2025年 国家総合職 問題15
行政法取消訴訟の審理・判決
【No. 15】取消訴訟の審理に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.誤答
処分の取消訴訟と、当該処分に対する審査請求を棄却した裁決の取消訴訟を提起することができる場合は、裁決の取消訴訟において原処分の違法を争うことができる。
要点裁決の取消訴訟では、原処分の違法を理由に取消しを求められない。
妥当でない。処分の取消訴訟と、審査請求を棄却した裁決の取消訴訟のどちらも提起できる場合には、裁決の取消訴訟では、原処分の違法を理由として取消しを求めることができません(行政事件訴訟法10条2項)。原処分の違法は、原処分の取消訴訟で争います(原処分主義)。
同じ原処分の違法を2つの訴訟で争えるようにすると、審理が重なり、判断が食い違うおそれがあるからです。裁決の取消訴訟では、裁決固有の違法(手続の誤りなど)を争います。
【行政事件訴訟法 第10条第2項】
(取消しの理由の制限)
2 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。
2.正答
処分の取消訴訟と、当該処分に対する審査請求を棄却した裁決の取消訴訟を提起することができる場合に、裁決の取消訴訟を提起したときは、原処分の取消訴訟を併合提起することができ、その提起をした場合における出訴期間の遵守については、原処分の取消訴訟は、裁決の取消訴訟を提起した時に提起されたものとみなされる。
要点裁決の訴えに原処分の訴えを併合すれば、出訴期間は裁決の訴えの時で判断する。
妥当である。裁決の取消訴訟に原処分の取消訴訟を併合して提起した場合には、出訴期間の遵守については、原処分の取消訴訟は、裁決の取消訴訟を提起した時に提起されたものとみなされます(行政事件訴訟法20条)。
原処分主義の下では、原処分の違法は原処分の取消訴訟で争わなければなりません。裁決の取消訴訟だけを起こしていた原告が、後から原処分の訴えを起こすときに、出訴期間を理由に救済されなくなるのを防ぐためのものです。
【行政事件訴訟法 第20条】
第二十条 前条第一項前段の規定により、処分の取消しの訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えに併合して提起する場合には、同項後段において準用する第十六条第二項の規定にかかわらず、処分の取消しの訴えの被告の同意を得ることを要せず、また、その提起があつたときは、出訴期間の遵守については、処分の取消しの訴えは、裁決の取消しの訴えを提起した時に提起されたものとみなす。
3.誤答
取消訴訟においては、裁判所は、必要があると認めるときは、職権で証拠調べをすることができ、また、当事者が主張しない事実を職権で認定することができる。
要点取消訴訟では職権証拠調べはできるが、当事者が主張しない事実は認定できない。
妥当でない。取消訴訟では、裁判所は必要があると認めるときは職権で証拠調べをすることができます(行政事件訴訟法24条)。しかし、当事者が主張しない事実を職権で探し出して認定すること(職権探知)までは認められていません。
取消訴訟も、当事者が主張した事実を判断の基礎とする弁論主義を基本としつつ、行政の適法性という公益に関わるので、証拠が足りないときに裁判所が補充できるようにしたものです。
【行政事件訴訟法 第24条】
(職権証拠調べ)
第二十四条 裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる。ただし、その証拠調べの結果について、当事者の意見をきかなければならない。
4.誤答
同一人が所有し、同一の敷地で一つのホテルを構成する複数の建物に係る固定資産課税台帳の登録価格について、審査の申出を棄却した固定資産評価審査委員会の決定のうち、所有者が各建物の適正な時価と主張する価格を超える部分の取消しを求める各請求は、その基礎となる社会的事実は一体として捉えることができても、固定資産の評価は個々の固定資産ごとに判断されるべきものであるから、互いに行政事件訴訟法所定の関連請求には当たらない。
要点一体のホテルを構成する複数の建物の価格を争う各請求は、関連請求に当たる。
妥当でない。判例は、同一の敷地で一つのリゾートホテルを構成する同一人所有の複数の建物の登録価格について、審査の申出を棄却した決定の取消しを求める各請求は、互いに関連請求に当たるとしました(最決平17.3.29)。審査の決定は建物ごとにされますが、それを理由に関連請求に当たらないとはしていません。
判例は、各請求の基礎となる社会的事実が一体で、争点も同じであることを重く見ました。併合を認めると、審理の重複や裁判の矛盾を避け、当事者の負担も軽くなるからです。
【最決平17.3.29 判決理由】
このように解することが,審理の重複や裁判の矛盾抵触を避け,当事者の訴訟提起・追行上の負担を軽減するとともに,訴訟の迅速な解決にも役立つものというべきである。
【行政事件訴訟法 第13条】
(関連請求に係る訴訟の移送)
第十三条 取消訴訟と次の各号の一に該当する請求(以下「関連請求」という。)に係る訴訟とが各別の裁判所に係属する場合において、相当と認めるときは、関連請求に係る訴訟の係属する裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟を取消訴訟の係属する裁判所に移送することができる。ただし、取消訴訟又は関連請求に係る訴訟の係属する裁判所が高等裁判所であるときは、この限りでない。
(略)
六 その他当該処分又は裁決の取消しの請求と関連する請求
5.誤答
原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟においては、当該原子炉施設の安全審査に関する資料を全て被告行政庁の側が保持している実態はあるが、被告行政庁の側において、先んじて、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを主張、立証する必要はない。
要点原子炉の安全性の訴訟では、行政庁の側がまず不合理な点のないことを主張立証する。
妥当でない。判例は、判断に不合理な点があることの主張・立証責任は本来原告が負うとしつつ、行政庁の側において、まず、判断に不合理な点のないことを相当の根拠・資料に基づき主張・立証する必要があり、それを尽くさない場合には、不合理な点があることが事実上推認されるとしました(最判平4.10.29)。
判例は、原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて行政庁の側が持っていることを重く見ました。資料のない原告に全面的な立証を求めると、事実上争えなくなるからです。
【最判平4.10.29 裁判要旨】
二 原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟においては、右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものであるが、被告行政庁の側において、まず、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議において用いられた具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認される。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.15
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
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