2025年 国家総合職 問題8
行政法行政上の法律関係
【No. 8】行政上の法律関係に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
地方公共団体が開設している村道については、村民は地方公共団体が村道を開設していることの反射的効果として村道を使用することができる利益を有するにすぎず、固有の権利を有するものではないから、村民の村道使用の利益の享受が第三者の行為によって妨害された場合であっても、村民はその第三者に対して妨害排除を請求することはできない。
要点村民は村道の使用の自由権を持ち、継続的な妨害の排除を請求できる。
妥当でない。判例は、村民各自は村道について、他の村民の利益や自由を侵害しない程度で、生活に必須の行動を自由に行える使用の自由権を持ち、これを継続的に妨害されたときは妨害の排除を請求できるとしました(最判昭39.1.16)。反射的利益にすぎず請求できないとする部分は、この事件の原審の考え方です。
判例は、村道の通行の自由は公法関係から生じるものでも、各自が日常生活で諸般の権利を行使するのに欠かせない手段なので、民法による保護を与えるべきだと重く見ました。
【最判昭39.1.16 裁判要旨】
一 村民各自は、村道に対し、他の村民の有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき使用の自由権を有する。
二 村民の右村道使用の自由権に対して継続的な妨害がなされた場合には、当該村民は、右妨害の排除を請求することができる。
イ.正答
建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする公序良俗違反の請負契約に基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事は、当該追加変更工事が区役所の是正指示や近隣住民からの苦情等を受けて別途合意の上施工され、その中には当該本工事の施工によって既に生じていた違法建築部分を是正する工事も含まれていたという事情の下では、当該追加変更工事の中に当該本工事で計画されていた違法建築部分につきその違法を是正することなくこれを一部変更する部分があるのであれば、その部分は別の評価を受けることになるが、そうでなければ、その施工の合意が公序良俗に反するものということはできない。
要点違法建築の請負でも、違法を是正する追加変更工事の合意は公序良俗に反しない。
妥当である。判例は、本工事の請負契約は公序良俗に反し無効としつつ、区役所の是正指示や近隣住民の苦情を受けて別途合意された追加変更工事は、違法を是正する工事も含むなどの事情の下では、本工事とは別に評価され、その施工の合意は公序良俗に反しないとしました(最判平23.12.16)。
追加変更工事が本工事の違法をそのまま実現するものでなければ、その合意まで無効にする理由はないからです。判例は、追加変更工事の中に、本工事で計画された違法建築部分を是正しないまま一部変更する部分があれば、その部分は別の評価を受けるとしています。
【最判平23.12.16 裁判要旨】
2 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする公序良俗違反の請負契約に基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事は,同工事が区役所の是正指示や近隣住民からの苦情など様々な事情を受けて別途合意の上施工されたものであり,その中には上記本工事の施工によって既に生じていた違法建築部分を是正する工事も含まれていたという事情の下では,上記追加変更工事の中に上記本工事で計画されていた違法建築部分につきその違法を是正することなくこれを一部変更する部分があるのであれば,その部分は別の評価を受けることになるが,そうでなければ,その施工の合意が公序良俗に反するものということはできない。
ウ.正答
公水使用権は、公共用物である公水の上に存する権利であることに鑑み、その使用目的を満たすために必要な限度の流水を使用し得る権利にすぎないと解され、当該使用目的を満たすために必要な限度を超えて他人による流水の使用を排斥する権限を含むものではないというべきであるから、土地改良区は、河川法上の許可に基づいてかんがい目的で河川から水路に取水した水について、当該目的を満たすために必要な限度で排他的に使用する権利を有するが、直ちに第三者に対し当該水路への排水を禁止することはできない。
要点公水使用権者でも、直ちに第三者に水路への排水を禁止することはできない。
妥当である。判例は、公水使用権は使用目的を満たすのに必要な限度の流水を使用し得る権利にすぎず、それを超えて他人による流水の使用を排斥する権限を含まないので、土地改良区は直ちに第三者に水路への排水を禁止することはできないとしました(最判令元.7.18)。
公水は公共用物で、本来は誰もが一定の範囲で利用できるものだからです。許可を受けた者にも、その目的に必要な範囲でしか排他的な権利を認めていません。
【最判令元.7.18 判決理由】
公水使用権は,公共用物である公水の上に存する権利であることに鑑み,その使用目的を満たすために必要な限度の流水を使用し得る権利にすぎないと解され(最高裁昭和36年(オ)第62号同37年4月10日第三小法廷判決・民集16巻4号699頁参照),当該使用目的を満たすために必要な限度を超えて他人による流水の使用を排斥する権限を含むものではないというべきである。そうすると,被上告人は,本件水路に被上告人が河川法23条の許可に基づいてかんがいの目的で取水した水が流れていることから,その水について当該目的を満たすために必要な限度で排他的に使用する権利を有するとはいえるものの,直ちに第三者に対し本件水路への排水を禁止することができるとはいえない。
エ.誤答
国税滞納処分による差押えについては、民法第177条の適用があるものと解すべきであるが、国が国税滞納者に対する滞納処分として登記簿上滞納者名義の不動産を差し押さえた場合において、差押えの数年前に当該不動産の譲受人から移転登記の未経由にかかわらず当該不動産がその所有に属する旨の財産申告を受け、これを前提として財産税を徴収した事実があるときは、国は、当該不動産の登記と異なる物権変動の実質関係を承認して財産税を徴収しており、当該事実をもって登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められることから、登記の欠缺につき正当の利益を有する第三者には当たらない。
要点財産税を徴収した事実だけでは、国が登記の欠缺を主張できない者とはならない。
妥当でない。判例は、国が差押えの約3年半前に譲受人から財産申告を受けて財産税を徴収した事実があっても、それだけでは、国は登記の欠缺(登記がないこと)を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとはいえないとしました(最判昭31.4.24)。財産税を徴収した事実だけで信義に反するとする部分が誤りです。前半の、滞納処分による差押えにも民法177条が適用されるとする部分は、そのとおりです。
判例は、登記の欠缺を主張することが許されないのは、それが信義に反すると認められる事由がある場合に限るとしました。税務署が財産税の申告を受理したことは、所有者として扱われると強く期待するのがもっともと言えるほどの事情ではない、という判断です。
【最判昭31.4.24 裁判要旨】
二 登記の欠缺を主張する第三者がこれを主張するにつき正当の利益を有しない場合とは、当該第三者に、不動産登記法第四条第五条により登記の欠缺を主張することの許されない事由がある場合、その他これに類するような、登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合に限るものと解すべきである。
三 国が国税滞納者に対する滞納処分として登記簿上滞納者名義の不動産を差し押えた場合において、差押の約三年六箇月前に右不動産の譲受人から移転登記の未経由にかかわらず該不動産がその所有に属する旨の財産申告を受け、これを前提として財産税を徴収した事実があつても、それだけでは、国は、登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者にあたらないとはいえない。
【民法 第177条】
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.8
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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