2025年 国家総合職 問題14
行政法取消訴訟の要件
【No. 14】処分性に関するア~エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜エ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
抗告訴訟の対象となる「処分」は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為です(行政事件訴訟法3条2項)。判例は、国や公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解しています。
そのうえで判例は、①行為が特定の者の法的地位に直接影響するか(一般的・抽象的な効果にとどまらないか)、②その段階で争わせないと実効的な権利救済が図れないか、を見て処分性を判断しています。行政指導の形をとる行為でも、法律の仕組みの中で後の不利益に確実につながるものは、処分に当たり得ます。
【行政事件訴訟法 第3条第2項】
(抗告訴訟)
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
ア.誤答
普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例は、特定の者に対してのみ適用されるものではなく、条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と同視することはできないものの、その制定によって、その後にされる個別的行政処分を要せず、その内容が給水契約の内容となって水道需要者は契約上の義務を課されることになるから、当該条例の制定行為には処分性が認められる。
要点一般的に水道料金を改定する条例の制定行為は、処分に当たらない。
妥当でない。判例は、水道料金を改定する条例は、水道料金を一般的に改定するもので、限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、その制定行為を行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視できないから、処分に当たらないとしました(最判平18.7.14)。給水契約の内容になることを理由に処分性を認めた部分が誤りです。
条例の制定は、本来は不特定多数の者に向けた一般的・抽象的な決まりを作る行為なので、特定の者の権利義務を直接に動かす行為とは同視できないからです。
【最判平18.7.14 裁判要旨】
1 普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は,同条例が上記水道料金を一般的に改定するものであって,限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく,同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないという事情の下では,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
イ.正答
市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ、実効的な権利救済を図る観点から見ても、これを対象とした抗告訴訟の提起を認めることが合理的であることから、当該決定には処分性が認められる。
要点市町村の土地区画整理事業の事業計画の決定は、処分に当たる。
妥当である。判例は、市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしました(最大判平20.9.10)。
判例は、事業計画が決定されると、宅地所有者等は建築行為の制限を受けながら換地処分を受けるべき地位に立たされることと、換地処分の段階で争っても事情判決となる可能性が高く、十分な救済にならないことを重く見ました。
【最大判平20.9.10 裁判要旨】
市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。(補足意見及び意見がある。)
【最大判平20.9.10 判決理由】
そうすると,事業計画の適否が争われる場合,実効的な権利救済を図るためには,事業計画の決定がされた段階で,これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性があるというべきである。
ウ.誤答
医療法の規定に基づく病院開設中止の勧告は、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすが、保険医療機関の指定拒否処分の効力は後に抗告訴訟によって争うことが可能であるから、当該勧告には処分性は認められない。
要点病院開設中止の勧告は、行政指導でも処分に当たる。
妥当でない。判例は、病院開設中止の勧告は、相当程度の確実さをもって保険医療機関の指定を受けられなくなるという結果をもたらし、実際上病院の開設自体を断念せざるを得なくなることから、処分に当たるとしました(最判平17.7.15)。後に保険医療機関の指定拒否処分を争えることは、この結論を左右しないとしています。
判例は、国民皆保険の下では、保険医療機関の指定を受けずに病院を経営することは事実上できないことを重く見ました。指定拒否処分まで待たせると、病院の開設の断念を迫られる段階で争えないことになるからです。
【最判平17.7.15 裁判要旨】
医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの)30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
【最判平17.7.15 判決理由】
上記の医療法及び健康保険法の規定の内容やその運用の実情に照らすと,医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は,医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども,当該勧告を受けた者に対し,これに従わない場合には,相当程度の確実さをもって,病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。そして,いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては,健康保険,国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく,保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから,保険医療機関の指定を受けることができない場合には,実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。
エ.誤答
旧関税定率法に基づき、輸入に際してなされる輸入禁制品に該当する旨の通知は、輸入申告に係る貨物が輸入禁制品に該当すると認めるのに相当の理由があるとする旨の税関長の判断の結果であり、かつ、これを輸入申告者に知らせ当該貨物についての輸入申告者自身の自主的な善処を期待してされるところのいわゆる観念の通知であることから、当該通知には処分性は認められない。
要点輸入禁制品に該当する旨の税関長の通知は、処分に当たる。
妥当でない。判例は、輸入禁制品に該当する旨の税関長の通知は、観念の通知(事実や判断を知らせるだけの行為)とみるべきものではあるものの、抗告訴訟の対象となる処分に当たるとしました(最判昭54.12.25)。
判例は、通知がされると、輸入の許可が得られる見込みがないことが明らかになり、税関長がそれ以外の応答をすることも期待できない一方、許可なしの輸入は法律上禁止されているので、輸入申告者は適法に輸入する道を閉ざされることを重く見ました。
【最判昭54.12.25 裁判要旨】
関税定率法二一条三項の規定による税関長の通知又は同条五項の規定による税関長の決定及びその通知は、抗告訴訟の対象となる行政事件訴訟法三条二項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.14
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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