2025年 国家総合職 問題7
憲法条例と法令
【No. 7】条例に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
憲法第29条第2項は、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定しているところ、ため池の破損、決壊を招く原因となる行為を条例で禁止することは、条例が法律に準ずる法形式であることから、憲法に違反しない。
要点ため池の堤とうの使用の禁止は、財産権の行使の埒外の行為の規制で、違憲でない。
妥当でない。判例は、ため池の破損・決壊の原因となる堤とうの使用行為は、憲法や民法が保障する財産権の行使の埒外にあるので、条例で禁止・処罰しても憲法に違反しないとしました(最大判昭38.6.26)。条例が法律に準ずる法形式であることを理由にしたものではありません。
判例は、29条2項の「法律で定める」との関係を、条例の法形式ではなく、禁止される行為がそもそも保障された財産権の行使に当たらないという点で説明しました。災害を防ぐための禁止は、財産権を持つ者も当然受忍すべきだとしています。
【最大判昭38.6.26 判決理由】
すなわち、ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていないものであつて、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にあるものというべく、従つて、これらの行為を条例をもつて禁止、処罰しても憲法および法律に牴触またはこれを逸脱するものとはいえないし、また右条項に規定するような事項を、既に規定していると認むべき法令は存在していないのであるから、これを条例で定めたからといつて、違憲または違法の点は認められない。
【日本国憲法 第29条第2項】
財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
イ.誤答
条例は、地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、法律の委任により条例で刑罰を定める場合には、その委任は一般的・包括的な委任で足りる。
要点条例で刑罰を定めるには、法律の授権が相当な程度に具体的で限定されていればよい。
妥当でない。判例は、条例が国会の議決を経て制定される法律に類するものであることから、条例で刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りるとしました(最大判昭37.5.30)。一般的・包括的な委任で足りるとする部分が誤りです。
判例は、法律の授権が不特定な一般的の白紙委任であってはならないことを前提にしました。条例が公選の議員で組織する議会の議決を経る自治立法であることは、政令などへの委任より授権の具体性を緩めてよい理由で、白紙委任を許す理由ではありません。
【最大判昭37.5.30 判決理由】
しかも、条例は、法律以下の法令といつても、上述のように、公選の議員をもつて組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であつて、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもつて組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。
ウ.正答
普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。
要点条例が法令に違反するかは、趣旨・目的・内容・効果を比較して決める。
妥当である。判例は、条例が国の法令に違反するかどうかは、対象事項と規定文言を対比するだけでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、矛盾抵触があるかで決めるとしました(最大判昭50.9.10)。
文言だけを比べると、法令に規定がないことが「自由に放置する趣旨」なのか、法令と条例が重なっていても目的が違うのかといった、両者の実質的な関係を見落とすからです。
【最大判昭50.9.10 判決理由】
…条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。
【日本国憲法 第94条】
第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
エ.誤答
国の法令は、特段の定めのない限り、その規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨で制定されたと解すべきものであるから、国の法令と同一の目的で、国の法令よりも厳しい規制基準を定める条例の規定は、国の法令に違反する。
要点同じ目的でも、法令が地方の実情に応じた別段の規制を容認していれば違反しない。
妥当でない。判例は、法令と条例が同一の目的に出たものでも、国の法令が全国一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、地方の実情に応じて別段の規制を施すことを容認する趣旨と解されるときは、矛盾抵触はないとしました(最大判昭50.9.10)。国の法令は特段の定めがない限り全国一律の趣旨だとして、厳しい基準の条例は直ちに違反するとする部分が誤りです。
法令の趣旨は法令ごとに解釈して決めるもので、地域ごとに必要な規制の程度が違う事項では、国の基準を最低限とし、上乗せを認めていると読めることがあるからです。
【最大判昭50.9.10 判決理由】
…逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.7
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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