2026年 国家一般職 問題17
行政法行政上の制裁
【No. 17】行政罰に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
行政罰は、行政上の義務に違反した者に科される制裁で、次の2つがあります。
行政刑罰:拘禁刑や罰金など、刑法に名前のある刑罰を科すもの
行政上の秩序罰:届出を怠ったなどの違反に、過料(金銭の制裁)を科すもの
両者は、刑罰かどうかで扱いが分かれます。判例は、過料を科すことは、刑事上の制裁を科すこととは異なるとしています(最大決昭41.12.27)。そのため、刑罰についての決まりや手続は、秩序罰には当然には及びません。
【最大決昭41.12.27 判決理由】
従つて、法律上、裁判所がこれを科することにしている場合でも、過料を科する作用は、もともと純然たる訴訟事件としての性質の認められる刑事制裁を科する作用とは異なるのであるから、…
ア.誤答
行政上の秩序罰は刑罰ではないため、刑法総則の適用を受けないが、適正手続を担保する観点から、刑事訴訟法の一部適用を受ける。
要点行政上の秩序罰には、刑法総則も刑事訴訟法も適用されない。
妥当でない。行政上の秩序罰(過料)は刑罰ではないので、刑法総則だけでなく、刑事訴訟法も適用されません。
過料を科す手続は、刑事裁判とは別に定められています。国の法律に基づく過料は、裁判所が非訟事件手続法の手続で科し、地方公共団体の条例・規則に基づく過料は、地方公共団体の長が行政処分として科します(地方自治法149条3号)。
【地方自治法 第149条第3号】
第百四十九条 普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
三 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。
イ.正答
行政刑罰は刑罰であるため、原則として刑法総則及び刑事訴訟法の適用を受ける。
要点行政刑罰には、原則として刑法総則と刑事訴訟法が適用される。
妥当である。行政刑罰は、行政上の義務違反に対して科される刑罰です。刑法総則は、他の法令の罪にも、その法令に特別の規定がない限り適用されます(刑法8条)。科す手続も、原則として刑事訴訟法によります。
行政上の義務違反に対するものでも、科されるのが刑罰である以上、刑法総則の原則と、刑事手続の保障が及ぶという整理です。
【刑法 第8条】
(他の法令の罪に対する適用)
第八条 この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。
ウ.誤答
刑罰と、行政上の秩序罰としての過料を併科することはできない。
要点刑罰と行政上の秩序罰としての過料は、併科できる。
妥当でない。判例は、証人が正当な理由なく出頭しないときの過料と、同じ不出頭に対する罰金・拘留(どちらも刑事訴訟法の規定)は、二者択一の関係ではなく、併科を妨げないとしました(最判昭39.6.5)。
判例は、過料は訴訟手続の秩序を保つために裁判所が直接科す秩序罰で、罰金・拘留は刑事司法に協力しない行為に通常の刑事手続で科す刑罰であり、両者は目的、要件、手続が違うことを重く見ています。両方を科すことも、憲法に反しないとされています。
【最判昭39.6.5 判決理由】
しかしながら、刑訴一六〇条は訴訟手続上の秩序を維持するために秩序違反行為に対して当該手続を主宰する裁判所または裁判官により直接に科せられる秩序罰としての過料を規定したものであり、同一六一条は刑事司法に協力しない行為に対して通常の刑事訴訟手続により科せられる刑罰としての罰金、拘留を規定したものであつて、両者は目的、要件及び実現の手続を異にし、必ずしも二者択一の関係にあるものではなく併科を妨げないと解すべきであり、…
エ.正答
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し過料を科する旨の規定を設けることができる。
要点条例には、条例違反者に過料を科す旨の規定を設けることができる。
妥当である。普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除き、条例の中に、条例に違反した者に対し、刑罰か5万円以下の過料を科す旨の規定を設けることができます(地方自治法14条3項)。
条例は、法令に違反しない限りで定めることができます(同条1項)。同条3項は、条例で定めた義務の実効性を確保する手段として、刑罰と過料を置くことを認め、それぞれの上限を法律で定めています。
【地方自治法 第14条第1項・第3項】
第十四条 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の拘禁刑、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.17
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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