2025年 国家総合職 問題29
民法不法行為
【No. 29】民法第719条が規定する「共同不法行為」に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
共同不法行為(民法719条)の軸は、被害者の保護です。共同行為者は、各自が損害の全額について連帯して賠償する責任を負うので、被害者は、加害者のうち資力のある者から全額を回収できます。
そのため判例は、加害者の間で責任を割合に応じて分けたり、加害者ごとに過失相殺をして賠償額を減らしたりして、被害者が全額を受け取れなくなる扱いを認めていません。加害者どうしの負担の調整は、払った者からの求償で行います。
【民法 第719条】
(共同不法行為者の責任)
第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
1.誤答
民法第719条第1項前段は、複数主体の間に関連共同性がある場合に共同不法行為が成立する旨を規定しているが、ここでいう「共同」とは、行為が客観的にみて一体性を有するだけでは足りず、通謀その他の「主観的関連共同性」が必要である。
要点共同不法行為の「共同」は、行為の客観的な関連共同性で足りる。
妥当でない。判例は、共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合は、各自が全損害を賠償する責任を負うとしました(最判昭43.4.23)。通謀などの主観的関連共同性までは必要ありません。
被害者から見れば、加害者どうしが示し合わせていたかどうかで受けた損害は変わらないので、行為が客観的に結びついていれば、被害者を保護するために連帯責任を負わせるのです。
【最判昭43.4.23 裁判要旨】
共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して流水を汚染し違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が、右違法な加害行為と相当因果関係にある全損害について、その賠償の責に任ずべきである。
2.正答
AとBが共同不法行為をした場合、被害者CがAに対して賠償請求をしたとしても、その履行の請求の効力はBには及ばず、CのBに対する損害賠償請求権の消滅時効について、完成猶予や更新の効力は生じない。
要点共同不法行為者の一人への履行の請求は、他の者には効力が及ばない。
妥当である。共同不法行為者の損害賠償債務には連帯債務の規定が適用され、連帯債務者の一人に対する履行の請求は、原則として他の連帯債務者に効力が及びません(民法441条)。そのため、Cの請求はBには及ばず、CのBに対する請求権の時効について、完成猶予や更新の効力は生じません。
請求を受けていない連帯債務者は、請求がされたことを知らないまま、時効の完成が遅れるなどの不利益を受けるおそれがあるからです。平成29年の改正(令和2年4月施行)で、請求の効力は他の連帯債務者に及ばないこととされました。
【民法 第441条】
(相対的効力の原則)
第四百四十一条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
3.誤答
AとBの過失が競合して交通事故が発生し、Cが損害を受け、3600万円相当の損害が生じた場合、AとBとCの過失割合が、1:4:1であると確定しているときは、Cは、Aに対して1800万円を限度に、Bに対して2880万円を限度に、それぞれ賠償請求することができる。
要点絶対的過失割合が認定できれば、その過失相殺後の額を加害者が連帯して負う。
妥当でない。判例は、絶対的過失割合(事故の原因となったすべての過失の割合)を認定できるときは、それに基づく被害者の過失による過失相殺をした額について、加害者らが連帯して賠償責任を負うとしました(最判平15.7.11)。本問では、Cの過失割合は6分の1なので、3600万円から6分の1を引いた3000万円について、AとBが連帯して責任を負います。加害者ごとに相対的に過失相殺をした額(Aは1800万円、Bは2880万円)を限度とする部分が誤りです。
判例は、加害者ごとに相対的に過失相殺をすると、被害者がいずれの加害者からも全額を受けられるようにして被害者を保護する719条の趣旨に反すると重く見ました。
【最判平15.7.11 判決理由】
これに反し,各加害者と被害者との関係ごとにその間の過失の割合に応じて相対的に過失相殺をすることは,被害者が共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとすることによって被害者保護を図ろうとする民法719条の趣旨に反することになる。
4.誤答
AとBが共同不法行為をした結果、Cに1000万円相当の損害が生じた場合において、その不法行為に対するAとBの寄与の割合が6:4と認定されたときは、原則として、Aは600万円、Bは400万円の分割債務を負う。
要点共同不法行為者は、寄与の割合にかかわらず全額について連帯して責任を負う。
妥当でない。共同不法行為者は、各自が損害の全額について連帯して責任を負い、結果発生への寄与の割合で損害額を案分して責任を限定することはできません(最判平13.3.13)。AもBも、1000万円全額について責任を負います。寄与の割合は、加害者どうしの求償で考慮されます。
寄与の割合で責任を分けると、一方の加害者が無資力のときに、その分を被害者が回収できなくなり、被害者保護という719条の趣旨に反するからです。
【最判平13.3.13 裁判要旨】
1 交通事故と医療事故とが順次競合し,そのいずれもが被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来しこの結果について相当因果関係を有する関係にあって,運転行為と医療行為とが共同不法行為に当たる場合において,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯責任を負うべきものであり,結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害額を案分し,責任を負うべき損害額を限定することはできない。
5.誤答
Aが不法行為を行うに当たり、BがAを教唆した場合、それは、AとBが共同で不法行為をするものとは質的に異なるため、Bは、共同行為者とみなされることはなく、単独で不法行為責任を問われる可能性があるにとどまる。
要点不法行為を教唆した者は、共同行為者とみなされる。
妥当でない。行為者を教唆した者や幇助した者は、共同行為者とみなされ(民法719条2項)、実行した者と連帯して責任を負います。共同行為者とみなされることはないとする部分が誤りです。
教唆や幇助がなければ不法行為が起きなかった、または起きにくかった以上、その者も損害の発生に加わったといえるので、被害者保護のため実行者と同じ責任を負わせているのです。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.29
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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