2026年 国家一般職 問題19
行政法行政事件訴訟の類型
【No. 19】無効確認訴訟に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
無効な処分は、はじめから効力がないので、期間の制限なく、いつでも無効を主張できます。また、ふつうは、処分が無効であることを前提に、現在の法律関係を直接争えば足ります(土地の所有権の確認など)。
そのため、無効等確認の訴えは、そうした現在の法律関係に関する訴えでは目的を達することができない場合に使う、補充的な訴えとされています(行政事件訴訟法36条)。
【行政事件訴訟法 第36条】
(無効等確認の訴えの原告適格)
第三十六条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。
1.誤答
行政事件訴訟法は、無効確認訴訟を抗告訴訟として位置付け、被告適格、第三者の訴訟参加、出訴期間、判決の拘束力、執行停止などの取消訴訟の規定を無効確認訴訟に準用している。
要点無効確認訴訟には、取消訴訟の出訴期間の規定は準用されない。
妥当でない。無効等確認の訴えには、被告適格、第三者の訴訟参加、判決の拘束力、執行停止などの取消訴訟の規定は準用されますが(行政事件訴訟法38条1項・3項)、出訴期間の規定(14条)は準用されません。
出訴期間は、期間が過ぎた処分の効力を確定させるためのものです。無効な処分は、はじめから効力がないので、期間が過ぎても効力が確定することはなく、いつでも無効を主張できます。
【行政事件訴訟法 第38条第1項・第3項】
(取消訴訟に関する規定の準用)
第三十八条 第十一条から第十三条まで、第十六条から第十九条まで、第二十一条から第二十三条まで、第二十四条、第三十三条及び第三十五条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟について準用する。
3 第二十三条の二、第二十五条から第二十九条まで及び第三十二条第二項の規定は、無効等確認の訴えについて準用する。
【行政事件訴訟法 第14条第1項】
(出訴期間)
第十四条 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2.誤答
行政処分の無効確認訴訟と、当該行政処分についての審査請求を棄却した裁決に係る無効確認訴訟の双方を提起することができる場合に、後者の訴訟において、原告は、原処分である当該行政処分の無効を主張することができる。
要点裁決の無効確認訴訟では、原処分の無効を主張できない。
妥当でない。処分の無効等確認の訴えと、審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟の両方を提起できる場合には、取消訴訟の原処分主義の規定(行政事件訴訟法10条2項)が準用されます(38条2項)。そのため、裁決の無効確認訴訟では、原処分の無効を主張できません。
原処分の違法は原処分を対象とする訴えで争い、裁決の訴えでは裁決そのものの違法(審理の手続の違法など)だけを争う、という役割分担です。同じ違法を2つの訴訟で重ねて審理し、判断が食い違うことを防いでいます。
【行政事件訴訟法 第10条第2項】
(取消しの理由の制限)
2 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。
【行政事件訴訟法 第38条第2項】
(取消訴訟に関する規定の準用)
2 第十条第二項の規定は、処分の無効等確認の訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟とを提起することができる場合に、第二十条の規定は、処分の無効等確認の訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟に併合して提起する場合に準用する。
3.誤答
無効確認訴訟の原告適格に関する「法律上の利益を有する者」の意義は、取消訴訟の原告適格に関する「法律上の利益を有する者」よりも広く解釈される。
要点無効確認訴訟の「法律上の利益を有する者」は、取消訴訟と同じ意義である。
妥当でない。判例は、無効等確認の訴えの原告適格を定める36条の「法律上の利益を有する者」の意義は、取消訴訟の原告適格の場合と同じに解するとしました(最判平4.9.22。もんじゅ訴訟)。
通説では、36条は取消訴訟の原告適格と同じ「法律上の利益」という言葉を使っており、どちらも処分の効力を否定して自分の利益を守る抗告訴訟なので、守られる人の範囲を同じにしたものと解されています。
【最判平4.9.22 判決理由】
行政事件訴訟法三六条は、無効等確認の訴えの原告適格について規定するが、同条にいう当該処分の無効等の確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」の意義についても、右の取消訴訟の原告適格の場合と同義に解するのが相当である。
4.誤答
土地改良事業に伴い換地処分を受けた者が、自己に対してより有利な換地を求めて当該処分の無効を主張した場合、当該処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えの方が、当該処分の無効確認を求める訴えよりも、より直截的で適切な訴訟形態であることから、無効確認訴訟の原告適格は認められない。
要点換地処分の無効を主張する者には、無効確認訴訟の原告適格がある。
妥当でない。判例は、換地処分を受けた者が、照応の原則に反するとして換地処分の無効を主張する場合には、換地処分の無効確認の訴えを提起できるとしました(最判昭62.4.17)。
判例は、現在の法律関係に関する訴えが形の上で起こせるかどうかではなく、紛争の実態からみて、どちらの訴えが直截的で適切かで、36条の「目的を達することができない」に当たるかを判断しています。
【最判昭62.4.17 判決理由】
…このような換地処分の効力をめぐる紛争を私人間の法律関係に関する個別の訴えによつて解決しなければならないとするのは右処分の性質に照らして必ずしも適当とはいい難く、また、換地処分を受けた者が照応の原則に違反することを主張してこれを争う場合には、自己に対してより有利な換地が交付されるべきことを主張していることにほかならないのであつて、換地処分がされる前の従前の土地に関する所有権等の権利の保全確保を目的とするものではないのであるから、このような紛争の実態にかんがみると、当該換地処分の無効を前提とする従前の土地の所有権確認訴訟等の現在の法律関係に関する訴えは右紛争を解決するための争訟形態として適切なものとはいえず、むしろ当該換地処分の無効確認を求める訴えのほうがより直截的で適切な争訟形態というべきであり、…
5.正答
原告が行政処分の無効を主張するためには、単に抽象的に処分に重大かつ明白な瑕疵があると主張したり、処分の取消原因が当然に無効原因を構成すると主張したりすることだけでは足りず、重大かつ明白な瑕疵について具体的事実に基づいて主張しなければならない。
要点無効の主張は、重大かつ明白な瑕疵を具体的事実に基づいてしなければならない。
妥当である。判例は、無効原因の主張は、抽象的な主張では足りず、具体的事実に基づいてしなければならないとしました(最判昭34.9.22)。
無効原因となる重大・明白な違法とは、処分の要件があるとした処分庁の認定に、重大で明白な誤認がある場合をいうからです。何がどう明白に誤っているかを具体的に示さなければ、ただの違法(取消原因)と区別できません。
【最判昭34.9.22 判決理由】
すなわち無効原因となる重大・明白な違法とは、処分要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大・明白な誤認があると認められる場合を指すものと解すべきである。たとえば、農地でないものを農地として買収することは違法であり、取消事由となるが、それだけで、当然に、無効原因があるといい得るものではなく、無効原因があるというためには、農地と認定したことに重大・明白な誤認がある場合 (たとえば、すでにその地上に堅固な建物の建つているような純然たる宅地を農地と誤認して買収し、その誤認が何人の目にも明白であるというような場合)でなければならない。従つて、無効原因の主張としては、誤認が重大・明白であることを具体的事実(右の例でいえば地上に堅固な建物の建つているような純然たる宅地を農地と誤認して買収したということ)に基いて主張すべきであり、単に抽象的に処分に重大・明白な瑕疵があると主張したり、若しくは、処分の取消原因が当然に無効原因を構成するものと主張することだけでは足りないと解すべきである。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.19
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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