2026年 国家一般職 問題13
憲法参政・社会権の総合
【No. 13】社会権等に関する次の記述のうち、判例に照らし、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.誤答
憲法第25条第1項は、全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言するにとどまらず、具体的請求権を直接個々の国民に保障する規定と解すべきであり、同項を直接の根拠として裁判所に救済を求めることができる。
要点憲法25条1項は、直接個々の国民に具体的権利を与えたものではない。
妥当でない。朝日訴訟の判例は、憲法25条1項は国の責務を宣言したにとどまり、直接個々の国民に具体的権利を与えたものではないとしました(最大判昭42.5.24)。具体的な権利は、生活保護法によって初めて与えられるとしています。
判例は、「健康で文化的な最低限度の生活」は抽象的で相対的な概念で、その内容は文化の発達や国民経済の進展に伴って変わり、多くの不確定な要素を総合して初めて決まるものだとしました。そのため、裁判所に救済を求めるには、法律に基づく具体的な権利が必要になります。
【最大判昭42.5.24 判決理由】
この規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない(昭和二三年(れ)第二〇五号、同年九月二九日大法廷判決、刑集二巻一〇号一二三五頁参照)。具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によつて、はじめて与えられているというべきである。
【日本国憲法 第25条第1項】
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2.誤答
憲法第23条で保障される学問の自由には教授の自由も含まれるが、教育を受ける権利が老若問わず認められることとの関係上、大学教育の場のみならず普通教育の場でも、教師には完全な教授の自由が認められると解すべきである。
要点普通教育の場では、教師に完全な教授の自由は認められない。
妥当でない。学問の自由(憲法23条)に教授の自由が含まれることはよいのですが、判例は、普通教育では、教師に一定の範囲の教授の自由は保障されるとしつつ、完全な教授の自由を認めることは許されないとしました(最大判昭51.5.21。旭川学力テスト事件)。
大学の学生は一応教授内容を批判する能力を備えていますが、普通教育の児童生徒にはその能力がなく、教師の影響力も強く、学校や教師を選ぶ余地も乏しいうえ、全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があります。教わる側の状況が違うので、教授の自由の範囲も違う、という考え方です。
【最大判昭51.5.21 判決理由】
しかし、大学教育の場合には、学生が一応教授内容を批判する能力を備えていると考えられるのに対し、普通教育においては、児童生徒にこのような能力がなく、教師が児童生徒に対して強い影響力、支配力を有することを考え、また、普通教育においては、子どもの側に学校や教師を選択する余地が乏しく、教育の機会均等をはかる上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があること等に思いをいたすときは、普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることは、とうてい許されないところといわなければならない。
【日本国憲法 第23条】
第二十三条 学問の自由は、これを保障する。
3.誤答
憲法第26条第2項後段は、義務教育を無償とすることを定めているが、この「無償」の範囲については、授業料のみならず、教材費、学用品費など、修学に必要な一切の費用を含むと解するのが相当である。
要点義務教育の「無償」とは、授業料を徴収しないことをいう。
妥当でない。判例は、憲法26条2項後段の「無償」とは授業料を徴収しないという意味で、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用まで無償とすることを定めたものではないとしました(最大判昭39.2.26)。
判例は、就学させる義務は、普通教育が国家に必要だからだけでなく、親がもともと持つ子どもを教育する責務を果たさせるためでもあるので、費用のすべてを国が負担すべきだとはいえないとしています。教科書代などの負担の軽減は立法政策の問題とされました(いまは法律で教科書が無償で配られています)。
【最大判昭39.2.26 判決理由】
けだし、憲法がかように保護者に子女を就学せしむべき義務を課しているのは、単に普通教育が民主国家の存立、繁栄のため必要であるという国家的要請だけによるものではなくして、それがまた子女の人格の完成に必要欠くべからざるものであるということから、親の本来有している子女を教育すべき責務を完うせしめんとする趣旨に出たものでもあるから、義務教育に要する一切の費用は、当然に国がこれを負担しなければならないものとはいえないからである。 憲法二六条二項後段の「義務教育は、これを無償とする。」という意義は、国が義務教育を提供するにつき有償としないこと、換言すれば、子女の保護者に対しその子女に普通教育を受けさせるにつき、その対価を徴収しないことを定めたものであり、教育提供に対する対価とは授業料を意味するものと認められるから、同条項の無償とは授業料不徴収の意味と解するのが相当である。
【日本国憲法 第26条第2項】
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
4.正答
いわゆるユニオン・ショップ協定のうち、同協定を締結している労働組合以外の他の労働組合に加入している労働者等について使用者の解雇義務を定める部分は、労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害することから、これを無効と解すべきである。
要点ユニオン・ショップ協定は、他の組合の組合員などに関する部分では無効である。
妥当である。判例は、ユニオン・ショップ協定のうち、締結した組合以外の労働組合に入っている者などについて使用者の解雇義務を定める部分は、民法90条により無効だとしました(最判平元.12.14)。
ユニオン・ショップ協定は、組合員でなくなった労働者を使用者に解雇させることで、間接的に組合の組織を強める仕組みです。しかし、労働者には自ら団結権を行使するために組合を選ぶ自由があり、協定を結んでいない組合の団結権も等しく尊重されるべきなので、解雇の威嚇で特定の組合への加入を強制することはできない、とされました。
【最判平元.12.14 判決理由】
ユニオン・ショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化を図ろうとするものであるが、他方、労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合(以下「締結組合」という。)の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである。したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法九〇条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法二八条参照)。
【民法 第90条】
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
5.誤答
労働者が工場施設等を占拠し使用者の指揮命令を排除して自ら生産活動などの業務を行う、いわゆる生産管理は、使用者に対する財産権の侵害を生ずるが、それはストライキも同様であることに鑑みると、生産管理もストライキと同様に正当な争議行為として違法性が阻却されると解すべきである。
要点生産管理は、正当な争議行為とは認められない。
妥当でない。判例は、生産管理を正当な争議行為と認めませんでした(最大判昭25.11.15。山田鋼業事件)。ストライキも財産権の侵害を生じる点は同じでも、両者の違いは無視できないとしています。
判例は、わが国の法秩序は私有財産制度を基幹としており、企業の経営や生産の指揮命令は使用者側の権限に属するとしました。ストライキは労働力を提供しないこと(債務の不履行)にとどまりますが、生産管理は、権利者の意思を排除して、権利のない者が企業の経営そのものを行うものなので、私有財産の基幹を揺るがす争議手段として許されないとされました。
【最大判昭25.11.15 判決理由】
しかしわが国現行の法律秩序は私有財産制度を基幹として成り立つており、企業の利益と損失とは資本家に帰する。従つて企業の経営、生産行程の指揮命令は、資本家又はその代理人たる経営担当者の権限に属する。勞働者が所論のように企業者と並んで企業の担当者であるとしても、その故に当然に勞働者が企業の使用収益権を有するのでもなく、経営権に対する権限を有するのでもない。従つて労働者側が企業者側の私有財産の基幹を搖がすような争議手段は許されない。なるほど同盟罷業も財産権の侵害を生ずるけれども、それは勞働力の給付が債務不履行となるに過ぎない。然るに本件のようないわゆる生産管理に於ては、企業経営の権能を権利者の意思を排除して非権利者が行うのである。それ故に同盟罷業も生産管理も財産権の侵害である点において同様であるからとて、その相違点を無視するわけにはゆかない。前者において違法性が阻却されるからとて、後者においてもそうだという理由はない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.13
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
- このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
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- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
- 年度や分野を選んで、続けて解けます。
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