2025年 国家総合職 問題23
民法占有・所有権
【No. 23】所有権に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.誤答
Aは、甲土地を所有するBから、甲土地に建物を建築する工事を請け負った。Aは、自己の材料で建築工事を行ったが、体調が悪化したため建前のまま工事を中止し、Bとの合意に基づき請負契約を解除した。Bは当該建物の建築続行のため新たにCと請負契約を結び、Cが自己の材料で当該建物を完成させた。この場合、Aが当該建物の所有権を取得するかどうかは、動産の付合について規定する民法第243条に基づいて決定すべきである。
要点建前に第三者が工事を加えて建物にした場合は、加工の規定で所有者を決める。
妥当でない。判例は、建築途中で独立の不動産に至らない建前に、第三者が材料を提供して工事を施し、独立の不動産である建物に仕上げた場合の所有権の帰属は、加工の規定(民法246条2項)に基づいて決めるべきだとしました(最判昭54.1.25)。動産の付合の規定(243条)によるとする部分が誤りです。
建物の完成には、材料だけでなく工事による価値が大きく寄与しています。材料が結びつくことだけに着目する付合ではなく、工作によって生じた価値も評価する加工の規定のほうが、実態に合うからです。
【最判昭54.1.25 裁判要旨】
一 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合における建物所有権の帰属は、民法二四六条二項の規定に基づいて決定すべきである。
【民法 第243条】
(動産の付合)
第二百四十三条 所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。
2.誤答
Aは、甲土地を所有するBから、甲土地に建物を建築する工事を請け負った。Aは、自己の材料で建築工事を行ったが、体調が悪化したため建前のまま工事を中止し、Bとの合意に基づき請負契約を解除した。Bは当該建物の建築続行のため新たにCと請負契約を結び、Cが自己の材料で当該建物を完成させた。この場合、Cが提供した材料の価格が、Cが工事を行う前の建前の価格を超えているときに限り、Cが当該建物の所有権を取得する。
要点加工者の工事・材料の価格と、元の建前の価格とを比べて所有者を決める。
妥当でない。加工の規定によるときは、加工者(C)が提供した材料の価格に、工事によって生じた価格を加えたものが、元の建前の価格を超えるときに、加工者が所有権を取得します(民法246条2項)。判例も、加工者の工事が一応終わった時点までに加えた工事と材料の価格を、建前の価格と比べるとしました(最判昭54.1.25)。材料の価格だけで比べる部分が誤りです。
加工者の貢献は、材料と工事の両方なので、両方を合わせて元の材料の価値と比べるのが公平だからです。
【最判昭54.1.25 裁判要旨】
二 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供し工事を施して仕上げた建物の所有権の帰属を民法二四六条二項の規定に基づいて決定する場合において、建前が、屋根瓦が葺かれ、荒壁が塗られて法律上独立の不動産である建物としての要件を具備するに至つた時点における状態に基づいてではなく、加工者の工事が一応終了したと認められる時点までの間に加工者が加えた工事及び材料の価格と建前の価格とを比較して決定すべきである。
【民法 第246条第2項】
(加工)
2 前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。
3.正答
Aは、自らが所有する2階建ての建物をBに賃貸し、Bは、Aの承諾を得た上で、自己の負担により3階を増築した。3階には、本体の建物内にある梯子段を利用しなければ出入りすることができない。この場合、当該3階部分については、本体の建物の構造の一部を成すもので、それ自体では取引上の独立性を有しないため、Aが所有権を取得する。
要点独立の出入口のない増築部分は建物に付合し、建物の所有者のものとなる。
妥当である。判例は、賃借人が賃貸人の承諾を得て増築した部分が、賃借建物内の梯子段を使わなければ外に出入りできないときは、区分所有権の対象となる部分に当たらないとしました(最判昭44.7.25)。このような部分は建物に付合し、建物の所有者が所有権を取得します(民法242条本文)。
構造上・利用上の独立性がない部分は、それだけでは取引の対象にならず、建物の一部として扱うほかないからです。
【最判昭44.7.25 裁判要旨】
建物の賃借人が建物の賃貸人兼所有者の承諾を得て賃借建物である平家の上に二階部分を増築した場合において、右二階部分から外部への出入りが賃借建物内の部屋の中にある梯子段を使用するよりほかないときは、右二階部分につき独立の登記がされていても、右二階部分は、区分所有権の対象たる部分にはあたらない。
【民法 第242条】
(不動産の付合)
第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
4.誤答
Aは、自らが所有する2階建ての建物をBに賃貸し、Bは、Aの承諾を得た上で、自己の負担により3階を増築した。3階には、本体の建物内にある梯子段を利用しなければ出入りすることができない。この場合、当該3階部分については、Bが費用を負担している以上、Bが所有権を取得する。
要点独立性のない増築部分は、賃借人が費用を負担しても建物の所有者のものとなる。
妥当でない。賃借人が賃貸人の承諾を得て増築しても、その部分に構造上・利用上の独立性がないときは、建物に付合し、建物の所有者が所有権を取得します(民法242条本文、最判昭44.7.25)。権原によって附属させた者の権利を留保する242条ただし書は、独立性のない部分には適用されません。費用を負担したことは、所有権の帰属を決める理由になりません。
独立性のない部分に別の所有権を認めると、一つの建物の中に取引できない所有権が生じ、権利関係が混乱するからです。費用の問題は、賃借人の費用償還請求(608条)で調整されます。
【最判昭44.7.25 裁判要旨】
建物の賃借人が建物の賃貸人兼所有者の承諾を得て賃借建物である平家の上に二階部分を増築した場合において、右二階部分から外部への出入りが賃借建物内の部屋の中にある梯子段を使用するよりほかないときは、右二階部分につき独立の登記がされていても、右二階部分は、区分所有権の対象たる部分にはあたらない。
【民法 第242条】
(不動産の付合)
第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
【民法 第608条第2項】
(賃借人による費用の償還請求)
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
5.誤答
AとBは、共同で所有する土地を甲土地と乙土地に分筆し、甲土地をA、乙土地をBがそれぞれ所有することとした。その結果、乙土地は、甲土地とCが所有する丙土地に囲まれ、公道に通じない土地となった。この場合、Bは甲土地だけでなく、丙土地も使って公道に出入りすることができる。
要点共有地の分割で袋地が生じたときは、他の分割者の所有地のみを通行できる。
妥当でない。分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができます(民法213条1項)。丙土地も使えるとする部分が誤りです。
袋地が生じたのは分割した当事者自身の行為によるもので、その負担を、分割に関わっていない第三者(C)に負わせるべきではないからです。分割の際に通行のことも考えて分けることができたはずだ、という考え方です。
【民法 第213条第1項】
第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.23
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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