2025年 国家総合職 問題12
行政法行政不服申立て
【No. 12】行政上の不服申立てに関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 (参考) 国税徴収法 (無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務) 第39条 滞納者の国税につき滞納処分の執行(略)をしてもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定納期限の一年前の日以後に、滞納者がその財産につき行つた政令で定める無償又は著しく低い額の対価による譲渡(略)、債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、これらの処分により権利を取得し、又は義務を免れた者は、これらの処分により受けた利益が現に存する限度(略)において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
1.誤答
行政不服審査法が規定する不服申立てには、審査請求、再調査の請求及び再審査請求があり、そのうち再調査の請求は、行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合であって、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときに限りすることができるが、審査請求とは異なり、審理員による審理手続も行政不服審査会等への諮問手続も行われない。審査請求又は再調査の請求は選択可能であり、いずれの請求を行った場合においても、その後他方の請求も行うことができる。
要点審査請求をした後は、再調査の請求はできない。
妥当でない。審査請求と再調査の請求は選べますが、審査請求をしたときは、再調査の請求はできません(行政不服審査法5条1項ただし書)。再調査の請求をしたときは、原則としてその決定を経た後に審査請求ができます(同条2項)。いずれの場合も他方の請求ができるとする部分が誤りです。前半の再調査の請求の説明は、そのとおりです。
再調査の請求は、処分庁が簡易な手続で処分を見直す仕組みです。上級の審査を先に求めた後に、処分庁による見直しに戻る意味はないので、順序が一方向に限られています。
【行政不服審査法 第5条】
(再調査の請求)
第五条 行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。ただし、当該処分について第二条の規定により審査請求をしたときは、この限りでない。
2 前項本文の規定により再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ、審査請求をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
(略)
2.正答
行政不服審査法には、第三者機関である行政不服審査会等への諮問手続が導入されており、審査請求の審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、原則として、国の場合は行政不服審査会に、地方公共団体の場合は執行機関の附属機関に諮問をし、裁決をすることとされているが、行政不服審査会等の答申については、審理員意見書と同様、当該審査庁を拘束する旨の規定は置かれていない。
要点審査会等への諮問の答申は、審理員意見書と同じく審査庁を拘束しない。
妥当である。審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、原則として、国では行政不服審査会、地方公共団体では執行機関の附属機関に諮問しなければなりません(行政不服審査法43条1項)。答申には、審理員意見書と同じく、審査庁を拘束する旨の規定はありません。
裁決の責任は審査庁にあり、第三者機関は、その判断の公正さを外から点検する役割を担うからです。答申と異なる裁決をするときは、その理由を裁決書に示さなければならないとして、点検の実効性を確保しています(50条1項4号)。
【行政不服審査法 第43条第1項】
第四十三条 審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、審査庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する庁の長である場合にあっては行政不服審査会に、審査庁が地方公共団体の長(地方公共団体の組合にあっては、長、管理者又は理事会)である場合にあっては第八十一条第一項又は第二項の機関に、それぞれ諮問しなければならない。
(略)
【行政不服審査法 第50条第1項】
(裁決の方式)
第五十条 裁決は、次に掲げる事項を記載し、審査庁が記名押印した裁決書によりしなければならない。
(略)
四 理由(第一号の主文が審理員意見書又は行政不服審査会等若しくは審議会等の答申書と異なる内容である場合には、異なることとなった理由を含む。)
3.誤答
地方公営企業の業務の執行は原則として管理者に委ねられているものと解され、その業務の執行に関し管理者が地方公共団体の代表権を有する場合には、当該地方公共団体の長はその代表権を有しないというべきであるが、当該地方公共団体の長は、当該管理者に対して所定の場合に必要な指示をすることができ、当該管理者に対する指揮監督権を有することから、当該管理者の上級行政庁に当たるため、当該管理者の不作為についての審査請求は、当該地方公共団体の長に対してすべきものである。
要点地方公営企業の管理者の不作為の審査請求は、管理者に対してする。
妥当でない。判例は、地方公共団体の長は管理者に対して所定の場合に必要な指示ができるにとどまり、一般的な指揮監督権は排除されているので、長は管理者の上級行政庁に当たらず、管理者の不作為についての審査請求は管理者に対してすべきだとしました(最判令3.1.22)。前半の、業務の執行に関して長は代表権を持たないとする部分は、そのとおりです。
審査請求をすべき行政庁は上級行政庁ですが(行政不服審査法4条)、上級行政庁とは、処分庁を指揮監督し、その誤りを正す職責と権限を持つ行政庁をいうからです。
【行政不服審査法 第4条】
(審査請求をすべき行政庁)
第四条 審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとする。
一 処分庁等(処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合又は処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する庁の長である場合 当該処分庁等
(略)
4.誤答
国税徴収法第39条所定の第二次納税義務者は、主たる課税処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消しによってこれを回復すべき法律上の利益を有するので、主たる課税処分につき不服申立てをすることができ、当該不服申立てをする場合、不服申立期間の起算日は、本来の納税義務者に対する主たる課税処分の通知がされた日の翌日であると解するのが相当である。
要点第二次納税義務者の不服申立期間の起算日は、納付告知の日の翌日である。
妥当でない。判例は、第二次納税義務者も主たる課税処分について不服申立てができるとしたうえで、その不服申立期間の起算日は、第二次納税義務者に納付告知がされた日の翌日だとしました(最判平18.1.19)。本来の納税義務者への通知の日の翌日とする部分が誤りです。
判例は、第二次納税義務者は納付告知を受けるまで、自分が不服申立てできる立場にあることを確実に知り得ないことを重く見ました。申立てができない段階で期間が進むのは背理だとしています。
【最判平18.1.19 裁判要旨】
1 国税徴収法39条所定の第二次納税義務者は,本来の納税義務者に対する課税処分につき国税通則法75条に基づく不服申立てをすることができる。
2 国税徴収法39条所定の第二次納税義務者が本来の納税義務者に対する課税処分につき国税通則法75条に基づく不服申立てをする場合における同法77条1項所定の不服申立期間の起算日は,当該第二次納税義務者に対する納付告知がされた日の翌日である。(1,2につき,意見がある。)
5.誤答
行政処分について不服申立てをする法律上の利益がある者については、行政処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解すべきであり、法律上保護された利益とは、行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている利益にとどまらず、行政法規が公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなる事実上の利益をも含むものである。
要点事実上の利益を受けるにすぎない者は、不服申立てをする法律上の利益がない。
妥当でない。判例は、不服申立てをする法律上の利益がある者とは、自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのある者をいうとしたうえで、法律上保護された利益とは、行政法規が個人的利益を保護するために行政権の行使に制約を課していることで保障されている利益で、公益の実現を目的とする制約の結果たまたま受ける反射的利益(事実上の利益)は含まないとしました(最判昭53.3.14)。
判例は、不服申立ての制度は国民の権利・利益の救済を主眼とし、行政の適正な運営の確保は、その救済を通じて達成される間接的な効果にすぎないと重く見ました。
【最判昭53.3.14 判決理由】
けだし、現行法制のもとにおける行政上の不服申立制度は、原則として、国民の権利・利益の救済を図ることを主眼としたものであり、行政の適正な運営を確保することは行政上の不服申立に基づく国民の権利・利益の救済を通じて達成される間接的な効果にすぎないものと解すべく、したがつて、行政庁の処分に対し不服申立をすることができる者は、法律に特別の定めがない限り、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消等によつてこれを回復すべき法律上の利益をもつ者に限られるべきであり、…
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)専門試験(多肢選択式)(法律区分)」No.12
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 振り仮名を除いています。
- このサイトについて
- 人事院など試験の実施機関とは関係のない、非公式の問題集です。解説は当サイトが作成しています。出典と著作権について:利用規約 第6条
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