2025年 国家総合職 問題9
行政法行政行為の効力
【No. 9】行政行為に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.誤答
児童福祉施設として設置された児童遊園から約130メートル離れた場所で個室付浴場業を営んだとして、風俗営業等取締法(当時)違反の事実で起訴された者が、当該児童福祉施設の設置認可処分の違法性を理由として無罪を主張することは、当該設置認可処分に係る取消訴訟の排他的管轄に抵触するため、認められない。
要点営業規制を主な目的とする児童遊園の設置認可は、営業を規制する効力を持たない。
妥当でない。判例は、個室付浴場の営業を規制することを主な動機・目的とした児童遊園の設置認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、営業を規制する効力を持たないとして、被告人(会社)を無罪としました(最判昭53.6.16)。刑事事件の中で処分の違法を主張することは、取消訴訟の排他的管轄に触れるとして退けられていません。
刑事事件では、処分が適法・有効であることが犯罪の成立の前提になります。刑罰を科すかどうかを決める裁判所が、その前提を自ら判断できないのは不合理なので、通説でも、刑事事件で処分の違法を主張するのに、先に取消訴訟を経る必要はないと解されています。
【最判昭53.6.16 判決理由】
本来、児童遊園は、児童に健全な遊びを与えてその健康を増進し、情操をゆたかにすることを目的とする施設(児童福祉法四〇条参照)なのであるから、児童遊園設置の認可申請、同認可処分もその趣旨に沿つてなされるべきものであつて、前記のような、被告会社のトルコぶろ営業の規制を主たる動機、目的とするa町のb児童遊園設置の認可申請を容れた本件認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、被告会社のトルコぶろ営業に対しこれを規制しうる効力を有しないといわざるをえない…
2.誤答
冷凍倉庫を一般倉庫と誤って認定され固定資産税等を過大に賦課徴収されたとして、国家賠償請求訴訟を提起することは、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合は固定資産評価審査委員会に対する審査申出及び同委員会による審査の決定に対する取消訴訟によってのみ争うことができるとした地方税法の規定の趣旨に反し、実質的にはこの制限を潜脱するものであるため、認められない。
要点固定資産の価格の過大な決定による損害は、審査の申出を経ずに国家賠償請求できる。
妥当でない。判例は、公務員が職務上の法的義務に違背して固定資産の価格を過大に決定したときは、納税者は、地方税法の審査の申出や取消訴訟の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るとしました(最判平22.6.3)。
判例は、審査の申出と取消訴訟によってのみ争えるとする規定は、登録価格そのものの修正を求める手続についてのもので、国家賠償責任を否定する根拠にはならないと重く見ました。行政処分の違法を理由に国家賠償を求めるのに、先に処分の取消しを得る必要はないとしています。
【最判平22.6.3 判決理由】
前記のとおり,地方税法は,固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができる事項について不服がある固定資産税等の納税者は,同委員会に対する審査の申出及びその決定に対する取消しの訴えによってのみ争うことができる旨を規定するが,同規定は,固定資産課税台帳に登録された価格自体の修正を求める手続に関するものであって(435条1項参照),当該価格の決定が公務員の職務上の法的義務に違背してされた場合における国家賠償責任を否定する根拠となるものではない。原審は,国家賠償法に基づいて固定資産税等の過納金相当額に係る損害賠償請求を許容することは課税処分の公定力を実質的に否定することになり妥当ではないともいうが,行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするについては,あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではない(最高裁昭和35年(オ)第248号同36年4月21日第二小法廷判決・民集15巻4号850頁参照)。このことは,当該行政処分が金銭を納付させることを直接の目的としており,その違法を理由とする国家賠償請求を認容したとすれば,結果的に当該行政処分を取り消した場合と同様の経済的効果が得られるという場合であっても異ならないというべきである。そして,他に,違法な固定資産の価格の決定等によって損害を受けた納税者が国家賠償請求を行うことを否定する根拠となる規定等は見いだし難い。したがって,たとい固定資産の価格の決定及びこれに基づく固定資産税等の賦課決定に無効事由が認められない場合であっても,公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは,これによって損害を被った当該納税者は,地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく,国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。
3.誤答
行政行為の不可争力は、その名宛人その他関係人が当該行政行為の効果を不服申立て・取消訴訟手続で争うことを遮断するものであり、法律関係の早期確定を目的としているから、争訟提起期間経過後は、処分庁が自らなした行政行為を見直してそれを取り消したり、撤回したりすることはできない。
要点不可争力は相手方を拘束するもので、処分庁は期間後も職権で取り消せる。
妥当でない。不可争力(出訴期間などが過ぎると、相手方などから処分の効力を争えなくなる効力)は、相手方の側から争うことを遮断するものです。処分庁が自ら違法・不当な行政行為を取り消したり、撤回したりすることまで妨げるものではありません。
争訟の期間を限るのは、私人からの争いを打ち切って法律関係を早く安定させるためです。行政庁が自ら違法を正すことは、法律による行政の原理にかなうもので、期間の経過で妨げる理由がないと解されています(通説)。
4.誤答
許認可等の法効果について法律で規定された事項以外の内容を付加したものを附款という。このうち、相手方に特定の義務を命ずる附款である「負担」については、その履行は当該行政行為の効力発生の条件ではないため、原則として、負担を付すためには法律上の根拠は不要であるし、当該行政行為をすることについて行政庁に裁量が認められない場合であっても負担を付すことができる。
要点負担などの附款は、法律が認めるか、行政庁に裁量がある場合に付すことができる。
妥当でない。附款は、法律が認めている場合か、行政行為について行政庁に裁量が認められる場合に、その裁量の範囲内で付すことができると解されています。行政庁に裁量が認められない場合でも負担を付すことができるとする部分が誤りです。
裁量のない行政行為は、要件を満たせば法律どおりにしなければならないので、法律にない義務を負担として加えると、法律が予定していない不利益を相手方に課すことになるからです(通説)。
5.正答
県農地委員会が、市農地委員会が定めた農地買収計画について農地の所有者が申し立てた異議の却下決定に対し、当該所有者の主張を認める訴願裁決をした場合、その裁決は県農地委員会が実質的には裁判を行っているものであり、他の一般行政処分とは異なるから、特別の規定がない限り、県農地委員会は自ら当該裁決を取り消すことはできない。
要点訴願裁決は実質的に裁判なので、特別の規定がない限り裁決庁が自ら取り消せない。
妥当である。判例は、農地買収計画についての訴願裁決は行政処分ですが、実質的には法律上の争訟を裁判するものなので、他の一般行政処分とは違い、特別の規定がない限り裁決庁自ら取り消すことはできないとしました(最判昭29.1.21)。この効力を不可変更力といいます。
争いを裁断する行為を裁断した機関が後から自由に覆せると、争いが終わらず、裁断の意味がなくなるからです。
【最判昭29.1.21 判決理由】
この裁決が行政処分であることは言うまでもないが、実質的に見ればその本質は法律上の争訟を裁判するものである。憲法七六条二項後段によれば、「行政機関は、終審として裁判を行うことができない」のであつて、終審としては、裁判所が裁判を行うが、行政機関をして前審として裁判を行わしめることは、何等差支えないのである。本件裁決のごときは、行政機関である上告人が実質的には裁判を行つているのであるが、行政機関がするのであるから行政処分に属するわけである。かかる性質を有する裁決は、他の一般行政処分とは異り、特別の規定がない限り、原判決のいうように裁決庁自らにおいて取消すことはできないと解するを相当とする。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.9
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
- このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
読んで分かったら、次は解いて確かめませんか
解説を読んで分かったつもりでも、自分で解くと迷うことがあります。読み直すより、解いて思い出すほうが記憶に残りやすいとされています。
- 国家一般職・国家総合職の憲法・民法・行政法を、2023〜2026年の173問から解けます。
- 試験通りの5択でも、選択肢を1つずつ判断する形式でも解けます。
- 年度や分野を選んで、続けて解けます。
登録しなくても、すぐ解き始められます。