2025年 国家総合職 問題22
民法時効
【No. 22】消滅時効に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権が確定判決によって確定した場合、その消滅時効期間は5年である。
要点確定判決で確定した権利の消滅時効期間は、10年となる。
妥当でない。確定判決によって確定した権利は、10年より短い時効期間の定めがあるものでも、時効期間は10年となります(民法169条1項)。5年とする部分が誤りです。
判決で権利の存在がはっきりしたので、短い期間で時効にかかるとすると、債権者は時効を防ぐために何度も訴えを起こさなければならなくなるからです。
【民法 第169条第1項】
(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
イ.誤答
催告によって時効の完成が猶予されている間に、当事者間で権利についての協議を行う旨の合意が書面でされ、その合意において協議を行う期間を定めていない場合は、その合意があった時から1年を経過するまでの間は、時効は完成しない。
要点催告で完成が猶予されている間の協議の合意には、完成猶予の効力がない。
妥当でない。協議を行う旨の合意による完成猶予は、催告によって時効の完成が猶予されている間にされた合意には認められません(民法151条3項)。合意の時から1年は完成しないとする部分が誤りです。
催告による猶予は、本格的な手続をとるまでの一時的なものなので、その間に協議の合意をしても、さらに猶予を重ねて時効の完成を際限なく延ばすことはできない仕組みにしています。
【民法 第151条第1項・第3項】
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第百五十一条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
ウ.誤答
被保佐人である債務者が、時効期間が経過する前に、保佐人の同意を得ずに単独でその債務を承認した場合、その消滅時効は更新されない。
要点被保佐人が保佐人の同意なく単独でした承認でも、時効は更新される。
妥当でない。時効を更新する承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことを要しません(民法152条2項)。被保佐人が単独でした承認にも、時効の更新の効力があります。
承認は、相手の権利があることを認めるだけで、新たに財産を処分するものではないからです(ただし、管理の能力もない未成年者や成年被後見人の承認は、取り消すことができると解されています)。
【民法 第152条】
(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
エ.正答
先順位抵当権の被担保債権が時効により消滅することで、後順位抵当権者の抵当権の順位が上昇して配当額が増加する場合でも、当該後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができない。
要点後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない。
妥当である。判例は、後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に当たらないので、その消滅時効を援用できないとしました(最判平11.10.21)。
判例は、後順位抵当権者は、先順位の債権額を引いた残りからだけ優先弁済を受ける地位にあり、順位が上がって配当が増えるという期待は反射的な利益にすぎないと重く見ました。
【最判平11.10.21 判決理由】
後順位抵当権者は、目的不動産の価格から先順位抵当権によって担保される債権額を控除した価額についてのみ優先して弁済を受ける地位を有するものである。もっとも、先順位抵当権の被担保債権が消滅すると、後順位抵当権者の抵当権の順位が上昇し、これによって被担保債権に対する配当額が増加することがあり得るが、この配当額の増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇によってもたらされる反射的な利益にすぎないというべきである。
【民法 第145条】
(時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
オ.正答
債務者が、自己の負担する債務について消滅時効が完成した後に、債権者に対してその債務を分割して支払う旨を申し入れた場合には、その時点で債務者が時効完成の事実を知らなかったときでも、以後、その債務について、その完成した消滅時効の援用をすることは許されない。
要点時効完成後に債務を承認すれば、完成を知らなくても時効を援用できない。
妥当である。判例は、時効の完成後に債務者が債務を承認した以上、時効完成の事実を知らなかったときでも、その後その時効を援用することは許されないとしました(最大判昭41.4.20)。
判例は、承認は時効による債務消滅の主張と相容れない行為で、債権者も債務者がもはや時効を援用しないと考えるので、その後の援用を認めないのが信義則に照らして相当だと重く見ました。
【最大判昭41.4.20 判決理由】
けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当であるからである。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.22
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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