百四十八条 第二百四十二条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第七百三条及び第七百四条の規定に従い、その償金を請求することができる。
イ.誤答
A所有の甲建物の賃借人Bが、甲建物の屋上に自己の費用で乙建物を構築した場合、乙建物がそれ自体では取引上の独立性を有しないものであっても、Bが乙建物を構築することについてAから承諾を受け、かつ、乙建物についてB名義の所有権保存登記がされているときは、Bは乙建物について区分所有権を取得する。
要点独立性のない増築部分は、承諾や登記があっても区分所有権の対象にならない。
妥当でない。判例は、賃借人が建物の屋上に構築した部分が、外部への出入りに賃借建物の中の梯子段を使うほかなく、それ自体では取引上の独立性がないときは、賃貸人の承諾を受けていても区分所有権の対象にならず、その所有権は建物の所有者に属するとしました。賃借人の名義で所有権保存登記がされていても変わりません(最判昭44.7.25)。
建物の構造の一部でしかない部分に別の所有権を認めると、切り離して取引できない部分に、別々の所有権が並ぶことになります。通説では、権原によって附属させた人の権利を残す民法242条ただし書は、附属させた物が独立性を保っている場合にだけ働くと解されています。
【最判昭44.7.25 判決理由】
そうとすれば、第三建物は、既存の第二建物の上に増築された二階部分であり、その構造の一部を成すもので、それ自体では取引上の独立性を有せず、建物の区分所有権の対象たる部分にはあたらないといわなければならず、たとえDが第三建物を構築するについて右第二建物の一部の賃貸人Eの承諾を受けたとしても、民法二四二条但書の適用はないものと解するのが相当であり、その所有権は構築当初から第二建物の所有者Eに属したものといわなければならない。
【民法 第242条】
(不動産の付合)
第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
ウ.正答
不動産がA及びBの共有に属する場合において、AがBの所在を知ることができないときは、裁判所は、Aの請求により、AにBの持分を取得させる旨の裁判を原則として行うことができる。
要点所在等不明共有者の持分は、裁判により他の共有者が取得できる。
妥当である。不動産の共有者が、ほかの共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、所在等不明共有者の持分を取得させる裁判ができます(民法262条の2第1項)。遺産の共有で相続開始から10年を経過していないときなどは、できません(同条3項)。
共有者の一部の所在が分からないと、共有物の利用や処分に必要な合意ができず、共有関係を解消するのも簡単ではありません。そこで、ほかの共有者が持分を取得できるようにし、所在等不明共有者は、取得された持分の時価相当額を請求できるとしています(同条4項)。
【民法 第262条の2第1項・第3項・第4項】
(所在等不明共有者の持分の取得)
第二百六十二条の二 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。
3 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、第一項の裁判をすることができない。
4 第一項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。
エ.誤答
所有者のない動産を所有の意思をもって占有した場合、当該占有者は当該動産の所有権を取得するが、以前は所有者がいたものの、その所有者が所有権を放棄したために現在は所有者のない動産を所有の意思をもって占有した場合、当該占有者は当該動産の所有権を取得できない。
要点所有者が放棄した動産も無主物で、所有の意思で占有した者が所有権を取得する。
妥当でない。所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することで、その所有権を取得できます(民法239条1項)。所有者が所有権を放棄した動産も、所有者のない動産に当たるので、所有の意思をもって占有した人が所有権を取得します。
239条1項は、所有者のない状態になった経緯を問いません。初めから誰のものでもなかった物も、捨てられた物も、今は所有者がいない点で同じです。なお、所有者のない不動産は、占有しても取得できず、国庫に帰属します(同条2項)。
【民法 第239条】
(無主物の帰属)
第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.23
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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