2026年 国家一般職 問題14
憲法裁判所の組織・地位・権能
【No. 14】司法権に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
裁判官は、中立・公正な立場で裁判をするために、良心に従い独立して職権を行い、憲法と法律にだけ拘束されます(憲法76条3項)。判例は、この独立を守るために、裁判官には手厚い身分保障がされているとしています(最大決平10.12.1)。
例えば、裁判官を辞めさせられるのは、原則として、裁判で心身の故障のために職務を執れないと決定された場合と、公の弾劾による場合に限られ、行政機関は懲戒処分ができません(78条)。報酬も、在任中は減らせません。
他方で、裁判官を選ぶのは内閣で、最高裁判所の裁判官には国民審査もあります。通説では、司法にも民主的な統制を及ぼすための仕組みと解されています。
【最大決平10.12.1 判決理由】
このような司法権の担い手である裁判官は、中立・公正な立場に立つ者でなければならず、その良心に従い独立してその職権を行い、憲法と法律にのみ拘束されるものとされ(憲法七六条三項)、また、その独立を保障するため、裁判官には手厚い身分保障がされている(憲法七八条ないし八○条)のである。
【日本国憲法 第76条第3項】
すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
【日本国憲法 第78条】
第七十八条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
1.誤答
憲法は裁判官及び裁判所職員の職権の独立の原則を宣言していることから、最高裁判所が下級裁判所及び下級裁判所の職員を監督することは認められていない。
要点最高裁判所は、下級裁判所とその職員を監督する。
妥当でない。憲法が職権の独立を定めているのは、裁判官についてです(憲法76条3項)。裁判所の職員の職権の独立を定めた規定はありません。また、最高裁判所は、司法行政の監督権により、下級裁判所及びその職員を監督します(裁判所法80条1号)。
監督権は、裁判所の事務や人の規律などの司法行政について行うもので、裁判官の裁判権に影響を及ぼし、又はこれを制限することはありません(同法81条)。職権の独立が守るのは個々の裁判の中身なので、司法行政の監督とは両立します。
【裁判所法 第80条】
(司法行政の監督)
第八十条 司法行政の監督権は、左の各号の定めるところによりこれを行う。
一 最高裁判所は、最高裁判所の職員並びに下級裁判所及びその職員を監督する。
(略)
【裁判所法 第81条】
(監督権と裁判権との関係)
第八十一条 前条の監督権は、裁判官の裁判権に影響を及ぼし、又はこれを制限することはない。
2.正答
下級裁判所の裁判官は、裁判により心身の故障のために職務を行うことができないと決定された場合を除くと、公の弾劾によらなければ罷免されない。また、弾劾による罷免は、職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったときと、その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったときの二つの場合に限定されている。
要点下級裁判所の裁判官の罷免は分限裁判か弾劾により、弾劾の事由は2つに限られる。
妥当である。下級裁判所の裁判官を罷免できるのは、裁判で心身の故障のために職務を執れないと決定された場合と、公の弾劾による場合だけです(憲法78条)。弾劾による罷免の事由は、裁判官弾劾法2条の2つの場合に限られます。
裁判官の独立を守るため、裁判官の意思に反して身分を失わせる道を、裁判と公の弾劾に限っています。最高裁判所の裁判官には、これに加えて国民審査がありますが、下級裁判所の裁判官にはありません。
【裁判官弾劾法 第2条】
(弾劾による罷免の事由)
第二条 弾劾により裁判官を罷免するのは、左の場合とする。
一 職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき。
二 その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき。
3.誤答
下級裁判所の長たる裁判官は内閣によって任命されるのに対し、長たる裁判官以外の下級裁判所の裁判官は最高裁判所によって任命される。
要点下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣が任命する。
妥当でない。下級裁判所の裁判官は、長たる裁判官かどうかにかかわらず、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命します(憲法80条1項)。最高裁判所が任命するのではありません。
通説では、内閣が任命することで裁判官の選任に民主的な統制を及ぼしつつ、選べる人を最高裁判所の名簿に載った人に限ることで、司法の独立を守っていると解されています。
【日本国憲法 第80条第1項】
第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
4.誤答
最高裁判所は大法廷と小法廷のどちらで裁判をするかを決定することができ、最高裁判所の判例を変更するときは、法律の規定はないものの、慣例として大法廷で裁判をすることとなっている。
要点判例を変更する裁判は、法律の定めにより、大法廷で行わなければならない。
妥当でない。事件を大法廷と小法廷のどちらで扱うかは、原則として最高裁判所が定めます。ただし、憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき(判例の変更)は、小法廷では裁判ができません(裁判所法10条3号)。慣例ではなく、法律の定めです。
10条が小法廷で裁判できないとしているのは、法律などが憲法に適合するかを判断するときや、判例を変えるときなど、影響の大きい判断です。こうした判断は、最高裁判所の裁判官全員で構成する大法廷で行います。
【裁判所法 第10条】
(大法廷及び小法廷の審判)
第十条 事件を大法廷又は小法廷のいずれで取り扱うかについては、最高裁判所の定めるところによる。但し、左の場合においては、小法廷では裁判をすることができない。
一 当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき。(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く。)
二 前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき。
三 憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき。
5.誤答
裁判の公開が制度として保障されていることに伴い、各人が裁判所に対して裁判を傍聴することを権利として要求することは認められるものの、傍聴人が法廷においてメモを取ることは権利として保障されていないとするのが判例である。
要点傍聴は権利として要求できないが、メモを取ることは故なく妨げられない。
妥当でない。判例は、傍聴することを権利として要求することはできないとし、他方で、傍聴人が法廷でメモを取ることは、見聞する裁判を認識、記憶するためにされる限り、故なく妨げられてはならないとしました(最大判平元.3.8)。本肢は、二つの評価が逆です。
判例は、裁判の公開は、裁判が公正に行われることを制度として保障するもので、各人が傍聴できるのは、その制度に伴う結果だとしました。メモは、さまざまな情報に接し、これを摂取することを補助する行為として、表現の自由の規定の精神に照らして尊重されるとしたものです。
【最大判平元.3.8 判決理由】
裁判の公開が制度として保障されていることに伴い、各人は、裁判を傍聴することができることとなるが、右規定は、各人が裁判所に対して傍聴することを権利として要求できることまでを認めたものでないことはもとより、傍聴人に対して法廷においてメモを取ることを権利として保障しているものでないことも、いうまでもないところである。
【最大判平元.3.8 裁判要旨】
二 法廷で傍聴人がメモを取ることは、その見聞する裁判を認識記憶するためにされるものである限り、憲法二一条一項の精神に照らし尊重に値し、故なく妨げられてはならない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.14
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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