2026年 国家一般職 問題18
行政法取消訴訟の要件
【No. 18】処分性に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
抗告訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法3条2項)かどうかは、下の判例の定式で判断します(最判昭39.10.29)。要点は、公権力の行使であることと、国民の権利義務への直接の法的効果があることです。
この定式から、対等な立場で結ぶ契約、行政の内部の行為、一般的・抽象的なルールの定めは、ふつう処分になりません。ただ判例は、形の上では当てはまりにくい行為でも、その行為で国民の法的地位が直接変わるか、後の段階で争ったのでは実効的な権利救済にならないかを重く見て、処分と認めることがあります。
【最判昭39.10.29 判決理由】
…行政事件訴訟特例法一条にいう行政庁の処分とは、所論のごとく行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものであることは、当裁判所の判例とするところである…
【行政事件訴訟法 第3条第2項】
(抗告訴訟)
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
ア.誤答
埋葬等を請求する者が他の宗教団体の信者であることのみを理由として、宗教団体の経営する墓地の管理者がその請求を拒むことはできないとする旨の通達は、従来の法律の解釈、事務の取扱いを変更し、墓地の管理者らに新たに埋葬の受忍義務を課するなどこれらの者の権利義務に直接具体的な法律上の影響を及ぼすため、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
要点埋葬の受忍に関する通達は、行政処分に当たらない。
妥当でない。判例は、本肢の通達について、取消しの訴えは許されないとしました(最判昭43.12.24)。従来の法律の解釈や事務の扱いを変える通達でも、行政組織内部における命令にすぎないからです。
通達は、上級の行政機関が下級の機関や職員に、法令の解釈や事務の扱いを指示するものです。拘束されるのは行政機関だけで、国民は直接拘束されず、裁判所も通達の解釈に従う必要がないので、国民の権利義務を直接動かしません。
【最判昭43.12.24 裁判要旨】
昭和三五年三月八日付衛環発第八号都道府県等衛生主管部局長あて厚生省公衆衛生局環境衛生部長通知は、宗教団体の経営する墓地の管理者は埋葬等を請求する者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてその請求を拒むことはできないからこの趣旨にそつて事務処理をすべき旨を求めた行政組織内部における命令にすぎず、従来の法律の解釈、事務の取扱を変更するものではあるが、墓地の管理者らにあらたに埋葬の受忍義務を課する等これらの者の権利義務に直接具体的な法律上の影響を及ぼすものではなく、墓地の経営者からその取消を求める訴を提起することは許されない。
イ.正答
土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等を土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たせるものということができ、当該事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできないため、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
要点土地区画整理事業の事業計画の決定は、行政処分に当たる。
妥当である。判例は、市町村の施行する土地区画整理事業の事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしました(最大判平20.9.10)。事業計画を「青写真」にすぎないとした従来の判例を変更したものです。
判例は2つの点を重く見ました。事業計画が決まると、宅地の所有者等は、建築の制限を受けながら換地処分を受けるべき地位に立たされること。そして、換地処分の段階で争っても、工事が進んでいて事情判決(違法でも取り消さない判決)になりやすく、実効的な救済にならないことです。
【最大判平20.9.10 判決理由】
以上によれば,市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は,施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって,抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ,実効的な権利救済を図るという観点から見ても,これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。
ウ.正答
土壌汚染対策法に基づく有害物質使用特定施設の使用が廃止された旨の通知は、原則として、当該通知を受けた土地の所有者等に対し、同法所定の特定有害物質による汚染の状況に係る調査及び報告の義務を生じさせるものであり、その法的地位に直接的な影響を及ぼすものというべきであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
要点土壌汚染対策法の有害物質使用特定施設の廃止の通知は、行政処分に当たる。
妥当である。判例は、土壌汚染対策法による、有害物質使用特定施設の使用が廃止された旨の通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしました(最判平24.2.3)。
通知を受けた土地の所有者等には、通知によって調査と報告の義務が生じます。報告しないときの報告命令はすぐに出るとは限らず、命令を待ってから争うのでは早く争えないので、実効的な権利救済の観点からも、通知の段階で争わせるべきだとしました。
【最判平24.2.3 判決理由】
これらの法令の規定によれば,法3条2項による通知は,通知を受けた当該土地の所有者等に上記の調査及び報告の義務を生じさせ,その法的地位に直接的な影響を及ぼすものというべきである。
エ.正答
弁済供託は民法上の寄託契約の性質を有するものの、供託官が供託物取戻請求を理由がないと認めて却下した行為は、実定法において、供託官の当該行為につき、特に、「却下」及び「処分」という字句が用いられており、さらに、供託官の却下処分に対しては特別の不服審査手続が設けられていることからすれば、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
要点供託官による供託物取戻請求の却下は、行政処分に当たる。
妥当である。判例は、供託官が供託物の取戻請求を理由がないとして却下した行為は行政処分であり、取消しの訴えを提起できるとしました(最大判昭45.7.15)。
判例は、法律の仕組みを重く見ました。中身は民法上の寄託契約の性質を持つ関係でも、法律が供託官に行政機関として判断する権限を与え、「却下」「処分」の言葉と特別の不服審査の手続を設けていれば、処分として扱われるという判断です。
【最大判昭45.7.15 判決理由】
…もともと、弁済供託は、弁済者の申請により供託官が債権者のために供託物を受け入れ管理するもので、民法上の寄託契約の性質を有するものであるが、供託により弁済者は債務を免れることとなるばかりでなく、金銭債務の弁済供託事務が大量で、しかも、確実かつ迅速な処理を要する関係上、法律秩序の維持、安定を期するという公益上の目的から、法は、国家の後見的役割を果たすため、国家機関である供託官に供託事務を取り扱わせることとしたうえ、供託官が弁済者から供託物取戻の請求を受けたときには、単に、民法上の寄託契約の当事者的地位にとどまらず、行政機関としての立場から右請求につき理由があるかどうかを判断する権限を供託官に与えたものと解するのが相当である。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.18
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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