2025年 国家総合職 問題31
民法相続
【No. 31】遺言に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならず、自筆証書に添付する相続財産の目録についても、自書することが必要である。
要点自筆証書に添付する財産目録は、自書でなくてもよい。
妥当でない。自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自書し、印を押すのが原則ですが(民法968条1項)、添付する相続財産の目録は、自書しなくてもよいとされています。その場合は、目録の各ページに署名し、印を押さなければなりません(同条2項)。
財産目録まで手書きさせると、財産が多い遺言者には負担が大きく、自筆証書遺言が使いにくかったためです。各ページの署名押印で、偽造や変造を防いでいます。
なお、令和8年6月公布の改正(令和9年6月までに施行予定)で、自筆証書遺言の押印は不要になり、目録の各ページも署名だけでよくなります。施行後は、本肢の「これに印を押さなければならず」の部分も誤りになります。
【民法 第968条第1項・第2項】
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
イ.正答
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。また、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
要点遺言執行者があるときは、遺贈の履行は遺言執行者のみが行える。
妥当である。遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持ち(民法1012条1項)、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができます(同条2項)。
遺贈の履行は、相続人の利益と対立することがあるので、遺言者の意思を公正に実現するため、遺言執行者に一元化しているのです。
【民法 第1012条第1項・第2項】
(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
ウ.正答
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができず、これに違反してした行為は無効となるが、当該無効を遺言執行者の存在につき善意の第三者に対抗することができない。
要点遺言執行の妨害行為は無効だが、その無効を善意の第三者に対抗できない。
妥当である。遺言執行者がある場合、相続人は遺言の執行を妨げる行為をすることができず、これに違反した行為は無効となります(民法1013条1項・2項本文)。ただし、その無効は、善意の第三者に対抗することができません(同条2項ただし書)。
遺言執行者がいるかどうかは外から分かりにくいので、それを知らずに相続人と取引した第三者を保護し、取引の安全を図るためです。
【民法 第1013条第1項・第2項】
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
エ.誤答
遺言執行者がある場合において、遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言があったときは、民法が規定する共同相続における権利の承継の対抗要件を備えるために必要な行為は、遺言執行者のみが行うことができ、受益相続人が単独で行うことはできない。
要点特定財産承継遺言の対抗要件は、遺言執行者だけでなく受益相続人も備えられる。
妥当でない。特定財産承継遺言があったときは、遺言執行者は、その相続人が対抗要件を備えるために必要な行為をすることができます(民法1014条2項)。これは遺言執行者に権限を与えたもので、受益相続人が自ら対抗要件を備えること(例えば、相続による所有権移転の登記を単独で申請すること)は妨げられません。遺言執行者のみが行えるとする部分が誤りです。
遺贈の履行(1012条2項)と違い、1014条2項は「のみ」とは書いていないからです。相続人自身も対抗要件を備える利益を持つので、その道を閉ざす理由はありません。
【民法 第1012条第2項】
(遺言執行者の権利義務)
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
【民法 第1014条第2項】
(特定財産に関する遺言の執行)
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.31
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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