2026年 国家一般職 問題12
憲法思想・良心の自由
【No. 12】思想及び良心の自由に関するア~オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
思想・良心の自由は、心の中で何を考え、何を信じるかの自由です。判例は、特定の思想を持つことの強制や禁止、思想の有無の告白の強要に当たるかで、思想・良心の自由を直接に制約するかを判断しています。外に現れた行為を規制することは、その行為の基礎となった思想そのものを処罰することではありません。
もっとも、ある行為を求められることが、その人の思想・良心に由来する行動と食い違う場合には、間接的な制約となる面があります。その場合は、目的・内容と制約の態様を比べて、制約を許容し得る程度の必要性と合理性があるかで判断されます(最判平23.5.30)。
【最判平23.5.30 判決理由】
したがって,このような間接的な制約が許容されるか否かは,職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量して,当該職務命令に上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当である。
【日本国憲法 第19条】
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
ア.正答
破壊活動防止法第39条及び第40条のせん動罪は、政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもって、各条所定の犯罪のせん動をすることを処罰するものであるところ、せん動として外形に現れた客観的な行為を処罰するものであって、行為の基礎となった思想や信条を処罰するものではないから、憲法第19条違反に当たらない。
要点破壊活動防止法のせん動罪は、客観的な行為を処罰するもので憲法19条に違反しない。
妥当である。破壊活動防止法のせん動罪は、せん動として外形に現れた客観的な行為を処罰するもので、行為の基礎となった思想、信条を処罰するものではないので、憲法19条に違反しません(最判平2.9.28)。
思想・良心の自由が守るのは、心の中の思想や信条です。判例は、せん動罪が処罰するのは、政治目的をもって、人に犯罪を実行する決意を生じさせるような刺激を与える外部の行為で、そのことは条文自体から明らかだとしています。
【最判平2.9.28 判決理由】
…破壊活動防止法三九条及び四〇条のせん動罪は、政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的(以下「政治目的」という。)をもって、各条所定の犯罪のせん動をすることを処罰するものであるが、せん動として外形に現れた客観的な行為を処罰の対象とするものであって、行為の基礎となった思想、信条を処罰するものでないことは、各条の規定自体から明らかであるから、…
イ.正答
学校行事における国歌の起立斉唱は、一般的・客観的にみて儀礼的行為であり、教員にこれを命ずる職務命令は、特定の思想を持つことを強制したり、これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく、また、特定の思想の有無について告白することを強要するものでもないから、当該職務命令は、個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものではない。
要点起立斉唱を命ずる職務命令は、思想及び良心の自由を直ちに制約するものではない。
妥当である。起立斉唱行為は、一般的、客観的に見て、式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を持つので、これを命ずる職務命令は、個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものとは認められません(最判平23.5.30)。
判例は、起立斉唱行為が、教員の歴史観や世界観の否定と不可分に結び付かず、外部からも特定の思想の表明とは認識されにくいことを重く見ました。ただし、敬意の表明の要素を含むので間接的な制約となる面はあり、必要性と合理性で判断するとしています。
【最判平23.5.30 判決理由】
したがって,上記の起立斉唱行為は,その性質の点から見て,上告人の有する歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結び付くものとはいえず,上告人に対して上記の起立斉唱行為を求める本件職務命令は,上記の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできない。また,上記の起立斉唱行為は,その外部からの認識という点から見ても,特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であり,職務上の命令に従ってこのような行為が行われる場合には,上記のように評価することは一層困難であるといえるのであって,本件職務命令は,特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものということもできない。そうすると,本件職務命令は,これらの観点において,個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできないというべきである。
ウ.誤答
企業者は、労働者が特定の思想、信条を有していることを理由にその雇入れを拒むことはできるが、企業者が従業員として労働者を採用するに当たり、その者の思想、信条を調査し、その者からこれに関連する事項についての申告を求めることは、思想、信条の自由を侵害する行為として当然に違法となる。
要点思想・信条を理由とする雇入れ拒否も、採用時の思想調査も、違法とはいえない。
妥当でない。前半(思想、信条を理由に雇入れを拒んでも当然には違法でない)は判例のとおりです。しかし判例は、そうである以上、採否の決定にあたり思想、信条を調査し、関連する事項の申告を求めることも、違法とはいえないとしました(最大判昭48.12.12)。
判例は、憲法が経済活動の自由も保障していることから、企業者には契約締結の自由があり、特別の制限がない限り誰を雇うかを自由に決められるとしました。思想・良心の自由などの規定は、私人どうしの関係に直接適用されないとしています。
【最大判昭48.12.12 判決理由】
ところで、憲法は、思想、信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に、他方、二二条、二九条等において、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ、企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであつて、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないのである。
【最大判昭48.12.12 裁判要旨】
一、憲法一四条や一九条の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではない。
四、労働者を雇い入れようとする企業者が、その採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることは、違法とはいえない。
エ.誤答
司法書士会が震災により被災した他県の司法書士会に復興支援拠出金を寄付することは、司法書士会の目的の範囲に含まれるが、強制加入団体である司法書士会がその拠出金の調達のために会員に負担を強制することは、会員の政治的又は宗教的立場や思想、信条の自由を侵害するものとして許されない。
要点復興支援拠出金のための負担金の徴収は、会員の思想信条の自由を害さない。
妥当でない。強制加入団体でも、復興支援拠出金のための負担金の徴収は会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく、総会決議の効力は会員に及びます(最判平14.4.25)。
判例は、拠出金が被災地の司法書士会の公的機能の回復を支援するもので、会の目的の範囲内だとしたうえで、調達の方法も特段の事情がない限り多数決で決められるとしました。負担金も1件50円を3年間と、社会通念上過大な負担ではないことを重く見ています。
【最判平14.4.25 判決理由】
そうすると,被上告人は,本件拠出金の調達方法についても,それが公序良俗に反するなど会員の協力義務を否定すべき特段の事情がある場合を除き,多数決原理に基づき自ら決定することができるものというべきである。これを本件についてみると,被上告人がいわゆる強制加入団体であること(同法19条)を考慮しても,本件負担金の徴収は,会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく,また,本件負担金の額も,登記申請事件1件につき,その平均報酬約2万1000円の0.2%強に当たる50円であり,これを3年間の範囲で徴収するというものであって,会員に社会通念上過大な負担を課するものではないのであるから,本件負担金の徴収について,公序良俗に反するなど会員の協力義務を否定すべき特段の事情があるとは認められない。
オ.誤答
裁判所が、名誉毀損の加害者に対して、被害者の名誉を回復するのに適当な処分として謝罪広告を新聞紙に掲載するよう命ずることは、その謝罪広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであったとしても、加害者の意思決定の自由ないし良心の自由を不当に制限するものとして許されない。
要点単に真相を告白し陳謝の意を表明する程度の謝罪広告の強制は、合憲である。
妥当でない。謝罪広告の内容が、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度なら、掲載を命ずる判決は、加害者の倫理的な意思、良心の自由を侵害しません(最大判昭31.7.4)。
判例は、本件の広告が、公表した事実が虚偽で不当だったと発表させるにとどまり、屈辱的・苦役的な労苦を科すものではないことを重く見ました。一方で、内容によっては、強制が良心の自由を不当に制限し、強制執行に適さない場合もあり得るとしています。
【最大判昭31.7.4 判決理由】
尤も謝罪広告を命ずる判決にもその内容上、これを新聞紙に掲載することが謝罪者の意思決定に委ねるを相当とし、これを命ずる場合の執行も債務者の意思のみに係る不代替作為として民訴七三四条に基き間接強制によるを相当とするものもあるべく、時にはこれを強制することが債務者の人格を無視し著しくその名誉を毀損し意思決定の自由乃至良心の自由を不当に制限することとなり、いわゆる強制執行に適さない場合に該当することもありうるであろうけれど、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のものにあつては、これが強制執行も代替作為として民訴七三三条の手続によることを得るものといわなければならない。
【最大判昭31.7.4 判決理由】
されば少くともこの種の謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを命ずる原判決は、上告人に屈辱的若くは苦役的労苦を科し、又は上告人の有する倫理的な意思、良心の自由を侵害することを要求するものとは解せられないし、また民法七二三条にいわゆる適当な処分というべきであるから所論は採用できない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和8年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.12
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
読んで分かったら、次は解いて確かめませんか
解説を読んで分かったつもりでも、自分で解くと迷うことがあります。読み直すより、解いて思い出すほうが記憶に残りやすいとされています。
- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
- 年度や分野を選んで、続けて解けます。
登録しなくても、すぐ解き始められます。