2025年 国家一般職 問題26
民法債権譲渡・債権の消滅
【No. 26】債権譲渡に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
債権は、原則として自由に譲渡できます。民法は、債権を売ったり担保にしたりして資金を得る取引を支えるため、譲渡を禁止・制限する特約があっても譲渡そのものは有効とし、まだ発生していない将来の債権の譲渡も認めています。
一方、債務者は、自分が関わらないところで債権者が替わる立場にあります。そこで、弁済の相手を固定しておきたいという債務者の利益は、別の形(譲渡人への弁済で済ませられること、供託など)で守られています。また、譲渡の前から相殺できると期待していた債務者の立場も、譲渡によって奪われないようにしています。
ア.誤答
当事者が譲渡制限の意思表示(債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示)をしたときは、その後に債権者によってなされた債権の譲渡は、無効となる。
要点譲渡制限の意思表示があっても、債権の譲渡は有効である。
妥当でない。当事者が譲渡制限の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられません(民法466条2項)。ただし、譲渡制限を知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人に対しては、債務者は、履行を拒み、譲渡人への弁済などを主張できます(同条3項)。
譲渡を無効にすると、債権を担保にした資金調達が難しくなります。そこで譲渡そのものは有効とし、弁済の相手を固定したいという債務者の利益は、3項の形で守っています。
【民法 第466条第2項・第3項】
(債権の譲渡性)
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
イ.正答
債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。
要点譲渡制限のある金銭債権が譲渡されたとき、債務者は全額を供託できる。
妥当である。譲渡制限の意思表示がされた金銭債権が譲渡されたときは、債務者は、その債権の全額に相当する金銭を、債務の履行地の供託所に供託できます(民法466条の2第1項)。供託とは、供託所(法務局など)に金銭などを預けて債務を果たす制度です。
譲渡が有効でも、譲受人が譲渡制限を知っていたか(重大な過失で知らなかったか)によって、債務者が譲渡人と譲受人のどちらに払えばよいかが変わり、債務者には判断が難しいことがあります。供託を認めて、払う相手を誤る危険から債務者を守っています。
【民法 第466条の2第1項】
(譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託)
第四百六十六条の二 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。
ウ.正答
債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。
要点将来債権の譲渡では、譲受人は発生した債権を当然に取得する。
妥当である。債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していなくてもでき、その場合、譲受人は、発生した債権を当然に取得します(民法466条の6第1項・第2項)。
将来発生する売掛代金などをまとめて譲渡し、資金を調達したり担保にしたりする取引を支えるため、このような譲渡ができることと、その効果を明らかにしています。
【民法 第466条の6第1項・第2項】
(将来債権の譲渡性)
第四百六十六条の六 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。
2 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。
エ.誤答
債権の譲渡は、債務者が確定日付のある証書によって承諾しない限り、債務者その他の第三者に対抗することができない。
要点確定日付のある証書が必要なのは、債務者以外の第三者に対抗する場合である。
妥当でない。債権の譲渡は、譲渡人から債務者への通知か債務者の承諾によって、債務者その他の第三者に対抗できます(民法467条1項)。債務者の承諾に限られません。
また、確定日付のある証書(内容証明郵便など)が必要なのは、債務者以外の第三者(同じ債権を二重に譲り受けた人など)に対抗する場合で(同条2項)、債務者に対抗するだけなら要りません。
判例は、確定日付を求めるのは、譲渡人と債務者が通謀して日時をさかのぼらせ、第三者を害するのを防ぐためだとしています(最判昭49.3.7)。
【最判昭49.3.7 判決理由】
…同条二項が、右通知又は承諾が第三者に対する対抗要件たり得るためには、確定日附ある証書をもつてすることを必要としている趣旨は、債務者が第三者に対し債権譲渡のないことを表示したため、第三者がこれに信頼してその債権を譲り受けたのちに譲渡人たる旧債権者が、債権を他に二重に譲渡し債務者と通謀して譲渡の通知又はその承諾のあつた日時を遡らしめる等作為して、右第三者の権利を害するに至ることを可及的に防止することにあるものと解すべきであるから、…
【民法 第467条】
(債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
オ.誤答
債務者は、対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権であるときは、原則として、相殺をもって譲受人に対抗することができない。
要点対抗要件具備前の原因に基づく債権なら、後に取得しても相殺を対抗できる。
妥当でない。債務者が対抗要件具備時(譲渡の通知又は承諾があった時)より後に取得した譲渡人に対する債権でも、その債権が対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じたものであるときは、その債権による相殺を譲受人に対抗できます(民法469条2項1号)。ただし、具備時より後に他人の債権を取得した場合は除かれます(同項ただし書)。
対抗要件具備時に債権の発生原因がすでにあれば、債務者はその時から相殺を期待しており、その期待は保護に値します。他人から後で債権を取得した場合は、具備時にそのような期待がないので、相殺を対抗できません。
【民法 第469条第2項】
(債権の譲渡における相殺権)
2 債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
一 対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
二 前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.26
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
振り仮名を除いています。 - このサイトについて
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