2025年 国家総合職 問題24
民法その他の担保物権
【No. 24】先取特権に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.正答
一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は一般の先取特権に優先する。ただし、一般の先取特権であっても、共益の費用の先取特権については、その利益を受けた全ての債権者に対して優先する効力を有する。
要点特別の先取特権は一般の先取特権に優先するが、共益費用の先取特権は別である。
妥当である。一般の先取特権と特別の先取特権が競合する場合は、特別の先取特権が優先しますが、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先します(民法329条2項)。
共益費用は、財産を保存・換価・配当するなど、他の債権者全員のために支出された費用です。その利益を受けた債権者が、その費用の負担を免れて先に回収するのは不公平だからです。
【民法 第329条第2項】
(一般の先取特権の順位)
2 一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
イ.正答
動産の売主は、その動産が買主から第三者に転売され、現実の引渡し又は占有改定による引渡しがされたときは、当該動産について、動産売買の先取特権を行使することはできない。
要点動産を第三者に引き渡した後は、占有改定でも、先取特権を行使できない。
妥当である。先取特権は、債務者が目的の動産を第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使できません(民法333条)。この引渡しには、占有改定による引渡しも含まれると解されています(大判大6.7.26)。
動産の先取特権は公示のない担保なので、動産を取得した第三者の取引の安全を優先させるためです。占有改定でも、第三者は引渡しを受けて所有権を取得しているので、同じく保護されます。
【民法 第333条】
(先取特権と第三取得者)
第三百三十三条 先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。
ウ.誤答
雇用関係の先取特権は、不動産を目的とするとき、当該不動産についてその登記をしなくても、当該不動産について登記をした抵当権者に対抗することができる。
要点雇用関係の一般の先取特権は、登記をした抵当権者には登記なしに対抗できない。
妥当でない。雇用関係の先取特権は、債務者の総財産を目的とする一般の先取特権です(民法306条2号)。一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を持たない一般債権者には対抗できますが、登記をした第三者には対抗できません(336条)。
一般の先取特権は、公示なしに総財産に及ぶ担保なので、登記を信頼して担保を取った者の利益を害しないよう、登記をした第三者との関係では登記の先後に従わせているのです。
【民法 第306条】
(一般の先取特権)
第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
(略)
二 雇用関係
(略)
【民法 第336条】
(一般の先取特権の対抗力)
第三百三十六条 一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。
エ.誤答
先取特権と動産質権とが競合する場合には、先取特権が動産質権に優先するため、動産売買の先取特権の目的物に質権が設定されたときは、当該動産売買の先取特権が当該質権に優先する。
要点先取特権と動産質権が競合すると、質権者は第一順位の先取特権者と同じ権利を持つ。
妥当でない。先取特権と動産質権が競合する場合、動産質権者は、第一順位の先取特権者と同一の権利を持ちます(民法334条)。動産売買の先取特権は第三順位なので(330条1項3号)、質権が優先します。先取特権が優先するとする部分が誤りです。
質権者は目的物を占有しており、目的物の価値を当てにして取引をした者として、不動産の賃貸人などの第一順位の先取特権者と同じように扱われるからです。
【民法 第330条第1項】
(動産の先取特権の順位)
第三百三十条 同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。
一 不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権
(略)
三 動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権
【民法 第334条】
(先取特権と動産質権との競合)
第三百三十四条 先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第三百三十条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。
オ.誤答
不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記した場合には、その前に登記された抵当権に先立って行使することができる。
要点不動産売買の先取特権は、先に登記された抵当権には優先しない。
妥当でない。不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に代価の未払を登記することで効力が保存されますが(民法340条)、登記した抵当権に先立って行使できるのは、不動産保存と不動産工事の先取特権だけです(339条)。不動産売買の先取特権と抵当権の優劣は、抵当権の規定の準用により、登記の先後で決まります(341条)。
保存や工事の費用は、不動産の価値を守り、高めたもので、先に登記した抵当権者もその利益を受けるので、優先させても不公平にならないからです。売買代金にはそのような関係がありません。
【民法 第339条】
(登記をした不動産保存又は不動産工事の先取特権)
第三百三十九条 前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。
【民法 第340条】
(不動産売買の先取特権の登記)
第三百四十条 不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。
【民法 第341条】
(抵当権に関する規定の準用)
第三百四十一条 先取特権の効力については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、抵当権に関する規定を準用する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.24
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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