2025年 国家総合職 問題27
民法契約総論・売買・贈与
【No. 27】民法上の定型約款に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
定型約款の規定は、不特定多数の者と画一的な内容で取引をする場面(定型取引)で、相手方が条項を一つ一つ読まなくても契約の内容になる仕組みを認めたものです。条項を個別に認識していなくても合意したものとみなす代わりに、不当な条項を排除し、内容を知る機会を保障し、一方的な変更に要件を課して、相手方の利益とのバランスを取っています。
1.誤答
定型約款は、事業者が不特定多数の顧客を相手方として行う定型取引において用いられるものであり、民法上の定型約款の規定は、事業者と消費者との間の取引にのみ適用され、事業者間での取引には適用されない。
要点定型約款の規定は、事業者間の取引にも適用され得る。
妥当でない。定型取引とは、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引で、内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいいます(民法548条の2第1項)。事業者と消費者の取引に限られず、事業者間の取引にも適用され得ます。
内容を画一的にすることが双方にとって合理的かどうかで決まるので、相手方が消費者か事業者かは基準になっていないからです。
【民法 第548条の2第1項】
(定型約款の合意)
第五百四十八条の二 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
2.誤答
契約当事者間で定型約款を契約内容とする旨の合意があったとしても、民法上の契約は当事者の意思を重視するため、定型約款を示された相手方が定型約款の個別条項について認識していない場合には、当該条項については合意をしなかったものと推定される。
要点定型約款を契約内容とする合意があれば、個別の条項にも合意したとみなされる。
妥当でない。定型取引を行う合意をした者は、定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたときなどは、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなされます(民法548条の2第1項)。認識していない条項について合意しなかったと推定されるわけではありません。
大量の取引で、相手方に条項を一つ一つ認識させることは現実的でなく、それを求めると定型取引が成り立たないからです。
【民法 第548条の2第1項】
(定型約款の合意)
第五百四十八条の二 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
3.誤答
定型約款の条項のうち、定型約款を示された相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものが含まれている場合には、その相手方は契約を取り消すことができる。
要点信義則に反し相手方を一方的に害する条項は、合意をしなかったとみなされる。
妥当でない。相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項で、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意をしなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。契約全体を取り消せるのではなく、その条項が契約の内容にならないのです。
相手方は条項を読まずに合意したものとみなされるので、読んでいれば受け入れなかったはずの不当な条項だけを、契約の内容から外せば足りるからです。
【民法 第548条の2第2項】
(定型約款の合意)
2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
4.誤答
定型取引を行おうとする定型約款準備者は、相手方からの請求の有無にかかわらず、定型取引合意の前に相当な方法でその定型約款の内容を示すことを要し、これをしなかった場合には、定型約款はその効力を生じない。
要点定型約款の内容は、相手方から請求があったときに示せばよい。
妥当でない。定型約款準備者が定型約款の内容を示さなければならないのは、定型取引合意の前または後相当の期間内に、相手方から請求があった場合です(民法548条の3第1項)。請求の有無にかかわらず示すことを要するわけではありません。合意の前に請求を拒んだときに、定型約款の規定が適用されなくなります(同条2項)。
常に事前の開示を義務づけると、大量の取引で手間がかかりすぎるので、知りたい相手方が請求すれば見られる形で、内容を知る機会を保障しているのです。
【民法 第548条の3】
(定型約款の内容の表示)
第五百四十八条の三 定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
2 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
5.正答
定型約款準備者は、定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、合理的なものであるときは、個別に相手方と合意をしなくとも、効力発生時期を定め、かつ、所定の事項を適切な方法によって周知して、契約内容を変更することができる。
要点目的に反せず合理的な変更なら、周知などをして個別の合意なく変更できる。
妥当である。定型約款準備者は、変更が契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性や変更後の内容の相当性などに照らして合理的なものであるときは、効力発生時期を定め、変更する旨などを適切な方法で周知して、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更できます(民法548条の4第1項2号・2項)。
多数の相手方と一人ずつ合意し直すのは現実的でないので、合理的な変更に限って一方的な変更を認め、周知によって相手方に知らせているのです。
【民法 第548条の4第1項・第2項】
(定型約款の変更)
第五百四十八条の四 定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
(略)
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.27
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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