2025年 国家総合職 問題6
憲法財政
【No. 6】憲法第89条に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
89条前段は、宗教上の組織・団体のために公金を支出したり公の財産を利用させたりすることを禁じ、政教分離を財政の面から裏づけています。判例は、国家と宗教の関わり合いを一切許さないのではなく、関わり合いが、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものを禁じると解しています(最大判平22.1.20)。
限度を超えるかどうかは、行為の外形だけでなく、施設の性格、経緯、態様、一般人の評価など諸般の事情から、社会通念に照らして判断します。後段(公の支配に属しない慈善・教育・博愛の事業への支出の禁止)は、私学助成との関係で、その趣旨の捉え方が学説で分かれています。
【最大判平22.1.20 判決理由】
しかし,国家と宗教とのかかわり合いには種々の形態があり,およそ国又は地方公共団体が宗教との一切の関係を持つことが許されないというものではなく,憲法89条も,公の財産の利用提供等における宗教とのかかわり合いが,我が国の社会的,文化的諸条件に照らし,信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものと認められる場合に,これを許さないとするものと解される。
【日本国憲法 第89条】
第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
ア.誤答
憲法第89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」とは、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体のみならず、宗教と何らかの関わり合いのある行為を行っている組織ないし団体の全てを意味するものと解すべきであるとするのが判例である。
要点89条の「宗教上の組織若しくは団体」は、宗教的活動を本来の目的とする団体をいう。
妥当でない。判例は、89条の「宗教上の組織若しくは団体」とは、宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っている組織・団体のすべてを意味するものではなく、宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織・団体を指すとしました(最判平5.2.16)。
判例は、この規定の目的が、公金の支出などが特定の宗教への援助や圧迫になることを防ぐ点にあると重く見ました。宗教と少しでも関わる団体をすべて含めると、宗教と無関係な目的の団体まで公的支援から外れてしまいます。
【最判平5.2.16 判決理由】
憲法二〇条一項後段にいう「宗教団体」、憲法八九条にいう「宗教上の組織若しくは団体」とは、宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っている組織ないし団体のすべてを意味するものではなく、国家が当該組織ないし団体に対し特権を付与したり、また、当該組織ないし団体の使用、便益若しくは維持のため、公金その他の公の財産を支出し又はその利用に供したりすることが、特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になり、憲法上の政教分離原則に反すると解されるものをいうのであり、換言すると、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体を指すものと解するのが相当である。
イ.誤答
国又は地方公共団体が国公有地を無償で宗教的施設の敷地としての用に供する行為は、一般的には憲法第89条との抵触が問題となるものではないが、当該土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯にかかわらず、当該無償提供の態様、これらに対する周辺住民の評価等から、公金支出行為等における国家と宗教との関わり合いが相当とされる限度を超えると解されるときに限り、同条が禁止する公の財産の利用提供に当たるとするのが判例である。
要点公有地の無償提供の違憲性は、経緯を含む諸般の事情を考慮し総合的に判断する。
妥当でない。判例は、国公有地を無償で宗教的施設の敷地に供する行為が89条に違反するかは、施設の性格、無償で提供されるに至った経緯、無償提供の態様、一般人の評価など、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断するとしました(最大判平22.1.20)。経緯に「かかわらず」とする部分が誤りです。
判例は、明治初期以来、社寺の土地が国などに編入された施策などから、公有地の上に社寺がある事例が多く残っていることを指摘しました。こうした経緯は、一般人の目から見て特定の宗教への援助と評価されるかどうかに影響するからです。
【最大判平22.1.20 判決理由】
これらの事情のいかんは,当該利用提供行為が,一般人の目から見て特定の宗教に対する援助等と評価されるか否かに影響するものと考えられるから,政教分離原則との関係を考えるに当たっても,重要な考慮要素とされるべきものといえよう。そうすると,国公有地が無償で宗教的施設の敷地としての用に供されている状態が,前記の見地から,信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えて憲法89条に違反するか否かを判断するに当たっては,当該宗教的施設の性格,当該土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯,当該無償提供の態様,これらに対する一般人の評価等,諸般の事情を考慮し,社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解するのが相当である。
ウ.正答
知事が、県の公金から、靖国神社の行う例大祭などに玉串料・献灯料を、県護国神社の行う慰霊大祭に供物料を奉納させていたことについて、靖国神社及び県護国神社は憲法第89条にいう宗教上の組織又は団体に当たることが明らかであり、当該玉串料等を奉納したことによってもたらされる県と当該神社等との関わり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと解されるから、当該公金の支出は同条に違反するとするのが判例である。
要点県が靖国神社等に公金で玉串料等を奉納したことは、20条3項・89条に違反する。
妥当である。判例は、県が靖国神社の例大祭などに玉串料・献灯料を、県護国神社の慰霊大祭に供物料を、県の公金から奉納したことは、県と神社との関わり合いが相当とされる限度を超えるとして、憲法20条3項、89条に違反するとしました(最大判平9.4.2)。
判例は、玉串料などの奉納が、一般人から見て社会的儀礼にすぎないとは考えにくく、県が特定の宗教団体との間にだけ特別の関わり合いを持ったことになり、特定の宗教への関心を呼び起こす効果があることを重く見ました。
【最大判平9.4.2 裁判要旨】
一 愛媛県が、宗教法人D神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である例大祭に際し玉串料として九回にわたり各五〇〇〇円(合計四万五〇〇〇円)を、同みたま祭に際し献灯料として四回にわたり各七〇〇〇円又は八〇〇〇円(合計三万一〇〇〇円)を、宗教法人愛媛県E神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である慰霊大祭に際し供物料として九回にわたり各一万円(合計九万円)を、それぞれ県の公金から支出して奉納したことは、一般人がこれを社会的儀礼にすぎないものと評価しているとは考え難く、その奉納者においてもこれが宗教的意義を有する者であるという意識を持たざるを得ず、これにより県が特定の宗教団体との間にのみ意識的に特別のかかわり合いを持ったことを否定することができないのであり、これが、一般人に対して、県が当該特定の宗教団体を特別に支援しており右宗教団体が他の宗教団体とは異なる特別のものであるとの印象を与え、特定の宗教への関心を呼び起こすものといわざるを得ないなど判示の事情の下においては、憲法二〇条三項、八九条に違反する。
【日本国憲法 第20条第3項】
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
エ.誤答
憲法第89条に規定する公の支配に属しない慈善事業等への公金支出・財産供用の禁止を、私的な事業に不当な公権力の支配が及ぶことを防止するための規定と解する立場からは、一般に公の支配に属するの意味を国又は地方公共団体の一定の監督が及んでいることをもって足りるというように、緩やかに、かつ、広義に解するので、国が私立大学に対して補助金を支出することは、合憲と判断される。
要点自主性確保説は「公の支配」を厳格に解し、私学助成の合憲性に疑問が生じる。
妥当でない。本肢の「一定の監督で足りる」と緩やかに解して私学助成を合憲とする立場は、89条後段を公費の濫用を防ぐ規定と解する立場(公費濫用防止説)のものです。私的な事業に不当な公権力の支配が及ぶのを防ぐ規定と解する立場(自主性確保説)は、「公の支配」を厳格に解します。
自主性確保説は、公金を出すと公権力の干渉を招くという点から出発するので、事業の内容にまで及ぶ強い監督がある場合を「公の支配」と考えます。そのため、一般的な監督しかない私立学校への補助金は、合憲性に疑問が生じることになります。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.6
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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