2025年 国家総合職 問題30
民法親族
【No. 30】民法第826条が規定する親権者の利益相反行為に関するア~オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
利益相反行為に当たるかどうかは、親権者の動機や目的、結果として子の利益になったかどうかではなく、行為の外形から客観的に判断します(外形説)。取引の相手方からは親権者の内心が分からないので、外形で決めないと取引の安全が害されるからです。
利益相反行為に当たる場合、親権者は特別代理人の選任を請求しなければならず、選任せずにした行為は無権代理として扱われます。外形上は利益相反でない行為でも、親権者が専ら自分や第三者の利益を図るような場合は、代理権の濫用の問題として扱われます。
【民法 第826条第1項】
(利益相反行為)
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
ア.誤答
Bの親権者であるAは、Bの養育費を確保するため、A自身が金銭を借り受けるに当たり、債務の担保として、Bが所有する土地に抵当権を設定した。この場合、Aの抵当権設定行為は、利益相反行為に当たらない。
要点親権者自身の借入れのために子の不動産に抵当権を設定するのは、利益相反行為である。
妥当でない。判例は、親権者が自己の負担する貸金債務について子の所有する不動産に抵当権を設定する行為は、借受金を子の養育費に充てる意図であっても、利益相反行為に当たるとしました(最判昭37.10.2)。
外形上、親権者自身の債務のために子の財産が担保に取られ、親権者が利益を受け、子が不利益を受ける形になっているからです。
【最判昭37.10.2 裁判要旨】
親権者が自己の負担する貸金債務につき未成年の子の所有する不動産に抵当権を設定する行為は、借受金を右未成年の子の養育費に供する意図であつても、民法第八二六条にいう「利益が相反する行為」にあたる。
イ.正答
Bの親権者であるAは、Bの叔父であるCの債務の担保として、Bが所有する土地に抵当権を設定した。この場合、Aの抵当権設定行為は、利益相反行為に当たらない。
要点第三者の債務の担保に子の不動産を供するのは、利益相反行為ではない。
妥当である。親権者が子を代理して、子の所有する不動産を第三者(叔父C)の債務の担保に供する行為は、外形上、親権者と子の利益が対立するものではないので、利益相反行為に当たりません(最判平4.12.10)。
判例は、利益相反行為に当たらない行為をするかどうかは、親権者の広い裁量に委ねられているとし、子の利益を無視して自己や第三者の利益を図ることのみを目的とするなどの特段の事情があるときに限り、代理権の濫用になるとしました。代理権の濫用は、いまは民法107条で扱われます。
【最判平4.12.10 判決理由】
しかし、親権者が子を代理してする法律行為は、親権者と子との利益相反行為に当たらない限り、それをするか否かは子のために親権を行使する親権者が子をめぐる諸般の事情を考慮してする広範な裁量にゆだねられているものとみるべきである。そして、親権者が子を代理して子の所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為は、利益相反行為に当たらないものであるから、それが子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、親権者による代理権の濫用に当たると解することはできないものというべきである。
【民法 第107条】
(代理権の濫用)
第百七条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
ウ.誤答
Bの親権者であるAは、特別代理人を選任せずに利益相反行為を行った。この場合、Aの当該利益相反行為は無効となり、Bは、成年に達したとしても、これを追認することはできない。
要点特別代理人を選任せずにした利益相反行為は無権代理で、子は成年後に追認できる。
妥当でない。親権者が特別代理人を選任せずにした利益相反行為は、無権代理行為に当たります(最判昭46.4.20)。無効が確定するのではないので、子は、成年に達した後に追認することができ(民法113条1項)、追認すると行為の時にさかのぼって効力を生じます(116条)。
利益相反行為の制限は、子を保護するためのものなので、子自身が判断できるようになった後に、その行為を受け入れるかどうかを子に選ばせれば足りるからです。
【最判昭46.4.20 判決理由】
…親権者が民法八二六条に違反して、親権者と子の利益相反行為につき法定代理人としてなした行為は民法一一三条所定の無権代理行為にあたる…
【民法 第113条第1項】
(無権代理)
第百十三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
【民法 第116条】
(無権代理行為の追認)
第百十六条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
エ.誤答
Bの親権者であるAは、Bの叔父であるCの債務について、A及びBを連帯保証人とした上で、さらに、A及びBが共有する土地に抵当権を設定した。この場合、Aのこれらの行為は、利益相反行為に当たらない。
要点親権者と子が共に連帯保証し共有地に抵当権を設定するのは、利益相反行為である。
妥当でない。判例は、第三者の債務について、親権者が自ら連帯保証をするとともに、子の代理人として子も連帯保証をし、親権者と子が共有する不動産に抵当権を設定するなどの行為は、利益相反行為に当たるとしました(最判昭43.10.8)。
外形上、子が保証債務を負い子の持分が担保に取られることで、親権者が債権者から責任を追及されたときの負担が軽くなる(子に求償したり、子の持分から先に回収されたりする)関係にあり、親権者の利益と子の不利益が結びついているからです。
【最判昭43.10.8 裁判要旨】
二、第三者の金銭債務について、親権者がみずから連帯保証をするとともに、子の代理人として、同一債務について連帯保証をし、かつ、親権者と子が共有する不動産について抵当権を設定するなどの判示事実関係のもとでは、子のためにされた連帯保証債務負担行為および抵当権設定行為は、民法第八二六条にいう利益相反行為にあたる。
オ.正答
Bの親権者であるAは、Bを主債務者として銀行から融資を受け、A自身を連帯保証人とした。この場合、Aのこれらの行為は、利益相反行為に当たらない。
要点子を主債務者とする融資で親権者が連帯保証人となるのは、利益相反行為でない。
妥当である。親権者が子を代理して子を主債務者とする融資を受け、親権者自身が連帯保証人となる行為は、外形上、親権者が子の債務を保証して負担を引き受けるもので、親権者の利益のために子に不利益を負わせるものではないので、利益相反行為に当たりません。
利益相反行為は、外形上、親権者の利益と子の不利益が結びつく行為をいいます。子の借入れに親権者が保証を付けることは、子の信用を補うもので、その形からは子を犠牲にして親権者が利益を得る関係は見えないからです。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.30
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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