2025年 国家総合職 問題16
行政法国家賠償法1条
【No. 16】国家賠償法に関するア~オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
国家賠償法第1条第1項は代位責任の性質を有することからすると、同条第2項に基づく求償権は実質的には不当利得的な性格を有するものと考えられるから、国又は公共団体の公権力の行使に当たる複数の公務員が、その職務を行うについて、共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき、国又は公共団体がこれを賠償した場合においては、当該公務員らは、国又は公共団体に対し、それぞれの職責及び関与の態様等に応じた割合で求償債務を負う。
要点共同して故意に損害を加えた複数の公務員は、連帯して求償債務を負う。
妥当でない。判例は、公権力の行使に当たる複数の公務員が、共同して故意によって違法に他人に損害を加え、国または公共団体が賠償した場合には、その公務員らは、連帯して求償債務を負うとしました(最判令2.7.14)。職責・関与の態様等に応じた割合で負う(分割債務)とする部分は、この事件の原審の考え方です。
判例は、共同して故意に違法行為をした公務員らは、国などとの関係でも一体を成すとみて、一部の者が無資力で払えない危険は、国などではなく公務員らが負うのが公平だと重く見ました。
【最判令2.7.14 判決理由】
…当該公務員らは,国又は公共団体に対し,連帯して国家賠償法1条2項による求償債務を負うものと解すべきである。なぜならば,上記の場合には,当該公務員らは,国又は公共団体に対する関係においても一体を成すものというべきであり,当該他人に対して支払われた損害賠償金に係る求償債務につき,当該公務員らのうち一部の者が無資力等により弁済することができないとしても,国又は公共団体と当該公務員らとの間では,当該公務員らにおいてその危険を負担すべきものとすることが公平の見地から相当であると解されるからである。
【国家賠償法 第1条第2項】
前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
イ.誤答
国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その権限を行使するか否かについての当該公務員の裁量権が収縮・後退し、当該公務員にその権限を行使する義務があると認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法第1条第1項の適用上違法となる。
要点規制権限の不行使は、許容される限度を逸脱し著しく合理性を欠くとき違法となる。
妥当でない。判例は、規制権限の不行使は、権限を定めた法令の趣旨・目的や権限の性質等に照らし、具体的事情の下で、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときに、国家賠償法1条1項の適用上違法となるとしました(最判平16.4.27)。裁量権が「収縮・後退」して行使する義務がある場合とする本肢の言い回しは、判例の基準ではありません。
規制権限を行使するかどうかは、本来、行政庁の裁量に委ねられています。判例は、その裁量を前提にしつつ、裁量の範囲を著しく逸脱した不行使を違法とする形で判断しています。
【最判平16.4.27 判決理由】
国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である…
【国家賠償法 第1条第1項】
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
ウ.正答
学校の教師は学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負っているのであるから、公立学校の正課の授業において、教師が危険を伴う技術を指導するに当たり、事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務を尽くさず、その結果、生徒に損害が生じたときは、国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償責任が成立する。
要点公立学校の教師の教育活動は、国家賠償法1条1項の公権力の行使に含まれる。
妥当である。判例は、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれるとしました(最判昭62.2.6)。そのうえで、教師は危険を伴う技術を指導する場合には、事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務を負うとしています。
公権力の行使は、命令や強制のような権力的な作用に限らず、私経済作用と営造物の設置管理作用を除いた公の活動を広く含むと解されています(広義説)。そのため、公立学校での教育活動も含まれるのです。
【最判昭62.2.6 裁判要旨】
一 国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれる。
エ.誤答
公の営造物の管理者による管理・運営上の作為又は不作為の結果としてその利用がある態様の下に継続され、これにより営造物の利用者又は第三者にとって危険な状態が生じている場合であっても、それが当該営造物の物的施設そのものについて生じたものといえないときは、当該作為又は不作為は、国家賠償法第1条第1項に定められた公権力の行使に当たる公務員の職務行為に該当する。
要点供用に伴って第三者に危害を及ぼす危険も、営造物の設置又は管理の瑕疵に当たる。
妥当でない。判例は、国家賠償法2条1項の営造物の設置・管理の瑕疵には、物的施設自体の欠陥だけでなく、営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連で危害を生じさせる危険性がある場合も含まれ、その危害は利用者以外の第三者に対するものも含むとしました(最大判昭56.12.16)。そのような場合を1条1項の問題とする本肢は誤りです。
2条の責任は、営造物が「有すべき安全性」を欠くことに着目したものです。空港の騒音のように、施設の使い方によって周辺住民に危害が及ぶ状態も、安全性を欠く状態に当たるからです。
【最大判昭56.12.16 判決理由】
国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によつて一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性かある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿つて利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきである。
【国家賠償法 第2条第1項】
第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
オ.正答
都道府県警察の警察官が警察の責務の範囲に属する交通犯罪の捜査を行うことは、検察官が自ら行う犯罪の捜査の補助に係るものであるときのような例外的な場合を除いて、当該都道府県の公権力の行使にほかならないものとみるべきであるから、当該警察官が交通犯罪の捜査を行うにつき故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた場合は、原則として、当該都道府県が国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償責任を負う。
要点県警の警察官の交通犯罪の捜査による損害は、原則として当該県が賠償する。
妥当である。判例は、都道府県警察の警察官が交通犯罪の捜査を行うについて違法に他人に加えた損害は、検察官が自ら行う犯罪の捜査の補助に係る場合のような例外を除き、当該都道府県が国家賠償法1条1項により賠償し、国は原則として責任を負わないとしました(最判昭54.7.10)。
判例は、警察法と地方自治法が、都道府県に都道府県警察を置き、警察の管理・運営を都道府県の事務としていることを重く見ました。捜査も、その都道府県の公権力の行使にほかならないからです。
【最判昭54.7.10 判決理由】
けだし、警察法及び地方自治法は、都道府県に都道府県警察を置き、警察の管理及び運営に関することを都道府県の処理すべき事務と定めている(警察法三六条一項、地方自治法二条六項二号(昭和四四年法律第二号による改正前は同条五項二号)等参照)ものと解されるから、都道府県警察の警察官が警察の責務の範囲に属する交通犯罪の捜査を行うこと(警察法二条一項参照)は、検察官が自ら行う犯罪の捜査の補助に係るものであるとき(刑訴法一九三条三項参照)のような例外的な場合を除いて、当該都道府県の公権力の行使にほかならないものとみるべきであるからである。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.16
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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