2025年 国家総合職 問題13
行政法取消訴訟の要件
【No. 13】行政事件と司法審査の対象について判断した判例に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
裁判所が審判できるのは「法律上の争訟」、つまり、当事者間の具体的な権利義務・法律関係の存否に関する争いで、法令を適用して終局的に解決できるものです(裁判所法3条1項)。
そのため判例は、①学問・技術上の能力の優劣のように、法令を適用して解決できない判断、②団体の内部の問題で、一般市民法秩序と直接の関係がないもの、③自己の権利利益の保護を目的としない、行政権の主体としての訴えなどを、司法審査の対象から外しています。一方、団体の内部の問題でも、構成員の権利に重大な制約を及ぼすものは、審査の対象とされています。
【裁判所法 第3条第1項】
(裁判所の権限)
第三条 裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。
ア.正答
国家試験における合格、不合格の判定は、学問又は技術上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であり、その試験実施機関の最終判断に委ねられるべきであって、その判断の当否を審査し具体的に法令を適用して、その争いを解決調整できるものではない。
要点国家試験の合格・不合格の判定は、司法審査の対象とならない。
妥当である。判例は、技術士国家試験の合格、不合格の判定は司法審査の対象とならないとしました(最判昭41.2.8)。
判例は、合否の判定が学問・技術上の知識や能力、意見などの優劣・当否の判断を内容とする行為で、試験実施機関の最終判断に委ねられるべきものであり、法令を適用して争いを解決できるものではないと重く見ました。
【最判昭41.2.8 裁判要旨】
技術士国家試験の合格、不合格の判定は、司法審査の対象とならない。
イ.正答
大学における単位授与(認定)行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものである。
要点単位授与(認定)は、特段の事情がない限り司法審査の対象とならない。
妥当である。判例は、大学における授業科目の単位授与(認定)行為は、一般市民法秩序と直接の関係を有することを認めるに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきもので、司法審査の対象にならないとしました(最判昭52.3.15)。
判例は、大学が学生の教育と学術研究を目的とする自律的な団体で、その内部の問題は自律的な判断に委ねるのが適当だと重く見ました。
【最判昭52.3.15 裁判要旨】
大学における授業科目の単位授与(認定)行為は、一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り、司法審査の対象にならない。
ウ.誤答
地方公共団体の情報公開条例に基づく公文書開示決定を不服として国がその取消しを求める訴えは、当該公文書の公開をめぐって、当該地方公共団体の長の当該条例に基づく行政権限の行使と、国の行政遂行上の秘密保持ないし行政権限の行使とが抵触したことによって生じた紛争であるから、行政組織内部において処理し、解決されるべき性質のものである。
要点情報公開条例の開示決定の取消しを国が求める訴えは、法律上の争訟でない。
妥当でない。判例は、国が地方公共団体の情報公開条例に基づく公文書の開示決定の取消しを求めた訴えについて、国が主張する利益は行政上の秘密保持の利益で、財産権の主体としての固有の利益が侵害されるものではないとして、法律上の争訟に当たらないとしました(最判平13.7.13)。行政組織の内部の紛争だから処理すべきとしたものではありません。
判例は、国の主張が、建物の所有者としての利益ではなく、行政権限の行使に関わる利益を守ろうとするものだと見ました。このような利益は、国民と同じ立場の権利利益ではないので、裁判所の判断を求める根拠にならないのです。
エ.正答
国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできない。
要点国等が専ら行政権の主体として義務の履行を求める訴訟は、不適法である。
妥当である。判例は、国または地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするもので、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから、法律上の争訟に当たらず不適法だとしました(最判平14.7.9)。
判例は、このような訴訟は法律に特別の規定がある場合に限って提起できるとしました。財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求める場合とは区別されます。
【最判平14.7.9 裁判要旨】
1 国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は,不適法である。
オ.誤答
普通地方公共団体の議会は自律的な法規範を持つ団体である上、議会が議決により議員に対して科する出席停止の懲罰は、議員の権利行使を一時的に制限するものにすぎないから、その適否は議会の内部的規律の問題としてその自治的措置に任せるのが相当である。
要点地方議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となる。
妥当でない。判例は、普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となるとしました(最大判令2.11.25)。議会の内部規律の問題として自治的措置に任せるべきとした以前の判例は変更されました。
判例は、出席停止の懲罰を受けると、議員は議会の活動に参加できず、住民の代表として住民の意思を反映させる責務を果たせなくなることを重く見ました。一時的な制限でも、議員の中核的な活動に関わるので、議会の自律的な判断に委ねてよいとはいえないとしています。
【最大判令2.11.25 裁判要旨】
普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は,司法審査の対象となる。(補足意見がある。)
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.13
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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