2026年 国家一般職 問題15
憲法財政
【No. 15】予算の法的性質に関する考え方として、次のⅠ説、Ⅱ説及びⅢ説があるとする。 (Ⅰ説) 予算は、国会が政府に対して1年間の財政計画を承認する意思表示であって、専ら国会と政府との間でその効力を有する。 (Ⅱ説) 予算は、法律とは異なった国法の一形式である。 (Ⅲ説) 予算は、法律それ自体である。 これらの説に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
3つの説は、予算の何を重く見るかが違い、そこから導かれることも変わります。
Ⅰ説(承認説):予算を、国会が政府の財政計画を承認する意思表示とみます。予算は国会と政府の間でだけ効力を持つことになり、法規範としての性質は認めません。
Ⅱ説(予算法形式説):予算に法規範としての性質を認めつつ、憲法が予算を法律と違う形で扱っていること(作成して提出できるのは内閣だけであること、議決の手続が違うこと、効力が1会計年度に限られることなど)を重く見て、法律とは別の国法の形式だとします。そのため、法律についての決まりは、当然には予算に及びません。
Ⅲ説(予算法律説):財政は国会が決めるという考え方を徹底し、予算を法律そのものとみます。そのため、予算にも法律と同じ扱いが及ぶと考えます。
1.誤答
Ⅰ説及びⅡ説は、予算の法規範性を否定する。
要点Ⅰ説は予算の法規範性を否定するが、Ⅱ説は肯定する。
妥当でない。Ⅰ説は、予算を国会と政府の間の意思表示とみるので、予算の法規範性を否定します。しかし、Ⅱ説は、予算を法律とは異なる国法の一形式とみるので、予算の法規範性を肯定します。
「国法の一形式」とは、国の法の一つの種類という意味です。Ⅱ説は、予算が国会の議決で成立し、政府の財政の活動を法的に拘束する点を重く見て、法律と並ぶ別の種類の法だとします。
2.誤答
Ⅱ説によれば、予算が成立した場合に、署名と公布を必ず要する。
要点Ⅱ説では、予算に署名と公布が必ず要るとはいえない。
妥当でない。法律には、主任の国務大臣の署名と内閣総理大臣の連署が要り(憲法74条)、天皇が公布します(7条1号)。Ⅱ説は、予算を法律とは異なる法形式とみるので、法律についての署名や公布の規定は、予算には当然には及ばないと考えます。
74条と7条1号が挙げるのは法律・政令・条約などで、予算は挙げられていません。署名と公布を必ず要するとなるのは、予算を法律そのものとみるⅢ説です。
【日本国憲法 第74条】
第七十四条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
【日本国憲法 第7条】
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
(略)
3.正答
Ⅱ説は、予算について、衆議院の先議権が認められていることを根拠の一つとする。
要点衆議院の先議権は、Ⅱ説の根拠の一つとなる。
妥当である。予算は、先に衆議院に提出しなければならず(憲法60条1項)、議決についても、法律案より強い衆議院の優越があります(同条2項)。Ⅱ説は、このように予算の議決の手続が法律と異なることを、予算が法律とは別の法形式であることの根拠の一つとしています。
法律案は、どちらの議院に先に提出してもよく、両議院の議決が異なれば、衆議院の再可決には出席議員の3分の2以上の多数が要ります。憲法が予算に法律と違う手続を用意していることが、Ⅱ説の出発点です。
【日本国憲法 第60条】
第六十条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
4.誤答
Ⅲ説によれば、国会に予算修正権は認められない。
要点Ⅲ説では、国会は法律案と同じように予算を修正できる。
妥当でない。Ⅲ説は、予算を法律そのものとみるので、国会は、法律案と同じように予算を審議し、減額だけでなく増額の修正もできると考えます。国会の予算修正権を否定するものではありません。
Ⅲ説の出発点は、財政は国会が決めるという考え方の徹底です。国会は唯一の立法機関(41条)として法律案を自由に修正できるので、予算が法律なら、その修正にも法律案と同じく制約はないことになります。
【日本国憲法 第41条】
第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
5.誤答
法律にも期間が制限されたいわゆる限時法があるということは、Ⅲ説に対する批判となる。
要点限時法があることは、Ⅲ説への批判に対する反論になる。
妥当でない。Ⅲ説に対しては、予算は1会計年度に限って効力を持ち、期限なく効力を持つ法律とは性質が違う、という批判があります。限時法(効力の期間を限った法律)があることは、法律にも期間の限られたものがあるとして、この批判に反論する根拠になります。Ⅲ説に対する批判ではありません。
ある事実が説への批判になるか反論になるかは、その事実が、説の出発点(予算は法律そのもの)と食い違う予算の性質を示すのか、その食い違いを埋めるのかで判断します。限時法は、法律と予算の違いを埋める事実です。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.15
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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