2025年 国家総合職 問題25
民法債権譲渡・債権の消滅
【No. 25】AがBに対して負う債務につき、Cが免責的債務引受をした場合に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.誤答
免責的債務引受の契約は、A・B・Cの三面契約によってすることはできるが、B・C間の契約によってすることはできない。
要点免責的債務引受は、債権者と引受人の契約によってもすることができる。
妥当でない。免責的債務引受は、債権者(B)と引受人(C)との契約によってすることができ、債権者が債務者(A)にその旨を通知した時に効力を生じます(民法472条2項)。B・C間の契約ではできないとする部分が誤りです。
債務を免れることは債務者に有利なことなので、債務者の関与がなくても、債権者が債務の履行を引受人に求めることに同意していれば足りるからです。債務者には通知で知らせます。
【民法 第472条第2項・第3項】
(免責的債務引受の要件及び効果)
2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。
2.誤答
引受人であるCの負う債務は原債務者であるAが負っていた債務と性質の異なる債務であるため、引受けの効力が生じた時点でAがBに対して主張し得た抗弁をもって、CはBに対抗することができない。
要点引受人は、効力発生時に債務者が主張できた抗弁を債権者に対抗できる。
妥当でない。引受人は、免責的債務引受の効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができます(民法472条の2第1項)。対抗できないとする部分が誤りです。
引受人は、債務者が負っていたのと同一の内容の債務を負うので(472条1項)、その債務に付いていた抗弁も引き継ぐのが当然だからです。性質の異なる債務とする前提も誤りです。
【民法 第472条第1項】
(免責的債務引受の要件及び効果)
第四百七十二条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
【民法 第472条の2第1項】
(免責的債務引受における引受人の抗弁等)
第四百七十二条の二 引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
3.誤答
Aの債務が生じた契約関係に基づき、AがBに対して取消権を有するとしても、取消権を行使するか否かはAの意思に委ねられているため、Aが取消権を行使しない場合、Cは、取消権行使によってAが免れるべき限度であっても、Bに対して債務の履行を拒絶することはできない。
要点債務者が取消権を持つとき、引受人はその限度で履行を拒むことができる。
妥当でない。債務者(A)が債権者に対して取消権または解除権を持つときは、引受人(C)は、免責的債務引受がなければその権利の行使によって債務者が債務を免れることができた限度で、債権者に対して履行を拒むことができます(民法472条の2第2項)。
取消権は債務者の地位に結びついた権利なので、引受人が代わりに行使することはできません。しかし、債務者が取り消せば消えるはずの債務を引受人に全部払わせるのは不当なので、履行を拒む形で調整しています。
【民法 第472条の2第2項】
(免責的債務引受における引受人の抗弁等)
2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
4.正答
免責的債務引受の引受人であるCがBに弁済したとしても、併存的債務引受とは異なり、原則としてAに対して求償をすることはできないが、AとCとの間で、別途、債務引受の対価を支払う合意をすることは妨げられない。
要点免責的債務引受の引受人は、債務者に求償できないが、対価の合意はできる。
妥当である。免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しません(民法472条の3)。もっとも、AとCが別途、債務引受の対価を支払う合意をすることは妨げられません。
免責的債務引受では、引受人は他人の債務を払うのではなく、自分の債務として引き受けて払うので、当然に求償を認める理由がないからです。引受人がAから見返りを得たいときは、当事者間の合意で決めることになります。
【民法 第472条の3】
(免責的債務引受における引受人の求償権)
第四百七十二条の三 免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。
5.誤答
免責的債務引受は、債務の同一性を維持したまま債務が引受人に移転するのであるから、AがBに対して負う債務のためにDが物上保証をしていた場合、Dの承諾を得ることなく、Bの単独の意思表示で、Cが負う債務のためにその担保権を移転することができる。
要点物上保証人が設定した担保権を移すには、その物上保証人の承諾が要る。
妥当でない。債権者は、債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人の債務に移すことができますが、引受人以外の者が設定した担保権を移すには、その者の承諾が必要です(民法472条の4第1項)。また、移転の意思表示は、あらかじめまたは同時に引受人に対してしなければなりません(同条2項)。Dの承諾なしにできるとする部分が誤りです。
物上保証人Dは、Aの資力などを考えて担保を提供したので、別の人(C)の債務を担保させられるのは、Dの予期しない負担になるからです。
【民法 第472条の4第1項・第2項】
(免責的債務引受による担保の移転)
第四百七十二条の四 債権者は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
2 前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.25
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
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