2025年 国家一般職 問題23
民法占有・所有権
【No. 23】占有権(占有)に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
このページでは、妥当な記述(ア〜オ)を選んで判定します。
解説
解答すると、正解と解説が表示されます。
ア.誤答
Aは、自らが所有する動産甲をBに預けていたが、これをCに譲ることにした。この場合において、AがBに対して以後Cのために甲を占有することを命じ、Bがこれを承諾したときは、Cは、甲の占有権を取得する。
要点指図による占有移転には、占有を取得する第三者の承諾が必要である。
妥当でない。指図による占有移転では、本人Aが代理人Bに、以後第三者Cのために物を占有するよう命じ、第三者Cが承諾したときに、Cが占有権を取得します(民法184条)。承諾が必要なのはBではなくCです。
新たに占有を取得するのはCなので、Cの意思が要ります。Bは、物を持ち続けたまま、本人Aの命令に従って以後はCのために持つ立場で、条文上、Bの承諾は要件になっていません。
【民法 第184条】
(指図による占有移転)
第百八十四条 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
イ.誤答
Aは、その親BがCから委託を受けて管理していた乙土地について、これをBが所有しており、その死後に自らが単独で相続したと信じていた。この場合において、Aが独自の占有に基づく取得時効の成立を主張するときは、その占有は、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと推定される。
要点相続人の独自の占有による時効では、所有の意思を相続人が証明する。
妥当でない。判例は、他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効を主張する場合には、その事実的支配が外形的客観的に見て独自の所有の意思に基づくと解される事情を、相続人が証明すべきだとしました(最判平8.11.12)。所有の意思の推定(民法186条1項)は働きません。
判例は、相続人が新たに事実的支配を始めたことで、それまでの占有の性質が変わったのだから、その変化は時効を主張する側が立証すべきであり、また、相続という原因だけでは所有の意思があるかを決められないことを理由にしています。
【最判平8.11.12 判決理由】
けだし、右の場合には、相続人が新たな事実的支配を開始したことによって、従来の占有の性質が変更されたものであるから、右変更の事実は取得時効の成立を主張する者において立証を要するものと解すべきであり、また、この場合には、相続人の所有の意思の有無を相続という占有取得原因事実によって決することはできないからである。
【民法 第186条第1項】
(占有の態様等に関する推定)
第百八十六条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
ウ.正答
Aは、Bが所有する乙土地について、これを10年間占有したことを理由として短期取得時効の成立を主張する際に、Aの前の占有者であるCの占有を併せて主張することができるが、その場合、占有者の善意無過失は、Cの占有開始の時点において判定すれば足りる。
要点前の占有者の占有を併せるときは、その占有開始時で善意無過失を判定する。
妥当である。占有者の承継人は、自分の占有に前の占有者の占有を併せて主張できます(民法187条1項)。判例は、10年の取得時効(162条2項)で占有を併せて主張する場合、善意・無過失は、その主張に係る最初の占有者の占有開始の時点で判定すれば足りるとしました(最判昭53.3.6)。
162条2項は、善意・無過失を占有の開始の時だけで判断し、その後に悪意になってもかまわないとしています。判例は、占有を併せる場合も同じ規定が当てはまるとしました。その代わり、前の占有者の占有を併せると、その瑕疵(悪意や過失など)も引き継ぎます(187条2項)。
【最判昭53.3.6 裁判要旨】
不動産の占有主体に変更があつて承継された二個以上の占有が併せて主張された場合には、民法一六二条二項にいう占有者の善意・無過失は、その主張にかかる最初の占有者につきその占有開始の時点において判定すれば足りる。
【民法 第187条】
(占有の承継)
第百八十七条 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
【民法 第162条第2項】
(所有権の取得時効)
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
エ.誤答
Aは、動産甲を自らの所有物だと信じて占有し、その後、甲をBに賃貸したが、実際には、甲はCの所有物であった。この場合において、Aは、BがAに支払った賃料の返還をCから求められたときは、これに応じなければならない。
要点善意の占有者は、占有物から生じる果実(賃料)を取得する。
妥当でない。善意の占有者は、占有物から生じる果実を取得します(民法189条1項)。賃料は物を使わせた対価として受ける法定果実なので(88条2項)、Aは、Bから受け取った賃料をCに返す必要はありません。
通説では、善意の占有者は、自分に権利があると信じて果実を受け取り、使ってしまっているのが普通なので、後で返させるのは酷だという考え方によると解されています。悪意の占有者であれば、果実を返さなければなりません(190条1項)。
【民法 第189条第1項】
(善意の占有者による果実の取得等)
第百八十九条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
【民法 第88条第2項】
(天然果実及び法定果実)
2 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。
【民法 第190条第1項】
(悪意の占有者による果実の返還等)
第百九十条 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
オ.正答
Aは、Bから動産甲をBの所有物であると信じて購入したが、実際には、甲はCの所有物であった。この場合において、Aが甲の即時取得を主張するときは、Aは、平穏に、かつ、公然と、さらに善意であり、かつ、過失なく甲を占有していたことが推定される。
要点即時取得では、平穏・公然・善意に加え、無過失も推定される。
妥当である。占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有するものと推定されます(民法186条1項)。判例は、即時取得を主張する占有者は、自分に過失がないことを立証する必要はないとしました(最判昭41.6.9)。
判例は、占有者が占有物について行使する権利は適法に持つものと推定される(188条)ので、その占有者を権利者だと信じた譲受人にも過失がないと推定されるとしました。そう解するのが、動産の流通の保護に合うとも述べています。
【最判昭41.6.9 判決理由】
…およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法一八八条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。しかして、このように解することは、動産流通の保護に適合する所以であり、…
【民法 第186条第1項】
(占有の態様等に関する推定)
第百八十六条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
【民法 第188条】
(占有物について行使する権利の適法の推定)
第百八十八条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
この問題について
- 出典
- 人事院「令和7年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)専門試験(行政区分)」No.23
人事院の試験問題を、公共データ利用規約(第1.0版)に基づいて加工し、掲載しています。 - 本試験から変えた点
- 本試験は、妥当な記述の組合せ(1〜5)から1つを選ぶ問題です。このページでは、妥当な記述を直接選んで判定します。
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